ムレハタタテダイ・ハタタテダイめも
昔は稚魚が多かった

ムレハタタテダイとハタタテダイは混乱期が長かった。
まず最初に田中茂穂以前、石川千代松などが神奈川県江ノ島などで採取した個体を、Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758) とする。ジョーダンの、Heniochus diphreutes (Jordan,1903) のムレハタタテダイの新記載は、標準和名決定の後である。
ハタタテダイ/Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758)
ムレハタタテダイ/Heniochus diphreutes (Jordan,1903)
日本列島で見る限り、ムレハタタテダイの方が一般的で、ハタタテダイの方が珍しい。本州などではハタタテダイの方がより南方系である。標準和名、ハタタテダイの方がムレハタタテダイより早いが、1903年に日本列島で普通のHeniochus diphreutes (Jordan,1903) とむしろ珍しい、Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758) とで標準和名の再検討をすべきだった。
標本としてのムレハタタテダイは東京大学総合研究博物館動物部門所蔵魚類標本リストで見る限り1909年~、だが当然ハタタテダイと混同。ハタタテダイも同様である。基本的に稚魚が多い。両種ともに1950年代まで日本列島での成魚は非常に少なかった可能性がある。
ハタタテダイは我がデータベースのデジタル画像では2005年の三重県尾鷲市の成魚があるが少ない。日本列島で見る限り、ムレハタタテダイが普通でハタタテダイの方が珍しいと思われる。呼び名もハタタテダイとムレハタタテダイは共通させる。
今現在、相模湾でムレハタタテダイの成魚は普通である。個人的には相模湾ではハタタテダイの成魚は見ていない。
我がデータベースのデジタル画像では2002年に三重県尾鷲市の成魚。
近々2025年5月09日、神奈川県二宮沖二宮定置 130mm 二宮定置。
ムレハタタテダイが一般的な専門書に登場するのは1984年で、井田齊の解説による。
『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975/11/25)にムレハタタテダイは掲載されておらず、明らかにハタタテダイの中にムレハタタテダイの記述がが含まれている。
ハタタテダイ/本州南岸では夏から秋に幼魚が内湾の浅所でよく見受けられる。それらは晩秋に港口部に集まり、深みに移動する。成魚は奄美以南に普通。時に数十匹の群れをつくる。
『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)
分布域が南北(北緯)20度より高緯度であること。生息水深がやや深い(3~180m)ことなどで区別される。井田齊(さとし)