202302/27掲載
あら、サクラマス
肝も胃袋もある
サクラマスのあら煮
市場歩きをしていてうれしいのは、「これ持ってくかい」と声を掛けられることだ。このときを待っていたような気がするのはなぜだろう。
近年、全体の漁獲量はともかく市場には毎日のようにカツオが来ている。カツオのあらはうれしい。大好きな山口瞳の大好物が中落ちの煮つけなので、作る度にかの偉大なるハゲ頭が思い浮かんでくる。
居酒屋のオヤジに袋をぽいっと渡されたので、きっとカツオだ、と思ったら「本マス(サクラマス)」だった。産地は不明である。よく見ると胃袋、肝入りである。「あんたはやっぱり偉い」とほめてあげた。たぶんだが宴会が入っていてあらまで手が回らないし、商売繁盛で気分がいいのだ。
これを帰宅後すぐに大きな鍋で湯通しする。あらを冷水に落として霜降りにし、ぬめりなどを流す。残りの湯に塩を加えて初物の「のらぼう(東京都多摩地区特産のとう立菜)」を軽くゆでて、こちらも冷水に落として水気をきる。
サクラマスの身は甘いので、甘味抜きの味つけにする。酒・醤油・千葉県の入正醤油(塩分濃度をあまり感じさせない)・水で煮る。
これで朝ご飯を食べる。実に身が甘い。実に身が柔らかくてまったりした味わいで飯がどんどん消えて行く。
めでたしめでたしと思ったら、煮上がりに加えるはずの「のらぼう」を置き去りにしているではないか。
ハハハと笑ってポン酢をかけて、今春初物。