アンコウ
アンコウについて

福島県原釜のキアンコウ
「あんこう」とは、アンコウ科の魚で食用となったことのある種をさすが、基本的にはキアンコウ(本アンコウ)のことだ。流通量も多く、アンコウ科の中でも味がいい。江戸時代から関東でよく食べられた「あんこう鍋」も「あんこう汁」もキアンコウで作られるものだ。
キアンコウ自体も、鍋や汁も季語は冬だ。本来は深海魚で江戸時代の漁業技術ではとることができない。寒くなると産卵のために江戸湾、相模湾、房州(千葉県外房)の浅場にやってくる。浅場にやってきて初めて当時の技術で魚のいる水深に網が届いた。
比較的浅場にいるアンコウ(クツアンコウ)は「くつあんこう」といって区別されて、格段に安く、冬の味覚として認知されていなかった。
ただし、現在でも食用とはないっているので、キアンコウの代用品として「あんこう鍋」となる。キアンコウに準じるということでアンコウに含める。
関東では当たり前の、あんこう鍋、あんこう汁

茨城県水戸市のみそ仕立てのあんこう鍋
東京都内では寒い時季になると「あんこう鍋」を出す店が増える。これは関東ならではのことだったもので、東京湾、相模湾など水深の深い湾が間近にあるために生まれたものだと考えている。大阪や名古屋など周辺に浅い海域しかもたない地域との違いは地理的条件からくる。
寶井其角(寛文1〜宝永4年 1661-1707 芭蕉十哲のひとり)に「鮟鱇をふりさけ見れば厨かな」がある。江戸時代以来、江戸の町では寒くなると「あんこう鍋」が時季のものだったことがわかる。
東京都内では「しょうゆ仕立て」。茨城県ではきもを炒り煮にしてみそ、キアンコウを煮立てた「どぶ汁」があり、また単にみそ仕立ての鍋もある。
鍋に仕立てるのではなく「あんこう汁」というのもあった。
「アンコウ」と呼ばれる水産物一覧
●印は「アンコウ」ですがそれ以外はアンコウの仲間ではありません。
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アンコウ ●
アンコウ目アンコウ亜目アンコウ科アンコウ属
海水魚。水深30メートル〜510メートル。明らかにキアンコウよりも浅場にいる。 北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、北海道噴火湾〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域。 朝鮮半島全沿岸、済州島、中国(長江沖を除く)東シナ海・南シナ海、台湾、希にピーター大帝湾、インド-西太平洋。国内では北海道から九州までの沿・・・アンコウのページへ -
オオモンカエルアンコウ
アンコウ目カエルアンコウ亜目カエルアンコウ科カエルアンコウ属
海水魚。沿岸の水深45mよりも浅い岩礁・サンゴ礁域。 山口県日本海側、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾〜九州南岸の大平洋沿岸、屋久島、琉球列島。 台湾、インド-西太平洋、サモア諸島、ハワイ諸島、タヒチ島、東太平洋パナマ、コロンビア沖。オオモンカエルアンコウのページへ -
カエルアンコウ
アンコウ目カエルアンコウ亜目カエルアンコウ科カエルアンコウ属
海水魚。水深219メートルよりも浅場の砂底、砂泥底。 北海道〜九州沿岸の日本海・東シナ海、宮城県〜九州南岸の太平洋沿岸、伊豆諸島、小笠原諸島、瀬戸内海、奄美大島。中国、台湾、インド・西太平洋域。ハワイ諸島。食用魚ではない。カエルアンコウのページへ -
カエルアンコウモドキ
アンコウ目カエルアンコウ亜目カエルアンコウ科カエルアンコウモドキ属
海水魚。水深45mより浅い岩礁域。 伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、琉球列島。台湾、インド・西太平洋域、サモア諸島、ハワイ諸島、タヒチ、東太平洋。カエルアンコウモドキのページへ -
キアンコウ ●
アンコウ目アンコウ亜目アンコウ科キアンコウ属
海水魚。水深25-560m。 北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、兵庫県明石、瀬戸内海、有明海。渤海湾、黄海、東シナ海北部、朝鮮半島全沿岸、済州島、広東省、ピーター大帝湾。国内では南西諸島、琉球列島をのぞき日本各地で水揚げがある大型魚だ。一般に「あんこう」、「本あんこう」と呼ばれているのは・・・キアンコウのページへ -
シモフリハナアンコウ
アンコウ目アンコウ亜目アンコウ科ヒメアンコウ属
海水魚。水深274〜535メートル。 駿河湾から九州。パラオ海嶺。駿河湾などでも見つかっているが、天皇海山など遠洋での漁で揚がる魚である。 基本的に冷凍流通であるが、鍋ものなどキアンコウ(アンコウ)と同様に利用できる。 またアンコウ類は冷凍しても用途的に問題が少ないのもよいところだ。珍魚度 珍しい魚で・・・シモフリハナアンコウのページへ -
ソウシカエルアンコウ
アンコウ目カエルアンコウ亜目カエルアンコウ科ソウシカエルアンコウ属
海水魚。沿岸の水深185メートルより浅い岩礁地帯。 山口県日本海側、伊豆大島、八丈島、駿河湾、熊野灘、和歌山県串本、高知県柏島、沖縄島。 フィリピン、ニュージーランド、レユニオン島。カエルアンコウの中ではもっとも大型になる。暖かい海域に生息するが生息数が少ないのか、珍しい魚のひとつだ。当然、ほとんど流通しない。ソウシカエルアンコウのページへ -
ノドグロヒメアンコウ
アンコウ目アンコウ亜目アンコウ科ヒメアンコウ属
海水魚。水深130-600m。 三重県尾鷲、東シナ海大陸棚縁辺域〜斜面上部域。 朝鮮半島南岸東部、台湾南部、アフリカ南東岸、マダガスカル。小型のアンコウで深海魚だ。深場の底曳き網などで揚がるが希にとれることがあるものの、認知度が低いので安い。ときに廃棄されることもある。珍魚度 珍しい魚ではないと思うが・・・ノドグロヒメアンコウのページへ -
ハナグロフサアンコウ
アンコウ目フサアンコウ亜目フサアンコウ科フサアンコウ属
海水魚。水深170-600m。 千葉県銚子、駿河湾、熊野灘、土佐湾、北緯30度以南の東シナ海大陸棚縁辺、九州〜パラオ海嶺。珍魚といってもいいと思う。流通にはほとんどのることがない。 生息域などいろんな意味で研究途上にある。 底曳き網などで揚がっても近縁種で比較的水揚げ量の多い、ミドリフサアンコウなどと混同されている可能・・・ハナグロフサアンコウのページへ -
ホンフサアンコウ
アンコウ目フサアンコウ亜目フサアンコウ科フサアンコウ属
海水生。水深30-590m。 青森県三戸郡階上町大字道仏小舟渡、千葉県銚子〜土佐湾の太平洋沿岸。[長崎県五島列島・長崎市・鹿児島県甑島を結んだ線の中央のあたり]、東シナ海の大陸棚縁辺〜斜面、九州〜パラオ海嶺。 中国南シナ海沿岸、西沙諸島、大スンダ列島南岸、オーストラリア北西岸・東岸、サンゴ海。本州以南の深場の底曳き網、・・・ホンフサアンコウのページへ -
ボンボリカエルアンコウ
アンコウ目カエルアンコウ亜目カエルアンコウ科カエルアンコウ属
海水魚。水深90メートルよりも浅い砂泥底。 神奈川県小田原、和歌山県田辺湾、高知県、沖縄島。韓国、台湾、インド・西太平洋域。ボンボリカエルアンコウのページへ -
ミドリフサアンコウ
アンコウ目フサアンコウ亜目フサアンコウ科フサアンコウ属
海水魚。水深30〜590メートル。 富山湾、九州西岸、五島列島西岸、青森県八戸、千葉県銚子〜九州南岸の太平洋沿岸。 東シナ海大陸棚縁辺〜斜面域、朝鮮半島南岸、台湾。駿河湾以南の底曳き網にしばしば混ざるもの。産地周辺と限定的ではあるが、フサアンコウ属の中ではもっとも頻繁に食用となっている。 愛知県、三重県などでは干ものな・・・ミドリフサアンコウのページへ