202302/05掲載

カタボシアカメバルの鍋

寒いよりなのでカタボシアカメバルで鍋


本種は相模湾などではキンメダイやムツ釣り(乗り合い)にくる魚で、本命ではないものの、いい外道といったところだ。漁業的には深場の底曳き網にも来るが、ともに少なく、流通上で見かけることはほとんどない。
一見、アコウダイを小型にしたようだが、赤地に濃赤色の斑紋が美しく、鰓蓋にぽつんと黒いドットが入る。一度だけ本種とは気づかず相模湾初島周りで釣り上げたことがある。非常に美しく、本命のアコウダイ、小キンメ以上にうれしかったと記憶する。我がデータベースで本種は、長い間ウケグチメバルとしてフィルムを保存していた。両種は形態学的に見ない限り非常に似ている。ウケグチメバルも千葉県勝浦沖で釣り上げたことがあり、当時は同じだ魚だと思い込んでいた。ともに1980年前後のことで、ウケグチメバルは記載済みだったが本種は2004年になるまで未記載だったのだ。
さて、焼いて食べるよりも煮て食べた方が好きである。
今回の個体は八王子総合卸売協同組合、マル幸のクマゴロウ様が下田沖で釣り上げたもの。体長21cm・244gと小振りだが、これで立派な成魚、見た目はきれいだけど、小魚の部類になる。
魚屋が釣った魚は活け締めも完璧で鮮度抜群である。
刺身という文字が頭をよぎったが、もったいない気がしてすぐに引っ込んだ。煮つけも浮かんだが曲がない。
寒い夜なので鍋にしてみた。昆布だしに酒・塩のあっさり味の鍋だ。
作り方は簡単。

  • 1水洗いして適当に切る。肝や胃袋もとっておく。
  • 2ゆどうしして冷水に落とし、残った鱗などをこそげ落とす。
  • 3水分をよくきっておく。
  • 4昆布だしに酒・塩で味つけした中で野菜と煮ながら食べる。
    小さいのい実にうま味豊か。煮ると軟らかく、舌の上で脆弱に崩れてくれる。皮に甘味がある。

仕上げに雑炊を作ると食事としても完璧である。
酒は旅先でもらった菊正宗樽酒のワンカップふたつ。

いいだしが出るので仕上げは雑炊

カサゴ亜目(カサゴの仲間)なので矢鱈にいいだしが出る。意外に煮凝らないのはゼラチン質は少ないのだろう。カタボシアカメバルの煮汁は冷えてもさらさらしている。
実に味のいい汁にご飯を投入して、煮立ってきたら溶き卵を回し入れる。後はネギだけだ。鍋で酒、雑炊で腹をなだめる。
鍋くらい完璧な一食はない。


このコラムに関係する種

カタボシアカメバルのサムネイル写真
カタボシアカメバル海水生。水深250m前後。福島県いわき市沖、[東京湾千葉県金谷]、相模湾〜和歌山県那智勝浦。・・・・
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