202305/21掲載

鹿児島のメヒカリはとろける

鹿児島県阿久根産アオメエソ

鹿児島県産アオメエソ

鹿児島県鹿児島市にある田中水産さんにアオメエソを送って頂く。鹿児島県ではメヒカリと呼ばれているようだ。
古くは阿久根から出船するタカエビ(ヒゲナガエビ)漁の混獲物でしかなかったが、深海魚を積極的に利用しようと言うことでクローズアップされつつある。
さてその前に、アオメエソについて。1905年にスタンフォード大学のジョーダンとスタークスによって記載されている。日本との関わりの深いふたりが記載した標本はどこでとれたものか、などはわからないが、なぜか生息域が千葉県銚子以南となっている。本種と形態的にそっくりというか区別がつかないマルアオメエソの方は記載につかった個体はどうやら銚子沖らしく、1955年版、魚類検索で生息域はマルアオメエソは銚子沖、アオメエソは相模湾以南となる。
近年、両種は同種であり、マルアオメエソはシノニム、新参和名と決まったのかと思っていたら、いまだに変更されていない。
閑話休題。
さて、田中水産の田中積社長から、「あぶって食べて見てください」というメッセージが送られてきた。ここ数年、決着のつかないアオメエソ問題を受けて未改訂であったのもあって、じっくり本種の味を楽しめないでいたが、いいきっかけをいただいた気がしてきた。

溶けては固まり、そしてとろける


今回はアドバイスのままあぶってみた。作り方は簡単である。
水洗いして三枚に下ろして腹骨を取る。
水分をよくきり、皮目をあぶって氷水に落とし、ふたたび水分をよく取る。
いただいた半分を造ったら、あれっ、という間になくなる。
不得要領のままではいけないので、いただいた0.4kgの残りを全部あぶったらやっとその真価がわかってきた。
舌に乗せた途端、溶けるように消える。たぶん、あぶると豊かに含有されている皮目の脂が溶ける。氷水に落とすと一瞬でこの溶けた脂の表面だけがもう一度凝固するのだ。
口に入れると、表面の凝固した脂が舌の上で破壊されて豊かな脂が皮の香ばしさと一緒に一瞬で口中に広がり、柔らかな身と一緒に消えてしまうのだ。
こんな味は過去に出合ったことがない。
酒を飲むのも忘れて一言、「おーい田中さん、メヒカリ、お代わり」。

このコラムに関係する種

アオメエソのサムネイル写真
アオメエソBigeyed greeneye, 青眼魚、大眼青眼魚海水魚。水深150-620mの大陸棚縁辺から斜面上部。海徳海山、相模湾〜九州南岸の大平洋沿岸、新潟県、富山湾、若狭湾、・・・・
詳細ページへ

関連記事 ▽




呼び名検索

方言を含む全ての名(標準和名,方言,呼び名,外国名,学名)から水産物を検索します。

閉じる