マルアジ

Scientific Name / Decapterus maruadsi (Temminck and Schlegel,1844)

マルアジの形態写真

SL 40cm前後になる。脂瞼があり、断面が丸く身体がほっそりしている。ゼンゴ(稜鱗/硬くてトゲトゲしい鱗)は身体の後方、頭部後方から始まる測線が後方でまっすぐになる測線上にだけにある。背鰭前方鱗域は瞳孔の前縁布巾に達する。第二背鰭と尾鰭、尻鰭と尾鰭の間に離鰭(独立した鰭)がある。マアジよりもやや青味かかる
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SL 40cm前後になる。脂瞼があり、断面が丸く身体がほっそりしている。ゼンゴ(稜鱗/硬くてトゲトゲしい鱗)は身体の後方、頭部後方から始まる測線が後方でまっすぐになる測線上にだけにある。背鰭前方鱗域は瞳孔の前縁布巾に達する。第二背鰭と尾鰭、尻鰭と尾鰭の間に離鰭(独立した鰭)がある。マアジよりもやや青味かかる第二背鰭と尾鰭、尻鰭と尾鰭の間に離鰭(独立した鰭)がある。ゼンゴ(稜鱗/硬くてトゲトゲしい鱗)は身体の後方、頭部後方から始まる測線が後方でまっすぐになる測線上にだけにあり。脂瞼が発達していて大きい。背鰭前方鱗域は瞳孔の前縁布巾に達する。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科ムロアジ属

    外国名

    学名

    Decapterus maruadsi (Temminck and Schlegel,1844)

    漢字・学名由来

    漢字 丸鰺 Maruaji
    由来・語源 体高の割りに左右の膨らみが強く、断面がマアジなどに比べて丸いので。
    丸あぢ 『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)に〈又丸あぢあり〉。
    グラバー図譜 倉場富三郎の『グラバー図譜』にも長崎での呼び名「まるあじ」。
    シーボルト 日本動物誌/ファウナ・ヤポニカ(Fauna Japonica ) フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトとその後継者、ハインリヒ・ビュルゲルなどが標本を持ち帰り、川原慶賀(江戸時代の長崎の絵師)が図を書いたもののひとつ。オランダライデン王立自然史博物館のシュレーゲルとテミンクが記載。
    小種名は採取地での呼び名が使われることが多いことから、『日本動物誌魚類編』でのシーボルトの記載命名「maruadsi」とした。
    断面がマアジよりも丸いため 体高の割りに左右の膨らみが強く、断面がマアジなどに比べて丸いので。
    Temminck
    コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
    Schlegel
    ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。内湾などの沿岸域〜やや沖合。
    青森県(主に千葉県外房・越前海岸以南)〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、小笠原諸島、瀬戸内海、東シナ海大陸棚斜面、沖縄県那覇。
    黄海、済州島、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、海南島、トンキン湾。

    生態

    産卵期は5月から8月。
    寿命は6歳。

    基本情報

    マアジよりも若干暖かい海水温を好む。国内では本州以南で水揚げされている。外見はもっともマアジに近い。見分け方は、マアジと比べると断面が丸く、ほっそりスマートなことと、マアジは稜鱗(ぜんご)が測線のすべての部分にあるが、マルアジは後方にしかない。実際小売店で「アジ」とか「マアジ」として売られていることもある。
    ムロアジ類は血合いが大きく加工品となることが多いが、本種はマアジの味が落ちる寒い時期にも美味なので鮮魚としての需要がある。
    マアジと比べるとかなり安いが、別種の味であり、食べ方さえ知っていればとてもおいしい。もっと評価が上がってもいい。
    珍魚度 漁獲量が少ないわけでもなく、漁港ではいたって普通の魚であるが、マアジと比べると小売店で見かける機会が少ない。

    水産基本情報

    市場での評価/マアジなどと比べると格段に入荷量は少ない。安い。
    漁法/定置網、巻き網
    産地/三重県、島根県、神奈川県、大阪府など

    選び方

    触って張りのあるもの。鰓が鮮紅色のもの。

    味わい

    もっとも味の安定しているのは秋から初夏。
    鱗は薄いがやや強い。皮は薄いが強い。骨はあまり硬くない。
    血合いは大きい。透明感のある白身で熱を通してもあまり硬くならない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    マルアジの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、たたき、酢じめ、みそたたき)、煮る(煮つけ、塩煎り/塩煮)、焼く(さんが焼、塩焼き、干もの)、揚げる(フライ、天ぷら)、汁(みそ汁)

    マルアジの刺身 水洗いして三枚に下ろし、血合い骨・腹骨を取り、皮をむいて刺身に切る。血合いにはほんのりとした酸味があり、脂がとても甘い。食感もほどよく非常に美味。しょうがでもわさびでもお好みで。酢みそ、酢じょうゆで食べてもおいしい。

    マルアジのたたきなます 小型でも作れるところがいい。水洗いして三枚に下ろす。血合い骨・腹骨を取り、細かく切る。これを香辛野菜である大葉(青じそ)、ねぎ、みょうが、しょうがなどと合える。どちらかというと夏向きの料理で、後味がとても涼しい。
    マルアジのなます 小さなものを三枚に下ろして、腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま薄切りにする。これに辛子酢みそを添え、ごまを振る。食べる直前に混ぜ合わせても、そのまま辛子酢みそをつけながら食べてもいい。あらかじめ和えるやりかたもある。
    マルアジのみそたたき(なめろう) 「なめろう」、「みそたたき」など地方によって呼び名が変わる。三枚に下ろして腹骨をすき、皮を剥いて細かくよく切れる包丁で叩く。ここにみそ、香辛野菜(青じそ、みょうが、ねぎなど)を加えてさらにたたく。千葉県外房では酢を加えて食べる。
    マルアジの酢じめ 千葉県や神奈川県ではマルアジの幼魚を「あおた」という。これを三枚に下ろして酢じめにしたもの。水洗いして三枚に下ろして腹骨を取り、血合い骨を抜く。強い塩をし、少し置いて甘酢もしくは生酢につける。すしダネにもなる。
    マルアジの塩煮(塩いり、浜いり) 小振りのものを使うといい。水洗いする。面倒なので頭部は切り取る。水分をよくきり、強い塩水で強火にて煮上げる。火が通ったら煮汁を捨てて、水分を飛ばすためにから煎りする。大根おろしに酢を落とす。身離れがよくなり、身のうま味が凝縮される。
    マルアジの煮つけ(季節の野菜を合わせる) 非常に味のある魚で煮るととてもおいしい出しが出る。これを季節の野菜と合わせる。水洗いして内臓をずぼ抜きする。湯通しして冷水に落としてぬめりと残った鱗を流す。これを酒・砂糖(みりんでも)・醤油・水で煮る。甘味なしで酒・醤油・水で煮てもいい。ここでは出盛りの新玉ねぎを合わせてみた。玉ねぎの甘さと、マルアジのうま味が相乗効果を生む。
    マルアジと大根の煮物 ムロアジ属のうま味豊富なところを生かした料理だ。大根は適当に切り、下煮する。マルアジは水洗いして適当に切り、湯通しして冷水に落としてぬめりを流す。ともに水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水が沸いた中に入れて煮る。魚よりもうま味が染みた大根の方がうまいかも。写真は2日目。
    マルアジの煮つけ 煮ると硬く締まるのが難点だが、青魚らしくうま味が豊かで煮るといい出しがでる。水洗いして鍋に合わせて切る。これを湯通しして冷水に落としてぬめりや残った鱗を流す。水分をよくきりしょうゆ、砂糖、酒の味つけで甘辛く煮る。煮汁がとてもうまいので、素麺とからめると、それだけでご飯になる。
    マルアジの塩焼き 水洗いして振り塩をする。これを1時間以上、数時間程度密閉して寝かせてから焼く。寝かせることで塩が馴染む。マアジと比べると少し硬く締まるものの、とても味わい深い。冷めて半日寝かせたものもうまい。
    マルアジのさんが焼き 千葉県の郷土料理。日本全国に類似のものがあり土地土地で呼び名が変わる。青じそ、ねぎ、みょうが等の香辛野菜、みそと魚の身を合わせて切れる包丁でよくたたく。 それをサルトリイバラ、ツバキの葉などに包んで焼く。最近ではハンバーグのようにソテーすることもある。
    マルアジの開き干し 神奈川県などで「あおた」と呼ばれる年魚(その年に生まれた全長10cm前後)を使った。水洗いして頭部を切り放して開く。水分をよくきり、塩水に15分弱つけてまた水分をよくきる。これを半日干し上げたもの。干すことで塩が馴染み、うま味も強くなる。
    マルアジのフライ 水洗いして小振りのものは開く、大振りのものは三枚下ろしにする。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきる。塩コショウをして少し置き、小麦粉をまぶして衣(卵・小麦粉・水。量的に少ない場合は溶き卵でいい)をからめ、パン粉をつけて揚げる。皮目に独特の風味があり、中はジューシーで味わい深い。ご飯に合う。
    マルアジの天ぷら 小振りのものを使った。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り。軽く振り塩をする。水分をよく拭き取り、衣(小麦粉・塩・少量の砂糖・水・サラダ油)ををからめて強火で揚げる。衣に味をつけているので冷めてもおいしい。
    マルアジのみそ汁 アジ科の魚はみそ汁にすると非常にうまい。大小関わらず水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを水から煮出してみそを特。野菜はお好みで使えばいいが、ニラとの相性がいい。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    干もの 各地で干ものになっている。

    マルアジの開き干し開き干し 淡路島周りのマルアジはあまり知られていないがとても上質である。秋にとれた丸々と太ったマルアジを鮮度のいいうちに開いて干したもの。脂がのっていてすこぶるつきにうまい。[沼島漁業協同組合 兵庫県南あわじ市沼島]
    マルアジの塩辛しょっから(塩辛) 丸のまま塩に漬け込んでいるので「一匹なりのしょっから」という。小振りのマルアジを丸ごと塩漬けにしてある。発酵臭はほとんどなく、塩でしめただけといったもの。たぶん冷蔵技術の発達、食品の塩分が減少傾向にあるために、塩辛さや発酵臭があまり感じられないのだと思う。適宜にたたいてライムなど柑橘類と合わせると非常にうまい。他のムロアジ類、タカベ、ヒラソウダ、ウルメイワシ、サバ類などでも作られている。[小川商店 三重県志摩市]

    釣り情報

    マアジよりも浅場でサビキ釣りなどにくる。

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/二宮定置(神奈川県)、日比野友亮さん
    『日本西部及び南部魚類図譜(グラバー図譜)』(倉場富三郎 長崎大学附属図書館 web版)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)

    地方名・市場名

    メアジ(メアヂ)
    場所和歌山県塩屋 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    メアジ
    場所和歌山県塩屋・辰ヶ浜 参考文献 
    アカムロ
    場所和歌山県田辺 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    ムロアジ
    場所和歌山県田辺・周参見 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    アオアジ
    場所和歌山県田辺・白崎・塩屋 サイズ / 時期幼魚 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    アオムロ
    場所和歌山県田辺・辰ヶ浜 参考文献 
    アオコ
    場所和歌山県白崎、徳島県鳴門市北灘 サイズ / 時期若魚 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、聞取 
    アオゴ
    場所山口県周防大島 参考文献 
    アオ
    場所徳島県由岐町 参考阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類 
    アオズ
    場所徳島県鳴門市北灘 参考聞取 
    マル
    場所東京 参考文献 
    アジ
    場所東京などの小売店で 参考聞取 
    アカメ
    場所福岡県玄海 参考文献 
    メナガ
    場所紀州藩(和歌山県、三重県西部) 備考紀伊續風土記(紀州藩が江戸時代後期に編纂した地誌) 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    シムロ
    場所高知県室戸 参考文献 
    アオアジ[青あじ]
    場所和歌山県、徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島、高知県 サイズ / 時期20cm以下 
    アオタ
    場所千葉県竹岡、横須賀市佐島 
    マルアジ(マルアヂ)
    場所和歌山県江ノ島、和歌山県湯浅・塩屋、大阪、兵庫県南あわじ市沼島、徳島県小松島市・海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島、長崎 サイズ / 時期20cmを超えたもの 
    ナガウオ ナガイユー
    場所沖縄県 参考文献 
  • 主食材として「マルアジ」を使用したレシピ一覧

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