ひげだらを買ったら鍋だ。
鍋は忙しいほどよい

去年公開できなかったものです。
「ひげだら(ヨロイイタチウオ)」はアシロ科唯一の流通する食用魚で、東京だけの高級魚である。
ちなみに日本魚類学の父、田中茂穂がヨロイイタチウオなんて、ヘンテコリンな名をつけたのは、東日本には実際に使われている名がなかったからだと思っている。
注/明治期以来、魚の標準和名は実際に使われていた名から採用していた。
12月も半ばをすぎると気温がすとんと下がる。
なぜか不思議と鍋になる。
しかも白菜がやたらにおいしくなる。
「ひげだら」の上品な白身であるところはタラ科の魚に似ている。
ただ、タラ科のスケトウダラなどと比べると身がしっかりしている。
身崩れしにくいのでぐつぐつ煮ても大丈夫だ。
さて、今回はいきなり身(切り落とし)から食べる。いきなりうまい。
柔らかすぎず、硬すぎず、身自体に甘味がある。
さほどがんばらなくても筋繊維が舌の上でくずれてくれる。
あとから甘味の増した白菜を食べたり、つゆを柚子醤油で味つけして飲んだりする。
この忙しいところが鍋のよさだ。
タラ科との違いは中骨周りの身がばらけないことである。
鍋が汚れない。
中骨をそのまま皿に取り、柚子と醤油を垂らして全部口に放り込んで、中骨だけぺっと出す。
行儀は悪いが、これでいいのだ。
中骨の身は淡泊な味、鰭際にある鰭を動かす身(鰭筋)には脂がたまり、こくのある味がする。
マダラ同様においしい肝は、好きなときに食べてね、といって鍋で揺れている。
ボクなどせっかちなので、鍋の半ばにならぬときに食べてしまう。
肝の味だけは名状できない。
ただ濃厚にうまくて、その割りに後味がいい。
今回の失敗したな、もー、はつゆを具を食べながら飲み尽くしてしまったことで、トリをとる雑炊が作れなかったことだ。
つゆをすくい、器に取り、柚子を振り、醤油を垂らし酒を飲む。
高清水の普通酒、室温が変にうまい。
後はシャワーも浴びず、ベッドに飛び込む。
東京の高級魚ひげだらは食べ尽くすべし

東京都豊洲市場場内、玉銀水産で「ひげだら(ヨロイイタチウオ)」を買った。師走になって、しかもベストサイズの、と思わず財布の紐をゆるめる。
このような思いきった値の魚が手に入るところが、豊洲の豊洲らしいところである。ちなみに昔ほど高くない。なぜか? 昔よりも仕事する料理人が減っているからだと思っている。
以上は以前に書いた。
昆布締めを作った残りのあらや、切り落とした身で、必ず作るのが鍋である。
あらや切り落としは適当に切る。
肝などはざっと洗って置く。
あらなどは湯通しして冷水に落とし、表面のぬめりや鱗を流す。
水分を切る。
野菜などと一緒に昆布だしに酒・塩の中で煮ながら食べる。