202307/31掲載
入手困難ヒラソウダ
1㎏超えは人気沸騰、注目の的
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神奈川県、小田原魚市場、原辰定置の発泡の前で立ち止まっていたら、次々に同じ目線で立ち止まる人がいる。顔見知りなどボクの方を見て、「だろ?」と言っているかのようだ。ボクが非常に欲しそうな顔をしている魚を、ときにゆずってくれることがあるので、欲しいな、欲しいな、という顔をしてみせる。
1980年代にはわんさかわんさかとれて、漁師さんのおかずでしかなかった魚である。昔、小田原の釣り宿で地元の水産業者と名乗る人に、この魚の話をしたら、「丸(マルソウダ)は金になるが平はおかずにしかなんねーだら」と言われたことがある。
同船宿の船頭に、この魚を海面近くで釣り上げて喜んでいたら、「手返しが悪い」と怒鳴られたことさえもあった。
ボクの視線の先にあったのがその魚、1.5kgのヒラソウダである。遠目で見ていても立ち止まっている人がいる。ボクは食べたいだけだけど、魚屋さんたちは納入先を考えているに違いない。最近、ヒラソウダのおいしさを知る料理人が増えているのだ。
結局、このヒラソウダは手に入らなかった。たぶん漁協(小田原)の水揚げで米神岩の沖合いの個体だろう。
手に入ったのは、体長33cm・544gであったが、食べたいだけのボクにはこれで十分だ。
ヒラソウダの旬は秋が深まる時季から師走、新年にかけてだと思っている。これが鹿児島や大分や四国、紀伊半島、伊豆半島周辺で微妙にずれる。しかもヒラソウダの凄いところは旬ではなく脂がなくても、そこそこうまいことである。