202503/26掲載

トラフグにかじられたアンコウで、潮汁

同定したいのが半分、食べたいのが半分


神奈川県小田原魚市場、二宮定置の水揚げの中に小さなアンコウがいた。トラフグにがぶりとやられた痕が、実に痛々しい。
がぶりとやられると、競りに出せないという意味での未利用魚だが、この傷み具合なら漁師さんなどが自宅で食べられる、という意味では利用魚である。
ちなみにボクはアンコウ類(キアンコウ、アンコウ)を見ると唾液腺が開く。

こんな骨があるなんて知っている人はごくわずか


これがなんとなく気になる個体であった、胸鰭の中央より前方にある上膊骨の形が気になる。
問題は下顎の床の部分に褐色の斑紋がないことだ。
これはアンコウ(流通上はクツアンコウとされ、味は悪くないのに安い)なんだろうか? キアンコウ(一般的なアンコウ)なんだろうか?

指などを噛みつかれると絶対に抜けなくなる


帰宅後、計量したら全長30cm・715gで、上膊骨はやはりしっかり3つに枝分かれしている。口腔内にあるはずの白と褐色の斑紋がないものの、全体が明るい色をしているところから、アンコウだとする。
ちなみにキアンコウの上膊骨は枝分かれしていないし、口の中が一様に薄い褐色をしている。

アンコウ汁は作りながら味見するのが楽しみだ


まあ、同定できたら食べるしかない。
今回は潮仕立ての汁にする。
水洗いして、歯と鰓以外をぶつ切りにする。
肝・胃袋・腸は取り分けて置く。
肝はそのままざっと洗うだけ。
胃袋や腸は湯通しして、氷水に落として水をきる。
適当に切る。
肝・腸・胃袋以外を鍋に入れて、水、刺し昆布(小さく切った昆布)をして火をつける。
沸いてきたらあくを取り、煮え加減をみて、半月に切った大根、胃袋・腸などを加える。
塩と酒で味つけして、肝、白ねぎを加えて少し煮て出来上がり。

寒暖の差が激しいときこそ食べたい、アンコウ汁


身(筋肉)も皮も水っぽい魚の、どこからこんなに豊かなだしが出てくるのか?
アンコウ汁を作る度に不思議に思う。
汁の味が半分、身や皮や肝などの味が半分といった感じである。
たっぷりなので、温めては食べ、温めては食べる。
塩味なのになぜかご飯に合う。
もちろん汁だけで酒が飲める。
どうでもいいことだけど、合わせたのは長野県諏訪市の「真澄 銀撰」で、安いのにうまい酒だ。

このコラムに関係する種

アンコウのサムネイル写真
アンコウGoosefish海水魚。水深30メートル〜510メートル。明らかにキアンコウよりも浅場にいる。北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、北海・・・・
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