202306/25掲載

近所のスーパーで買ったカジカで煮つけ

このまま料理できるってありがたい

ナベコワシのぶつ切り

魚料理や、魚介類自体に精通して、家庭に多様な魚介類料理を取り込みたいなら、できるだけ難易度の低いところから始めよ。手間は省け、がんばるな、というところから進むべきだ。当然、いい包丁など買わなくてもいいし、当然、当然、魚が下ろせなくてもいい。平凡がいちばん。やたらに難しいことを言う人間、通ぶる人間は無視すべし。
できるだけ近所の魚屋さんやスーパーを活用すべし。
日常的に魚介類料理を作って初めて、必要なら最低限の道具を揃えればいい。
以上があくまでも一般人の立場から魚を調べているボクの主張である。それにしても都内のスーパーは最近がんばっていると思う。スーパーに行くと必ず魚介類を売る場所を見るが、昨日など北海道産のカジカが売られていた。都内でカジカはもっとも売りにくい魚のひとつなのだ。このスーパーの頑張りを活用するのも一般人の勤めかも知れぬ。
カジカというと淡水にいる標準和名のカジカ(ウツセミカジカなどを含む)を思い浮かべる人が多いと思うが、カジカの多くは海にいる。食用として流通しているものの、ほぼ総てが海のカジカである。
明治期の魚類学以前の石川千代松などはやはり淡水魚から研究し、標準和名(図鑑などに載っている名)を決めるときも淡水魚の方が早かったようだ。東京都で江戸時代に生まれたために、北海道からの魚介類が本格的にやってくる時代以前の人で、たぶんカジカといえば淡水魚のカジカの方に馴染みがあった。だから漁獲量が圧倒的に多く、食用魚として重要な海のカジカの呼び名を、その多様性に踏み込むことなく、単に「うみかじか」として採取している。
この海のカジカで東京都内に流通しているのはニジカジカ、トゲカジカ(ナベコワシ)、ツマグロカジカ、ギスカジカの4種だ。北海道ではここにオクカジカ、オニカジカ、シモフリカジカ、ヨコスジカジカなどが加わるが、少ない。
この海のカジカたちの未利用魚としての度合いは意外に高く、深刻でもあると思っているが、話題に上らないのはなぜだろう。

「鍋こわし」の煮つけは、実にやさしい、温もりのある味

ナベコワシの煮つけ

さて、今回のカジカはぶつ切りにして売られていたので同定が難しかったが、腹部が白いこと体側の鱗の形からトゲカジカと考えた。北海道産海カジカでもっとも一般的なもので、北海道では「鍋こわし」と呼ばれている。
くせのない白身で、液体を使った汁、煮るという料理法に最適である。
今回は冷蔵庫に玉ねぎがあったので、煮つけを作った。
ぶつ切りなのでそのまま湯通しして冷水に落とし、表面のぬめりをていねいにこそげ落とす。水分をよくきっておく。
鍋に酒・砂糖・醤油・水を合わせて沸騰させた中にしょうがと一緒にカジカを入れて煮る。
玉ねぎは食感を生かしたいのでくし切りにする。
煮上がる少し前に加えて、適度に火が通ったら出来上がりだ。
酒の肴にしてもいいが、なんとなくだけどご飯の方が合う。

このコラムに関係する種

トゲカジカのサムネイル写真
トゲカジカGreat sculpin海水魚。水深50-300m。新潟県佐渡、秋田県、青森県、岩手県、北海道全沿岸。朝鮮半島東岸〜沿海州、間宮海峡、千島列・・・・
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