202508/27掲載
長野県北信地方の「やたら」
農山村でなければ生まれない夏の料理だ

長野県中野市・飯綱町などで食べられている夏の料理に「やたら」がある。
大根などのみそ漬け、ピーマン型の青い唐辛子・ぼたんごしょう(かぐらなんばん)、八町きゅうり、丸ナス、みょうがを、すべて細かく刻んで混ぜただけの料理である。
みそ漬けの塩気があるので、混ぜ合わせてもの足りなかったら、塩を加える。
みそ漬けの塩気が強く、また多めにみそ漬けを刻めば塩はいらない。
とにかくすべてを刻んで刻んで刻む。一心に刻むのがコツである。
みそ漬けだけの塩気で全体がしっとりとして、味が馴染んでくる。
長野県飯綱町、滝澤農園の滝澤さんに教わって早10年になるが、ほぼ毎年作っている。
ボクの場合、徹頭徹尾、ご飯に乗せて食べているが、飽きが来ない味で、毎日食べても結構毛だらけである。
夏バテの時季であってもご飯がすすむ

完全なる精進で、夏野菜を刻めばできるというのが農山村で生まれた料理らしいとも言えるだろう。
唐辛子の辛みと生の野菜の爽やかな食感と青臭さ、みそ漬けの塩気が体の熱気を取り去ってくれる。
八町きゅうり

八町きゅうりは1950年前後に、長野県須坂市で生まれたものらしい。
中野市の直売所で、「やたら」に使うのはこれがいい、というので、必ず買ってきているもの。
現在の品種と比べると甘味が少なく、少し硬めである。
ぼたんごしょう

長野県と群馬県の北部では「ぼたんごしょう」といい。
新潟県と「かぐらなんばん」と言う。長野県でも「かぐらなんばん」という人がいて、長野県では呼び名が混在しているようだ。
中野市で聞いた限り、呼び名は違うが同じものだという。
「やたら」にはなくてはならない、北信地方の伝統的な野菜である。
見た目はピーマンに似ている。
非常に辛いものと、あまり辛くないものとがある。