202407/28掲載

鳥羽市安楽島貝類図鑑 オニサザエ

サザエとついているがサザエとは縁もゆかりもない


三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。
鳥羽市は内湾(伊勢湾)でもあり外洋(太平洋)でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。
民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。
さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。
今回は鳥羽市安楽島で「ガンゴージ」と呼ばれているオニサザエである。この「ガンゴージ」の意味は不明であるが、本種の地方での呼び名は非常に多く、しかも意味不明なものが多い。
サザエとあるが、実はサザエとは縁もゆかりもない巻き貝で、この仲間(アッキガイ科)には食用として一般的なものはほとんどない。
ちなみに一般的に「貝」とされるものは、軟体動物の巻き貝と二枚貝のことである。
二枚貝はアサリなど水揚げ量の多い種はいるが種類はとても少ない。
対するに巻き貝は非常に種が多い。二枚貝の数倍の種がいて、いまだに新種が生まれている。余談になるが新種発見はだれでも出来るが、新種記載は膨大な時間を要し、大変なのである。
中でも本種のアッキガイ科は種類が多く、しかも同定が難しいことでも有名である。本種なども珍しい巻き貝ではないが、慣れないとどうしても同定に時間がかかる。

トゲトゲの棘は岩に擬態して、岩にはまって取りにくくしている


本種のアッキガイ科テングガイ属は世界中で食用になっているが、本種がいちばん北に生息域を持つ。
今回のものは殻長(貝殻のいちばん長い部分の長さ)10cm前後なので、巻き貝としては大型であることがわかるだろう。
全身から太い棘が突き出しており、磯などに挟まっていたら見つけるのは非常に難しい。
鳥羽市の海女の目がいかに凄いかがわかるだろう。
本種を食べる地域は生息域と重なり、暖流の影響の強い場所であり、三重県では鳥羽市以南だと考えている。
食に関しては別項を立てるが、非常にうまい巻き貝である。
出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)

このコラムに関係する種

オニサザエのサムネイル写真
オニサザエ海水生。水深30メートルより浅い岩礁地帯。能登半島・房総半島以南。台湾、中国沿岸。・・・・
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