タカサゴ

代表的な呼び名グルクン

タカサゴの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
30cm SL 前後になる。独特の色合いに黄土色の明瞭な縦筋がある。尾鰭の先端部に暗色(黒い)斑紋がある。ニセタカサゴと非常に似ている。背上部から2本目の筋は側線よりも下を通る。[宮崎県産]
尾鰭の先端部に暗色(黒い)斑紋がある。
30cm SL 前後になる。独特の色合いに黄土色の明瞭な縦筋がある。尾鰭の先端部に暗色(黒い)斑紋がある。ニセタカサゴと非常に似ている。背上部から2本目の筋は側線よりも下を通る。[[沖縄県うるま市]
30cm SL 前後になる。独特の色合いに黄土色の明瞭な縦筋がある。尾鰭の先端部に暗色(黒い)斑紋がある。ニセタカサゴと非常に似ている。背上部から2本目の筋は側線よりも下を通る。[沖縄県那覇市泊]
30cm SL 前後になる。独特の色合いに黄土色の明瞭な縦筋がある。尾鰭の先端部に暗色(黒い)斑紋がある。ニセタカサゴと非常に似ている。背上部から2本目の筋は側線よりも下を通る。[15cm SL・62g]

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タカサゴ科クマササハナムロ属
外国名
Black-tip fusilier
学名
Pterocaesio digramma (Bleeker, 1864)
漢字・学名由来

漢字/高砂 Standard Japanese name / Takasago
由来・語源/タカサゴは神奈川県江ノ島での呼び名。華やかな姿から南海のことを思ったのかも。

タカサゴ/Pterocaesio digramma (Bleeker 1864) ニセタカサゴ/Pterocaesio marri Schultz 1953の混乱
タカサゴの意味 タカサゴは相模湾の呼び名だとされているので、高砂国すなわち臺灣を指す言葉ではない。“たか”は漁村用語で岩礁のこと、“さご”は「細魚」、「小魚」のこと。「岩礁帯にすむ小魚」の意味という説もある。『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)
現タカサゴは相模湾にはいなかった。もしくは少なかったのではないか 標準和名タカサゴの「たかさご」という言語は東京、小田原での呼び名と田中茂穂はしているが、現タカサゴは相模湾に当時いたとは思えない。いたとしても少なかったのではないか。田中茂穂のタカサゴの図はニセタカサゴだ
1935年のタカサゴの図は明らかに現ニセタカサゴ 1935年のタカサゴ(Caesio chrysozonus CUVIER.)の図は現ニセタカサゴである。〈タカサゴ Caesio chrysozonus CUVIER. ……八丈島及び小笠原島付近以南・琉球・フィリピン・東印度諸島及び印度洋に廣く分布する。熱帯魚で東京市場へは夏季八丈方面から大量に入荷する。稍、美味。惣菜用の外種として蒲鉾原料とする〉『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)
ニセタカサゴがニセンタカサゴ(2線タカサゴ)の校正ミス この場合の線は黄色い縦筋のことであるが、現ニセタカサゴは背鰭下の1本が不明瞭で、1本だけに見える。むしろ現タカサゴの方が明瞭に2本であるので、1938年のニセンタカサゴは現在沖縄などに多いタカサゴを差す可能性が非常に高い。実際、『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)のタカサゴの図は明らかに本種であり、本来のタカサゴは本種であった可能性が高い。
現ニセタカサゴこそタカサゴという標準和名がつけられるべきだった 相模湾に今現在普通に見られるのはニセタカサゴの若い個体である。タカサゴという標準和名は、間違いなく今現在相模湾に普通に見られる現ニセタカサゴ/Pterocaesio marri Schultz 1953 に対してつけた和名である。たぶん田中茂穂以前の魚類学者が相模湾にいるタカサゴ類を今現在、沖縄県以南に見られるミナミタカサゴと誤同定して以来の混乱である。
この混乱がタカサゴ科の分類に影響を与え続けていると考えている。
1938年時はニセタカサゴに関しては正しい種小名 〈タカサゴ屬 タカサゴ(Caesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes/種小名は現ミナミタカサゴ)・ニセンタカサゴ(Caesio diagramma Bleeker, 1864/現タカサゴの学名)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
1955年にニセタカサゴ登場 〈タカサゴ科タカサゴ属 タカサゴ Caesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes(種小名は現ミナミタカサゴ) ニセタカサゴ(Caesio diagramma BKEEKER)〉『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
この時点の標準和名ニセタカサゴが現タカサゴの学名の種小名と一致する。沖縄県に多い、現タカサゴがニセタカサゴと考えられていた可能性が高い。この時点でニセンタカサゴがニセタカサゴになるが、誤植、校正ミスである可能性が高い。
標準和名タカサゴなのにタカサゴ属からクマササハナムロ属への変更
また古く タカサゴをCaesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes としてしまったために、 「Caesio Lacepède, 1801」がタカサゴ属になる。のちにタカサゴ、ニセタカサゴなどは「Pterocaesio Bleeker, 1875(クマササハナムロ属)」であることがわかる。それ以後、タカサゴ、ニセタカサゴはタカサゴ属ではなくクマササハナムロ属となる。

Bleeker
Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。岩礁域、サンゴ礁域。
相模湾、駿河湾和歌山県、四国の太平洋沿岸、宮崎県、鹿児島県、屋久島、琉球列島に生息している。
若狭湾〜山口県の日本海沿岸、長崎県福江・男女群島、有明海、鹿児島県南さつま市笠沙。
台湾、西太平洋、オーストラリア沿岸。

ニセタカサゴ(上1固体)とタカサゴ(下2固体)両方が上がる 相模湾では秋に2種が混ざって揚がる。タカサゴの方が多いという話もある。

生態

沿岸のサンゴ礁、岩礁域
雑食性。
産卵期は5月から7月。

基本情報

タカサゴ科は熱帯域に多いが、本種とニセタカサゴはもっとも北に生息域を持つ。
千葉県南房総以南に生息しているが、徐々に北上している可能性がある。
漁業的にも北上していて、相模湾の定置網ではありふれた魚になりつつある。相模湾などではニセタカサゴと一緒に水揚げされている。駿河湾以南でも同様のことが起こっているはずで無視できない存在になっているはずだ。
また琉球列島で揚がるものと、本州で揚がるものは脂ののりに大きな差がある。
珍魚度 まったく普通の食用魚だが、同定が難しい。沖縄県で探すと比較的見つけやすい。

水産基本情報

市場での評価 関東ではいまだ見ていない。
漁法 追い込み漁、定置網、刺し網
産地 沖縄県、鹿児島県、宮崎県
タカサゴ 体側背の部分、2本目の黄色い縦帯と側線は重ならない。黄色い帯は側線の下を走る。
ニセタカサゴ 体側背の部分、胸鰭の上にある黄色い縦帯と側線は重なる。

選び方・食べ方・その他

選び方

味わい

旬は不明。相模湾での旬は9月くらいからだと思うが、琉球列島の固体に当てはまるかどうかは不明。
鱗は薄く小さく取りやすい。皮はやや厚みがある。骨は中骨はやや硬い。
透明感のある白身で血合いはあまりきれいではない。熱を通しても硬く締まらない。
本種の問題点は漁獲して時間が経つと身がくすんでしまうことだ。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

タカサゴ(グルクン)の料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、霜造り)、揚げる(フライ、天ぷら、唐揚げ)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き)
タカサゴの刺身 琉球列島の固体と相模湾の固体の身質が違っているようだ。沖縄の固体は大型だが脂は少ない。相模湾秋の固体はそれほど大きくはないものの非常に脂が豊かでうま味が強い。脂が強いだけではなく魚としてのうま味も豊かである。
刺身は皮下に薄らと脂が層を作り、身にも脂が混在している。口に含むと口溶け感がして甘い。身にもうま味があって舌の上で味がだれない。
水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。皮を引いて刺身状に切る。

タカサゴの焼霜造 三枚に下ろして、血合いがあまりきれいではないので、皮を生かすといい。皮はやや厚みがあり硬いので霜皮造りよりも焼霜造りに向く。皮目に独特の風味があり身に甘味があっていい味をしている。
タカサゴのフライ 相模湾の固体で作った。小さいけれど脂があり、揚げても柔らかく豊潤であった。皮がなくても味がありそうなので、今回は皮付きだが、次回は引いて作ってみたい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、塩コショウする。小麦粉をまぶし溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。
タカサゴの天ぷら 小型だが味があり、皮に風味もある。天ぷらにしてまずいわけがない。高温でさくっとした仕上がりに揚げる。この皮周辺にうま味がある。身は豊潤で甘みがあり、天ぷらとしての完成度が高い。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。軽く振り塩をして少し置き、出て来た水分を拭き取り、小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で揚げる。
タカサゴの唐揚げ 沖縄に行くと食堂などで「ぐるくんの唐揚げ」などというものがある。一品料理ではなく、唐揚げが主菜の定食である。この唐揚げでご飯というのは意外に新鮮である。
水洗いしてていねいに水分を拭き取る。片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げする。水分が多いのでじっくり揚げるとさくさくと余すところなく食べられる。皮に独特の風味があり、捨てがたい味わい。醤油を垂らすとご飯にも合う。
タカサゴの煮つけ 相模湾秋の個体は脂が乗っている。沖縄県の固体とは別物のようである。小振りのものを煮つけてみた。脂があるので身が硬く締まらない。身離れもよく身自体にもうま味がある。水洗いして頭部と尾を取り去り、湯通しする。冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。水分をよく切り、酒・みりん・醤油・水で煮る。
タカサゴの塩焼き 水洗いして適宜に切れ目を入れて振り塩。脂がのっている時季なら1時間以上寝かせたい。これをじっくりと焼き上げる。脂がのっているものは中から脂が染み出してきて表面が揚げたように香ばしくなる。非常においしい。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

沖縄では蒲鉾原料。
奄美大島「いゆうみす(魚味噌)」 タカサゴやスズメダイ、イトヨしなどの白身魚をうきりで焼いて、ほぐし、「なりみす(ソテツの実を麹にしてつくった味噌)」に混ぜ合わせる。『聞書き 沖縄の食事』
タカサゴの開き干し
宮崎県で見つけたもの。他の地域でも作られていそうだが、定番的なものではない。非常に脂がのっており、身質もよい。非常に美味。[スーパーとむら 宮崎県日南市]

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

アカムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県二木島、和歌山県田辺・周参見・見老津・和深・串本 
ニセンタカサゴ
参考文献 場所別名 
ヒメシマムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和深 
チャムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県木ノ本 
ハナムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県田辺 
アカメンタイ メンタイ
サイズ / 時期幼魚 備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県白崎・串本・太地 
ユミズ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考文献 場所有明海 
タカサゴ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所東京、小田原、鹿児島県種子島 
センスル センジマー アカジュー
場所沖縄県 
センジユー
参考文献 場所沖縄県 
フゥーイゥズ
サイズ / 時期大型 参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島 
カブクヮヤーグルクン
場所沖縄県八重山 
カブクヮヤー カブクヮヤー
場所沖縄県南城市知念漁協 
ハラグルクン
場所沖縄県宮古島 
カブクヮーグルクン
場所沖縄県沖縄本島 
サネーラー
サイズ / 時期幼魚 参考河村雄太さん 場所沖縄県石垣島 
タナムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考文献 場所長崎県 
アカヘエジ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考文献 場所高知県佐喜ノ浜 
アカウルメ[赤潤目]
場所鹿児島県奄美大島 
ハーウルメ
参考奄美漁業協同組合 場所鹿児島県奄美大島 
イソムロ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 
グルクン
参考聞取、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島、沖縄県 
シマゴツテ
備考ニセタカサゴである可能性が高い。 参考文献より。 場所三重県鳥羽