秋のカタボシイワシは抜群にうまい!
突然とれ始めたニシンそっくりの魚
カタボシイワシの肩の星
カタボシイワシは1955年に標準和名がついた。当時の魚類検索には南日本と記載されていない。当時はヤマトミズン属だったが、現在ではサッパ属で、岡山県の「ままかり(サッパ)」と同属である。サッパ同様腹部の稜鱗(刺々しい鱗)が強い。
2005年前後に鹿児島県で水揚げされ始め、またたくまにいろんな地域で発見され、突然定置網に入ったのはいいけれど、魚の名前がわからないから教えてくれ、などという問い合わせを何度も受けている。
比較的暖かい海域にいる魚ではあるが国内での生息域はよくわからない。四国九州、そして沖縄にも生息。南はオーストラリア、アフリカ東岸にもいる。
さて9月14日は、もう1週間も前のことになるが、神奈川県、小田原魚市場で1尾だけ手に入れた。体長21cm・139gは小田原では平均的なサイズである。
ここ数年、見つけると、拾ってきては味見している。たくさん揚がったときにはスーパーヤオマサ、ナイトウさんのところから1尾だけ失敬したこともある。今更あやまっても仕方がないけど、ごめんなさい。ちなみに本種を手に入れたかったら神奈川県にあるスーパーヤオマサに行くと手に入る可能性大。
味見なので1から3尾ずつ、1年間で30個体近く食べたことになる。要するに旬がわからないための味見である。
鹿児島県などでは冬にもいるが、小田原では水温の高い春から晩秋にかけて水揚げが多い。
相模湾では5月から7月、8月くらいまではあまり脂がなく、9月になると急に脂が乗り始める。考えてみると同じニシン科のコノシロでもそうだが、産卵期前後は味が不安定で、産卵後は脂が抜けるのである。このことから相模湾での本種の産卵期は、晩春から初夏ではないかと考えている。
さて、塩焼きにするために帰宅後、測定して、水洗い。
頭部と稜鱗のある腹部一番下の部分を切り落とす。
いつもは体表から骨切りをするのだけど、今回はこのままで振り塩をする。
これを夕方になって焼いて食べてみた。
昨年10月のものと比べると脂ののりはイマイチだけど、それでも焼き始めると体表に脂が沸き上がって泡立つ。
焼いているときの香りがすこぶるつきにいい。香りがいいので焼いているだけで食べた気持ちになれる。
焼き上がるや大根おろしとすだちを添えて皿に盛り、えいやと食べたらすだちも大根おろしも出る間がなかった。
小骨が多いと思い込んでいたので毎回骨切りをしていたのが失敗だった。そのまま焼けば、おいしいエキスがこぼれ落ちないまま、いちばんおいしいまま食べられたのだ。
しかも意外にも小骨が気にならない。
おそるべし、カタボシイワシ、なのである。
今月末にも小田原に行くつもりなので、こんどは1尾だけじゃなくていっぱい持ち帰ってこよう。