傷ついて尾がねじ曲がったマサバに乾杯!
努力の結果か、強い食感と脂があることに驚き
1切れ口に放り込んで厚く切りつけすぎた、と後悔した。
食感が半日経っても強いのである。
この食感の強さは身に張りがある証拠である、ということで、とても健康的だと言えるだろう。
自分のぶよぶよお腹を見ながら、この障害を乗り越えたサバに乾杯したくなって、シャブリをそそぐ。
上等なシャンパンがあればよかったのにな、なんて思ったほどに味がある。
マサバの味は、うま味成分の多さから来る味である。
決して濃厚でも、くせのある味でもない。
ストレートな、そのまんまのうまさだ。
そのうまさが、今回の固体は取り分け大きい。
そして噛むほどに脂が浮き上がって来て、まったりした舌触りになる。
脂は呈味成分でもないし、当たり前だけど糖質でもないのに、溶ける時間だけ甘く感じさせてくれる。
その味が、誰かがくれた、冷蔵庫で2年近く寝ていた、高そうなシャブリにとても合う。
いずれにしても、今回の固体に当てはまった、「苦労して大きくなった魚の方が、のほほーんと大きくなった魚よりもうまい」法則は、これからどこまで当てはまるのか?
こうなりゃ、小田原で障害を負った魚を探すしかない。
次々に生まれてくる美味の法則にボクはついていけないかも
2024年10月4日の神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置は大漁だった。みなが忙しく右往左往しているところで、ボクはあいかわらず単なるお邪魔デブそのものだった。
ここ数年、9月、10月に揚がるのはゴマサバではなくマサバである。
今回のマサバは大型は少ないものの、みな健康優良児タイプである。
この体長20cm前後から35cm前後を同定していくと、やはり二宮定置のは総てマサバである。他の定置でもゴマサバよりもマサバが多い。
そんな中、カイくんが尾に近いところがねじ曲がったマサバをボクに渡しながら、「これもそうだけど、(魚は)ケガなんかして苦労して大きくなった方がうまいんです」と言ったのだ。
「そんなバカな」とは思ったが、サバを差し出すその目に光がピカピカっしていたのだ。
きっとこのサバを食べなければ一生後悔するに違いないと思って持ち帰った。
その事故体験あり推定34cm・370gはたぶん3歳魚で、売れるサイズだけれど、1歳か2歳のとき、恐いカマスとかカツオに尾にがぶりとやられたんだろうな。
ただでさえ、生きるのが難しい海の中、「がんばるしかないさ♪」とがんばったんだと思う。
最大の推進力を生む尾鰭が充分でないというハンデがあるのに、ここまで育っただけでも凄い。
普通、苦労したサバはダメだと思われているが、逆ってあるんだろうか?
持ち帰ってすぐに水洗いして三枚に下ろす。
腹骨・血合い骨を取り、皮を引き刺身にする。
二宮定置のみなさん、Kai’s Kitchenのカイくん、ありがとうございました。