202306/10掲載

キツネがつくベラ科はすべてうまい

まさにキツネ顔のキツネベラ

キツネ顔

八王子総合卸売協同組合、マル幸、クマゴロウが銭州から帰ってくると、本命穴馬全部どけて魚と魚の間に挟まった比較的ミニな魚を探す。
今回もウメイロ、シマアジなんてものには目もくれず、釣り師がいちばん嫌がることに熱中する。
魚まみれになった甲斐があり、大発見があったのである。この、本命も穴馬を釣り上げるためのシマアジ用13号の釣り針で、ミニな魚でももなんでもかんでも釣り上げる天才ぶりに恐れ入る。すばらしいじゃ、ありませぬか!
ミニを手に取ってうれしい涙をこぼしていたら、「そいつらがいなけりゃ、ウメイロ一束だったけんね」なんて天才釣り師が吠える。吠えても馬耳東風だけど、ミニだけを喜んでいては、天才釣り師に悪いので準本命も持ち帰ってきた。キツネベラである。余談になるがベラ科でキツネのつく種は総てうまい。
ベラ科のキツネ問題というのがあり、魚類学の世界の牧野富太郎のようなものである田中茂穂が、ほとんどがキツネ顔をしているベラ科で、どの種(学名はすでにあるので)にキツネ+科名を与えるかで迷ったようなのだ。結局、魚類学を今の形に大成した松原喜代松がこの迷いを払拭して、本種が見事にキツネベラとなった。
要するに本種はキツネ顔だらけのベラ科の中でも、特別にキツネ顔であるという、お墨付きをもらったことになる。そのキツネ振りは見事な犬歯と口を開けたときの姿を見ればわかる。
さて、天才釣り師いわく、「ばっきばっきにいいからよ」、というキツネベラは、ほんまに触っただけで中身が見えるようであった。

刺身は見ただけで味がわかる

キツネベラの刺身

実際下ろしてみるとほどよく白濁した身(筋肉)が切りつけた直後に盛り上がりつつ、包丁に脂の皮膜がべっとりとついた。
刺身の味は名状しがたい。
舌にのせて甘味がいきなり来るものの、なんとなく平穏無事に喉の奥に消えてしまう。が、また箸が無意識に伸びてしまうのだ。今どきの漫画の主役のように手が伸びる。伸びて伸びて、ほぼ1尾、刺身だけで食い尽くしてしまいそうになる。
恐るべきことに酒を飲むのを忘れていた。

このコラムに関係する種

キツネベラのサムネイル写真
キツネベラTarry hogfish海水魚。岩礁域、サンゴ礁域。八丈島、小笠原諸島、火山列島、静岡県富戸〜高知県柏島、[愛媛県宇和島]の太平洋沿岸、熊本県・・・・
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