202504/10掲載

ハチジョウアカムツの兜煮

兜を食べるために、魚屋をやっているといった人もいる、うまし兜


煮つけにするなら、魚の体のなかでも複雑に骨が入り組んだ部分の方がおいしい。
いちばん複雑なのが、頭部とかま(胸鰭・腹鰭まわり)で、この部分を兜という。
骨が多くて食べにくいが、その労力に値倍するほどうまい。
料理とは時間を食べるものだ、と思っている。
骨と骨の間の身をほじくりほじくり、じっくり長々と、ちまちま食べると、ゆったりしたときが過ごせる。
その点からしても兜の煮つけは優れている。

赤いハチジョウアカムツの兜煮は、絢爛にして、見た目、雄壮でもある。
皮と皮直下には脂の層があるので、煮つけるととろとろになる。
身は繊維質で、箸でつまむとほぐれながら剥がれて、口の中に入れると脆弱に崩れる。
身に脂が混在しているので一度液化しているのである。
口に入れると体内温度でふたたび液化する。
固体から半液体化するときに感じる甘さ、うま味の豊かさ、調味料の味と、食べながら自分の周りにおいしさの空間が生まれた気がしてくる。

まずはこれにて5勺のご飯を食べて、昼を済ませる。
午後は、机の上にそのまま置いて、おやつとして、お茶の友としてつまむつもりだった。
夕方までもつな、と思ったら仕事でデータを受け取りに来た若い男子が、「欲しい」というので、残りを泣く泣くタッパーに入れてあげた。
お楽しみはこれからだ、と思っていたんだけど……。
「終いには骨湯(医者殺し)にするんだよ」。

お礼にはまんじゅうがいいからね。

高級魚だけど徹底的に食べるとむしろ安い


八王子綜合卸売センター、福泉に小笠原から体長45cm・1.7kgのハチジョウアカムツ(東京都小笠原村)がきていた。やはり高いな、とは思いながらもおいしい記憶に押されて手が出る。これは以前にも書いた。

これで兜煮を作る。
水洗いして頭部(兜)を梨子割りにする・
湯通しして冷水に落として鱗やぬめり、汚れを流す。
水分をよくきり。酒・砂糖・醤油、しょうがを沸かした中で煮る。
火傷が恐い人は、最初に酒・砂糖・水を鍋に張り、そこに兜を入れて火をつけてもいい。
醤油は控えめに、後々加減する。
つけ合わせは白菜の薹立ち菜。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。

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ハチジョウアカムツのサムネイル写真
ハチジョウアカムツDeep-water red snapper 濱鯛、紅鑽魚、紅雞仔、金蘭(臺東)、大頭(澎湖)、紅魚(澎湖)、肉檨(澎湖)海水魚。水深200メートルより深場。八丈島、鳥島、西之島、小笠原諸島、北硫黄島、硫黄島、神奈川県三浦半島三﨑、和歌山県・・・・
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