202502/26掲載

新潟県上越高田・妙高のサメ食文化5 年取魚の、「ふかざめ」のぬた

生でも食べられるものは通常のものとは、見た目からして別物


新潟県上越市直江津と、上越市高田と妙高市全域はともによくサメを食べるものの、違うサメ食文化である。
海辺の直江津で食べるのは主に「むきざめ(アブラツノザメ)」であり、上越高田・妙高では「むきざめ」も食べるが「ふかざめ(ネズミザメ)」の比率が高い。
ネズミザメ科のネズミザメ・アオザメと、ツノザメ科のアブラツノザメなどとの食べ方の違いはなにか?
生食するか否かである。
ツノザメ科のサメは希に生で食べることもあるが、一般的に生で食べる地域はない。
ネズミザメ科のサメは少ないながら、好んで生で食べる地域がある。
そしてそれが現在にまで続いている地域は、新潟県上越市と広島県備北地方だけだと思う。

上越市の年越しにもっとも広範囲に作られているのが「ふかざめ」料理であるが、ここに「ぬた」がある。
「ぬた」なのでゆでて酢みそで和えるのだな、と思っていたら、もっと多彩であった。

妙高市・上越市高田で聞取をしたら、まったくの生を酢みそで、表面を霜降り状にして酢みそで、かなりしっかりゆでて酢みそでの3通りであった。
酢みそで食べるものの、まったく生ということは刺身である。
刺身になるほど鮮度のいい「ふかざめ」を手に入れるために年末、宮城県気仙沼から丸のまま「ふかざめ」を送ってもらい、競売が行われているといっても過言ではない。
これは明治時代も同様であるようだ。

ネズミザメは日本海でも揚がる。
上越市から糸魚川市で揚がったサメは海辺では積極的食べられることなく、山間部に送られて、様々な料理になり、刺身にもなっていたことになる。

刺身を酢みそで食べる「ぬた」


この刺身にして酢みそはとてもおいしい食べ方である。鮮度さえよければネズミザメの生食は非常においしいことがわかる。
一般的に刺身で食べる地域は広島県備北とここ新潟県上越高田・妙高だけだ。

霜降り状態にして酢みそで和える「ぬた」


湯引き(表面だけ火を通す)して酢みそで食べるという人もいる。
これがいちばん普通の食べ方である。
他のネズミザメを食べている地域でも同様の食べ方をしている。

完全に火を通してネギと和える「ぬた」


完全に火を通してゆでたネギと和えるという人もいた。
聞取した人が少なすぎるので、明確には言えないが、ひょっとしたらこれは日常の食卓にも上がっていたのかも。

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ネズミザメのサムネイル写真
ネズミザメSalmon shark海水魚。沿岸、外洋の表層付近。〜水深650メートル。北海道全沿岸、青森〜九州北岸の日本海沿岸、青森〜相模湾の太平洋沿岸・・・・
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