202403/29掲載

イガイに挑んで意外な手強さに苦しむ

10個単位で貝殻を撮影して計測する


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で宮城県産だという、「しゅーりがい」を買う。重さをチェックしたクマゴロウの恋女房は、ためらうことなく伝票に「ムールガイ」と書いた。
今や「しゅーりがい」も、「しゅうりがい」も、「いのかい」も、イガイも消滅して、「ムールガイ」になってしまったのだ。
本来、Mulgaï (ムール)はヨーロッパイガイと日本列島でも大繁殖しているムラサキイガイの、ヨーロッパ、アメリカ、カナダの呼び名であって、イガイはイガイなんだけど世間は標準和名イガイすらを抹殺しようとしている。驚くべきは産地の伝票すらムールとなっていることが多い。
簡単にいうと、本来日本列島にいたイガイは、ヨーロッパから来た新参者のムラサキイガイに流通の場で量的に負けており、最近では呼び名すらカッコイイからかも知れないけど、「ムールガイ」にされているのだ。これじゃ、ヤマト王権に抹殺された縄文人じゃねーか。
千葉市で、本来はマイクロシェルという、実に深い奈落のような底を這うような世界の研究家、黒住耐二さんとイガイ属の検索に関して話してきた。
イガイ属の同定はとても難しい。簡単に考えると簡単だけど、自分で検索項目を考えないといけない。
国内海域には本来いなくてサハリンなどからの移入種、キタノムラサキイガイを加えて考えると、余計に難しく脳みそが奈落の底に落ちていくような気がする。
さて、イガイは撮影が終わったら、少量の水分(真水)で蒸し煮にしては貝殻の内側を撮影する。

貝殻から外し、もじゃもじゃの足糸を外す


撮影が終了したら、足糸を抜く。
あとは、蒸し煮にしたときのジュと一緒に皿に盛る。

レモンよりもライムの方が合う


ライムをたらしてぱくりと食べる。
この繰り返しに、同定のためにやっているのか、食べたいためにやっているのかわからなくなる。
その内、足糸がボウル半分ぐらいになる。
宮城県石巻市で子供の頃、イガイにあたって死ぬほどの苦しみを経験したという人に会っている。きっとそのとき貝毒が発生していたのだろう。それほどの目に合っても、やはりイガイはうまいという。
ちなみに最近の流通技術の向上から、貝毒が発生すると採取も流通も不可となり、腐敗に関しても全く問題がないことも明記しておく。
あまりのうまさに思考が停止しそうだったが、本種の殻頂部分は刻まないという結論達した。

このコラムに関係する種

イガイのサムネイル写真
イガイHard-shelled mussel, Korean mussel海水生。潮下帯から水深20メートルの岩礁域。北海道から九州。・・・・
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