クロアジモドキ

Scientific Name / Parastromateus niger (Bloch,1795)

クロアジモドキの形態写真

40cm SL 前後になる。背鰭棘は皮下に埋没して見えない。腹鰭は稚魚期にはあるが、成魚にはない。第2背鰭、臀鰭は基底が非常に長い。稜鱗(ぜんご)はなく尾柄部に隆起がある。
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40cm SL 前後になる。背鰭棘は皮下に埋没して見えない。腹鰭は稚魚期にはあるが、成魚にはない。第2背鰭、臀鰭は基底が非常に長い。稜鱗(ぜんご)はなく尾柄部に隆起がある。40cm SL 前後になる。背鰭棘は皮下に埋没して見えない。腹鰭は稚魚期にはあるが、成魚にはない。第2背鰭、臀鰭は基底が非常に長い。稜鱗(ぜんご)はなく尾柄部に隆起がある。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科アジ亜科クロアジモドキ属

    外国名

    学名

    Parastromateus niger (Bloch,1795)

    漢字・学名由来

    漢字 黒鰺擬 Kuroajimodoki
    由来・語源 田中茂穂の命名。黒は体色から。アジモドキはアジ科ではないが、アジ科に近い形態をしていると考えられたため。1950年代まではクロアジモドキ科が立てられていた。要するに形態特にはアジ科に近いが、アジ科ではなく、体色が黒い魚という意味だった。
    〈クロアヂモドキ科 Apolectidae クロアヂモドキ属クロアヂモドキ Apolectus niger (BLOCH) 本科魚類は體形及び背鰭が1基で臀鰭とともに基底が長い事等に於てマナガウヲ型類に似ているが、咽頭齒がない事、尾鰭兩側に隆起線がある事及び脊椎骨が10+15=25である事(マナガツヲ族では30以上)等の性質はアヂ科の魚類に似てゐる。本科は此の両者の中間性を帯び、系統上興味深い1群である 〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    pomfret 英名、Black pomfret は黒いマナガツオという意味。姿も身質もマナガツオに似ている。
    Bloch
    Marcus Élieser Bloch(マルクス・エリエゼル・ブロッホ 1723-1799 ドイツ)。医師、博物学者。ヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー(Johann Gottlob Theaenus Schneider)とともに『110の画像付分類魚類学』を刊行。
    Tanaka
    田中茂穂(Shigeho Tanaka 明治11-昭和49 1878-1974 高知県)。東京帝国大学にて魚類の分類を始める。日本魚類学の父。170種前後の新種を記載。献名された種も少なくない。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深55〜80メートル。
    少ないが青森県牛滝、[京都府宮津市丹後半島東岸]、兵庫県浜坂、島根県浜田、山口県の日本海沿岸、小笠原諸島、瀬戸内海、茨城県〜九州南岸の太平洋沿岸、鹿児島県南さつま市笠沙、宮崎県日向市油津、東シナ海大陸棚域。山東省、韓国釜山、台湾、インド-西太平洋。

    生態

    基本情報

    本種は世界中に1属1種。九州から中国大陸、台湾に多い魚である。国内ではむしろ珍魚といった存在であったが、近年鹿児島県で少ないながら水揚げがあり、ときに流通している。
    古く形態からマナガツオに近い魚だと思われ、英名も黒いマナガツオ(Black pomfret )。身質もマナガツオに似ている。
    水揚げが少ないのであまり知られていないが、非常に味がよく歩留まりもいいので、これからの水揚げ量によっては人気の高級魚となりそう。

    水産基本情報

    市場での評価/関東ではほとんど見ない。市場人の認知度は低くあまり高くない。
    漁法/定置網
    産地/鹿児島県

    選び方

    味わい

    旬は調べているところ。
    初夏、夏の個体は脂がのっていた。
    鱗は軟らかく小さくて取りやすい。皮は厚みがあるが熱に弱い。骨は柔らかい。
    白濁した白身。熱を通しても硬く締まらない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    クロアジモドキの料理・調理法・食べ方/生食(刺身)、煮る(煮つけ、鍋)、汁(潮汁)、焼く(塩焼き、漬け魚)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル)

    クロアジモドキの刺身[背] 取れたては透明感があるのかも知れないが、 中一日だと白濁している。黙って見せられるとマナガツオそっくりである。三枚に下ろすとき、中骨が隆起しているのもマナガツオに似ている。味わいも同様。写真は背の方だが、淡泊で酸味が少なくほどよく呈味成分からくる甘味がある。非常にうまい。

    クロアジモドキの刺身(腹) 腹部の方が身が緻密で脂が強い。その分、脂が口のなかで溶けるときの甘さを強く感じる。酸味の少ないトロといった感じである。上質のマナガツオの刺身を食べているようだ。
    クロアジモドキの魚すき(へか焼き、煮ぐい) 水洗いして三枚に下ろして食べやすい大きさに切る。昆布だしにしょうゆ・酒、中骨などでだしを取る。これを一度こし、切身と野菜を煮ながら食べる。玉ねぎが甘味になるので、みりん、砂糖などはいらないと思う。意外にもご飯がすすむ。

    クロアジモドキの煮つけ ここでは頭部(兜)を使ったが、あらでも切身でもなんでもいい。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、ここでは酒・みりん・しょうゆ味で煮た。味つけはなんでもいい。お好みで。煮ても身が締まらず、身離れがいい。非常に美味だ。

    クロアジモドキの潮汁 あらから実にいいだしがでる。あらなどを集めて置き、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、昆布だしで煮だして酒・塩で味つけした。イヤミがないのにうま味豊かな汁が楽しめる。骨についた身も非常にうまい。

    クロアジモドキの塩焼き 切身に振り塩をして1時間以上ねかせる。これをじっくり焼き上げたもの。やや味が単調なので、酒を塗りながら焼き上げるといい。焼いても硬く締まらず、身に呈味成分からの甘味を感じる。口のなかでのほぐれ感もここちよい。
    クロアジモドキの粕漬け 切身に振り塩をして1時間以上寝かせる。表面に出て来た水分を拭き取り、熟成させた粕(市販)とみりんを合わせた地につけ込む。甘味に砂糖を使ってもいい。これを焦がさないようにじっくりと焼き上げる。マナガツオに似て漬け魚に最適だ。
    クロアジモドキのフライ 非常に上質の白身で、熱を通しても硬く締まらない。フライ材料として優秀だ。三枚に下ろし切り身にして塩コショウする。このとき皮を引いてもいいし、引かなくてもいい。これに小麦粉をまぶしてバッター液(溶き卵でも)をくぐらせ、パン粉をまぶし短時間で揚げる。非常にうまいフライになる。

    クロアジモドキの唐揚げ 頭部やあらを集めて置く。切身でもいい。片栗粉をまぶしてじっくりと揚げる。骨が柔らかいので二度揚げすると、まるごとさくさくと食べられる。いい味で、ビールなどに合う。
    クロアジモドキのムニエル 上質の白身で、適度に繊維質でいながら熱を通しても硬く締まりすぎない。切身にして塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテーする。仕上げにバター(マーガリン)で風味づけすると出来上がりだ。上品な味わいで、バターと相まって実にうまい。朝ご飯にもってこいだ。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/ねこや商店(宮崎県日南市油津)、伊東正英(鹿児島県南さつま市笠沙)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)
  • 主食材として「クロアジモドキ」を使用したレシピ一覧

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