マダコ
代表的な呼び名タコ
マダコの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
全長60cm前後になる。体表は網目状。外套膜の表面に大きな疣がある。腕はほぼ同長。 全長60cm前後になる。体表は網目状。外套膜の表面に大きな疣がある。腕はほぼ同長。
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
魚貝の物知り度 |
★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 |
★★★★ 重要 |
味の評価度 |
★★★★ 非常に美味 |
分類 |
動物界軟体動物門頭足綱八腕目無触毛亜目マダコ超科マダコ科マダコ属
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外国名 |
Octopus, Poulp, Sucker
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学名 |
Octopus vulgaris Cvier.1707
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漢字・学名由来 |
漢字 真蛸、真蛸、真章魚 Madako
由来
■ 「た」は手、「こ」はたくさん。手がたくさんの意味。
■ 「た」は手で、「こ」はナマコの意。
■ 「てなが」が転訛したもの。
■ 「てこぶ(手瘤)」の意。
■ 鱗がないため「膚魚」の意。
■ 足が多いことから「多股」の意。 |
地方名・市場名 |
イソダコ 場所山形県庄内地方 イシダコ 備考ミズダコと比べると筋肉が硬いためだと思われる。 場所青森県 ゴジラダコ 場所青森県など タコ 備考日本全国で一般に。 |
概要
生息域
海水生。
青森県以南、日本各地。近年、日本海でも普通になり北上傾向にある。
生態
産卵期は瀬戸内海では6月〜9月前後でピークは6月と9月の2回。産卵期は地域によって違う。
寿命は2年から数年。
心臓は鰓の付け根に1、鰓の左右に2の計3。
大型の甲殻類や貝などを補食する。
墨汁嚢を持ち興奮したり危険を感じると墨を吐く。
ウツボなどが天敵。
基本情報
古くタコといったら本種のことをさしていた。もっとも一般的なタコといってもいいだろう。
ミズダコ、ヤナギダコ、テナガダコ、イイダコなど。
一時、マダコの水揚げ量が減少傾向にあったが、近年東北で増えてきている。国内で食用となっている国産のタコも冷水域のものから温かい海域の種に代わりつつある。
瀬戸内海や大阪湾では夏が旬とされ、東京湾では冬がうまいともいう。
またタコの卵はなかなか美味。塩漬けにしたものを海藤花(かいとうげ)という。
珍しさ度 もっとも一般的な食用ダコで、生きているものを手に入れるのもそんなに難しくはない。
水産基本情報
市場での評価 活けものと、ゆでたものがある。ともに非常に高価だ。年々入荷量が減ってきているように思える。
漁法 たこつぼ(箱)漁、釣り、底曵き網
産地 兵庫県、福岡県、岡山県
煮だこ マダコは生で食べられることは希。煮ダコ(ゆで)に加工されて出回る。市場では口を上にして胴(一見頭に見える)を下に置くのが一般的。関東では総て加工されたものを扱うが、関西では店頭で生を加工することもある。普通、小豆色のものが国産、赤いのがアフリカ産。
マダコの煮ダコ 国内で揚がったものをそれぞれ産地で塩ゆでしたもの。兵庫県明石、熊本県、愛知県などが産地。国産は色が濃く、赤と言うよりも小豆色をしている。触った感じも硬くしまっている。
アフリカ産煮ダコ アフリカ産原料で作られた煮ダコ。アフリカなど大西洋・地中海ものもはマダコとは別種の可能性がある。冷凍輸入されたものを解凍、2〜3パーセントの塩水でゆでる。古くは脚が丸まらないため、煮ダコ原料に適さないとされていたが、1963年に茨城県那珂湊の『あ印水産』、『山正水産』などが偶然、加工法を発見した。
選び方・食べ方・その他
選び方
ゆでたものは身が張って硬いもの。活けはやせていないものを選ぶ。
味わい
味のいいのは冬、たくさんとれるのは夏。
タコのうまさは筋肉のもつ食感のよさ。大量に含まれるタウリン、甘みを感じさせるグリシン、ベタインなどに起因する。
また独特の豆類を思わせる香りがあり、これもうまいと感じさせる要因に思える。
この旨味は生よりもゆでたり焼いたりして強くなる。
栄養
タウリン
タウリンはアミノ酸の一種で血圧を正常に保つ働きがある。また貧血予防、肝臓の解毒作用の強化、血中コレステロールの定価、強心作用、インシュリンの分泌促進、視力の回復などの効果がある。
銅
銅は血液中にあるヘモグロビンを作るために必要なもので貧血などを予防する。
危険性など
食べ方・料理法・作り方
マダコの料理法・調理法・食べ方/茹で蛸(しょうゆで、ガリシア風など)、煮る(芋たこ煮、トマト煮込み、柔らか煮)、刺身、天ぷら、オリーブオイル焼き
マダコの塩ゆで(ゆでだこ) いちど冷凍してから塩もみするとやりやすい。傘膜を切り頭部を裏返して内臓を取り去る。これを始めはただ揉む。表面に泡状のヌメリが出て来たら一度水洗い。塩をまぶして揉み洗いする。これを串などに刺して吊るし水分をよくきり、3〜5分前後ゆでる。1分くらいであげて生に近い状態で上げてもいい。
マダコの塩ゆで(煮だこ) 塩ゆでして冷やし、脚の部分を食べやすい大きさに切ったもの。脚の傘膜(びろびろした部分)を切り取る。これを一般的にタコの刺身と言う。
マタコの酢のもの 基本的にゆでたものを切ったものを、刺身的な扱いにしている。またゆでだこの基本的な利用法が酢の物である。マダコと合わせるのはキュウリやワカメと決まっていて、これも味わい深い。
マダコのガリシア風(ポルボ・ア・フェイラ/Polbo á feira) ゆでたてのタコ(ゆでだこの場合、電子レンジで軽く温めてもいい)を食べやすい大きさに切り、皿に盛り、塩をしてオリーブオイルを回しかけて、パプリカを振る。単純な料理だがオイルとパプリカが合う。
マダコの柔らか煮(たこの桜煮) 煮ると硬くなるのだが、長時間ゆっくり熱を通すことで柔らかくなる。これを柔らか煮という。なかなか難しい料理なのだが美味。醤油を使うと、ちょうど桜の樹皮を思わせる色合いになるので、桜煮ともいう。
マダコのトマト煮込み イタリアなどではトマトと煮込む。トマトのグルタミン、甘みと相乗効果で旨みが強くなり、非常に美味。傘膜を切り、内臓を出す。塩もみして湯通しして表面の滑りを洗い流す。水分をよくきり、生トマト、トマト缶、ポルト酒でことこと煮込む。
マダコの刺身 兵庫県、大阪府などでは盛んに活けタコの刺身が作られる。旨味よりも食感を楽しむものながら、とても美味。活を買い求め、生きている内に腕を切り取り皮を剥く。これをできるだけ薄くそぎ造りにする。
マダコの焼霜造り 活を買い求めて、腕を切る。皮を剥き、表面を強くあぶる。それをできるだけ薄くそぎ造りにする。生よりもタコらしい風味が強く、うま味は豊かだ。
マダコの天ぷら 煮ダコ(塩ゆでにしたタコ)を使ってもいいし、活を使ってもいい。煮ダコは少しだけ皮を残して剥く。活は皮を剥き、霜降りにする。小麦粉をまぶして衣をからめて揚げる。
たこ飯 干しダコを水で戻して、炊き込みご飯に。生のマダコを使うよりも味わい深い。干しダコは水でもどして細かく切る。これをご飯と炊き込む。
好んで食べる地域・名物料理
■大阪でな半夏生(はんげしょう)の7月2日にタコとハモを食べる習慣がある。時期的に「麦わらだこ」と呼ばれている。
■奈良県などでは「さなぶり(田植えが終わったころの骨休め)にタコの酢の物を食べる。
玉子焼き 兵庫県明石市。卵、だし、小麦粉でたこ焼き状に焼き上げるもの。具はタコのみ。これをだし、ソースなどで食べる。明石市では決して「明石焼き」とは言わない。[兵庫県明石市]
たこの卵焼き 溶き卵に少量の溶いたメリケン粉(小麦粉)を加え、塩をひとつまみ入れる。これを卵焼き器に流し入れて、ゆでたマダコを入れて端から巻き込んでいく。[兵庫県明石市/聞書き 兵庫の食事]
加工品・名産品
干しダコ
瀬戸内海、九州などで盛んに作られるもの。薄く切ってあぶって食べてもいいが、これを使った炊き込みご飯がうまい。岡山県下津井では寒くなって、年末年始まで、熊本県天草では夏に作られている。写真は岡山県下津井のもの。焙って食べる。水で戻して炊き込みご飯にしても美味。
干しだこ 塩をしてあまり硬くならない程度に干したもの。[明石浦漁業協同組合 兵庫県明石市]
たこみそ 兵庫県明石市『ヒカリ扇』。甘みの強い練り味噌にタコを入れたもの。ご飯に合う。
アヒージョ ガーリックオイルで煮込んだもの。スペイン料理。[輸入元 アシストバルール 大阪府大阪市中央区]
釣り情報
タコテンヤという独特の釣り具にガザミ(ワタリガニ)のエサをつけて手釣りする。
歴史・ことわざなど
半夏生 夏至から数えて11日目。この日までに田植えなどを終えておく。大阪では半夏生(7月2日)にタコを食べる。〈朝早くから魚屋さんが大きなたこを持ってくる〉、〈小麦もち、麦わらだこ、出合いもんのじゃがいもと真竹と二度豆の煮つけを食べる。この時期のたこを麦わらだこといいゆでてしょうが醤油か二杯酢で食べる/南河内村〉(聞書き大阪の食事)
蛸の八ちゃん 田川水泡(漫画家。代表作は『のらくろ』 1899〜1989)の漫画。この作品により「たこのはっちゃん」という言語が今に残る。
鮹の文字 延喜式(編纂開始延喜5年・905年)に蛸の文字がある。
夏の季語 「蛸壺やはかなき夢を夏の月」。『季語集』(坪内稔典 岩波新書)
たこからげ 着物の裾のあちこちをまくり上げること。
タコる ノーヒットで終わること。
蛸入道 タコ自体のことでもある。タコの頭が丸く入道頭(仏門に入り、頭をそった様)に似ているため。〈坊主頭を嘲り云う語でもある〉。
鮹を釣る 人を詰問してせい誅を加えること。『明治東京風俗語事典』(正岡容 有光堂 1957)
タコと芝居は血を荒らす 久保田万太郎の言葉。『夷斎小識(石川淳 中公文庫)』