旬はもう少し後のホウボウで鍋
ホウボウは主役でありながら脇役を立てる

鍋は孤独で不幸せな人間の生命維持に欠かせない。
昔、群馬県松井田町で、「年取って一人っきりの男はすぐ死ぬ」と、食文化を聞き取っていたバアチャンに言われたことがある。
本当はコイなど淡水生物の話を聞きたかったので、またバアチャンの脱線が始まったと、ヤな感じがしたが、たぶん本当だろうとも思ったものだ。
ほんま一人っきりで不幸せな人間は健康のことを考えないとだめだ。
先に戻るが、だから鍋で、鍋くらい身体にいいものはない。
今回の主役はホウボウで煮えた味わいがすこぶるつきにいいし、つゆがまた矢鱈にうまい。
こんなにおいしいだしを放出しても、ホウボウ自体がこんなにうまい。
そこがホウボウのよさである。
江戸の昔から上物で、非常に上品な味の魚なのである。
そのくせおいしいのだから言うことなしだ。
なにがおいしいのだろう、というと全部だ。
皮に味があるし、身に甘味がある。
硬い頭にだってちゃんと身があってしゃぶると、脳みそや皮などいろんな味がする。
いいだしが出るので野菜や豆腐など脇役全部がおいしい。
昔、鍋料理だと酒の出(売れ行き)が落ちると居酒屋オヤジが言っていたが、酒があまりすすなまいのも、よろしいなー。
鍋疲れがしてきたら、ぜひ鰾に箸を伸ばすべし。
ただの浮力調整器というにはおいしすぎるのである。
二重になった袋に脂があり、ちょっとだけトロリンとしている。
〆の雑炊もよし、麺もよしで、後はおぼろ〜♪ なのだ。
羽もあるし、頭も硬いので、いいだしがでる

12月5日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に茨城県産ホウボウが来ていた。最近茨城県の魚は扱いがとてもよくなっている。
これから徐々に入荷が増えていくはずである。
今回の個体は体長27cm・300gで、触った感じからして脂が乗っているとは思えない。
以上は前回にも書いた。
ただ、寒い師走にホウボウはとてもいいのである。
なぜなら鍋にしてグッドだからだ。
ホウボウは水洗いして食べやすい大きさに切る。
肝や鰾なども大切に取り分けて置く。
湯通しして氷水に落として表面の小さな鱗とかぬめりを流す。
水分をよくきる。
昆布だしに酒・塩で味つけしたつゆの中で煮ながら食べる。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。