ギンダラ


SL1m前後になる。背鰭は第1と第2に分かれる。やや側へんする。

魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目ギンダラ科ギンダラ属
外国名
Sablefish, Black cod
学名
Anoplopoma fimbria (Pallas, 1814)
漢字・学名由来

漢字 銀鱈 Gindara
由来・語源 マダラに似て、色合いが銀(?)色であるから。『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂 1981)に中国語としているが不明。
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)には〈アブラバウズ科アブラバウズ〉はあるが本種はない。
『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)には〈カジカ目ギンダラ科ギンダラ亜科ギンダラ……北海道襟裳岬付近(丸川,1939),釧路沖(筆者採取)〉
阿部宗明は〈本邦から初めて報告されたのは昭和14(1939)年、丸川久俊(日本海の好漁場、大和堆を見つけたことでも有名。プランクトン学)によってであり〉とある。
Sable fish 毛皮などをとるイタチ科の哺乳動物、クロテンを思わせる姿の魚という意味。

Pallas
Peter Simon Pallas (ペーター・ジーモン・パラス)。ドイツの動物学者。主に冷水域の魚を記載した。ホッケ類、アイナメ類など国内海域にいる多くの魚類を記載。
地方名・市場名
ナミアラ
場所北海道 
ホクヨウアラ[北洋アラ] ホクヨウムツ[北洋ムツ] ムツ

概要

生息域

海水魚。水深300〜2740m。
青森県〜北海道の太平洋沿岸、オホーツク海沿岸。岩手県〜相模湾。
オホーツク海南東部、千島列島、カムチャツカ南島岸、ベーリング海、アリューシャン列島〜バハカリフォルニア。

生態

深海性。
産卵期は冬。

基本情報

「たら」とつくが、タラの仲間ではなく、スズキ目カサゴ亜目ギンダラ科の魚だ。同ギンダラ科のアブラボウズは国内の沿岸域に普通だが、本種は東北太平洋側・北海道の沿岸域でも揚がることがほとんどなく、漁業技術が進んで遠洋に出られるようになって初めて魚類学的に存在が知られた。今でも国内で年間揚がる個体数は数える程度だと思っている。1970年前後はアラスカ湾で国内の船が盛んにとっていたが、規制がかかり、アメリカから輸入することになった。アメリカでも人気の高い食用魚だった。
阿部宗明は〈本邦から初めて報告されたのは昭和14(1939)年、丸川久俊(日本海の好漁場、大和堆を見つけたことでも有名。プランクトン学)によってであり〉とある。
1970年代、北洋漁場からかなりの量を国内に持ち込み、アメリカからも輸入していた。
当初は名前にあるようにタラ(マダラ)の代用品として鍋物用、煮つけ用に売られていた。当時としては脂っぽいところが嫌われて値段的にも安かった。また脂が強いところからムツ(ムツ、クロムツ)の代用品(偽物)となったこともある。これが近年の脂嗜好から、高騰。
最近では冷凍ドレス(頭と内臓を除いたもの)、フィレ(三枚下ろし)は高級なものとなっている。スーパー、魚屋などでは、切り身にしてパックし売っている。
もともと少ないながら生食されていたものが、アラスカ、カナダなどでは養殖されるようになって、刺身用の魚というイメージが浸透し始めている。

水産基本情報

市場での評価 主に冷凍ドレスとして流通。古くは安い魚であったものが、近年高騰している。特に生は高級。カナダなどからは養殖ものがチルドで輸入されてくる。
漁法 延縄、カゴ漁
産地 アラスカ(アメリカ)、カナダ、ロシア

輸入 ほとんどがドレス(頭を落として内臓を抜いた状態)で輸入される。輸入量は多く、スーパーや魚屋がこの形から切り身に加工する。

選び方・食べ方・その他

選び方

冷凍ものは変色、ドリップしていないもの。解凍されたものよりも、冷凍状態のまま購入したほうがよい。

味わい

生の旬は秋から冬。
鱗は細かく取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くない。
透明感のある軟らかい白身で脂で白濁しやすい。熱を通しても硬く締まらない。
ギンダラの料理の方向性
珍しいことに液体を介した料理法、煮る・汁などにも、介さない焼くにも向いている。あえて不向きなものを挙げるとソテーだろうか。
切身 鱗は小さく、身は白濁して脂が混在している。ギンダラの切り身は現在ではスーパーなどになくてはならないものとなっていて、比較的手に入れやすい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ギンダラの料理法/焼く(塩焼き、西京漬け、幽庵焼き)、煮る(煮つけ、しゃぶしゃぶ)、ソテー(フライパン照り焼き)、揚げる(フライ)
ギンダラの塩焼き できれば国産で冷凍していないものを使いたい。切り身にして振り塩をして少し寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。焼き始めるとすぐに中から脂が染み出してきて、表面がかりっと香ばしく揚げたような状態になる。この表面のさくっとした内側には独特の風味を持つ脂が液化している。この表面カリッとして中がジューシーな味わいは無類のうまさである。

ギンダラの西京漬け(みそ漬け) 切り身にして、振り塩をする。少し置き、表面に出て来た水分をペーパータオルで巻き取る。これを白みそ(あらみそ)・みりん・酒・砂糖を合わせた地につけ込む。甘めがイヤなら砂糖は加えない。じっくり焦げないように焼き上げると、西京みその風味とみりん・砂
ギンダラのみそ焼き 切り身は表面の水分をていねいに拭き取る。丸のままなら水洗いをして三枚に下ろし適当に切り、水分をよく拭き取る。これを7分通り焼き上げて加減みそを乗せて仕上げる。ここでは仕上げに山椒を振ったが混ぜ込んでもいい。またにんにくやしょうがなど香りづけは好みで。
ギンダラの煮つけ 冷凍切り身などでもっとも親しまれているのは煮つけである。食堂や居酒屋などでも定番ものとなっている。切り身となっているので、自宅でも簡単においしい煮つけが楽しめる。切り身は湯通しする。冷水に落として表面のぬめりなどを流す。これを酒・砂糖・しょうゆで煮つける。酒・しょうゆでも酒・みりん・しょうゆなど味つけはあくまで各人の好み、もしくは地域性を大切にしてやってほしい。
ギンダラの湯上げ(湯煮) 真水もしくは昆布だしのみでゆっくり煮立てないで火を通したもの。塩を加えてもいいが温度は70度くらいを保つ。塩を加えた方が温度の上昇によるうま味の流出は防げるのでどちらでも。水洗いして適当にきり、ここでは昆布だしの中でゆっくり火を通す。低温調理器を使うと簡単にできる。身は柔らかくしかもうま味豊かだ。
ギンダラのしゃぶしゃぶ 冷凍していない国産ものが手には入ったらぜひお試し願いたい。三枚に下ろして皮を引く。刺身状に切り、昆布だし・酒・塩で味つけしたなかで振り、好みの火の通り加減で食べる。国産なら中は生という感じがいい。野菜などは最低限にするといいかも。
ギンダラの刺身 近年は養殖され、チルドの状態で入荷してくる。これは刺身になる。味わいはまさにトロ。白身の大トロといったところでマグロとの違いは酸味のあるなし。また国産の冷凍していないものも刺身になる。脂で真っ白で口に入れるととける。この脂の強さのなかに適度な食感と魚らしいうま味がある。
ギンダラのフライパン照り焼き ギンダラの切り身の表面の水分をていねいに拭き取る。小麦粉をまぶして脂でじっくりとソテーする。一度取り出してフライパンにみりん・酒・しょうゆ・好みで砂糖を加えて少し煮つめたところに切り身を戻す。ソテーした切り身にソースとしてかけてもいい。ソース(タレ)を最小限にすると御弁当にも使える。
ギンダラのフライ 冷凍ギンダラの皮を取り、水分をよく取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせてパン粉をつけて表面がかりっとするように揚げたもの。温かいうちに食べると中はジューシーに表面は香ばしくて、非常に美味。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

漬け魚
冷凍ギンダラ カナダやアメリカアラスカなどからドレスの形で輸入する。これを切り身にしてスーパーなどで売っている。出来れば解凍したものよりも冷凍状態の方がいい。

釣り情報

歴史・ことわざなど

国内で初めての報告(種として)は昭和14年(1939)に丸川久俊氏によって。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年)