ホンモロコ
代表的な呼び名 モロコ
12cm SL 前後になる。体色は白っぽい。細長く体側に黒い斑紋がなく、縦の暗色斑は不明瞭。1対の口ひげがある。近縁のタモロコよりも体高がなくほっそりしている。
珍魚度・珍しさ ★★★ がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度
★★★★ 知っていたら達人級
食べ物としての重要度
★★ 地域的、嗜好品的なもの
味の評価度
★★★★ 非常に美味
分類
硬骨魚綱条鰭亜綱ニシン・骨鰾下区骨鰾上目骨鰾系コイ目コイ科バルブス亜科タモロコ属
外国名
Biwa gudgeon
学名
Gnathopogon caerulescens (Sauvage, 1883)
漢字・学名由来
漢字 本諸子、本諸魚 Standard Japanese name / Honmoroko
由来・語源 琵琶湖での呼び名。琵琶湖には「もろこ」と呼ばれる魚が多い。他のタモロコ、デメモロコなどと区別して「本」をつけた。
モロコは「もろ」=漢字の「諸」であり多いこと。「こ」は「子」であり子だくさんと表す。
「もろ」は多いことで、「こ」は魚を表す語尾。
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)にはコイ科モロコ属ホンモロコ(ヤナギモロコ)とある。
地方名・市場名
ホンモロコ[本諸子] 参考 聞取 場所 京都府京都市京都中央市場
ヒナモロコ[雛諸子] カンモロコ[寒諸子] 備考 桃の節句の頃の抱卵した雌。 場所 滋賀県沖ノ島
モロコ
イノコリモロコ カスケ ゴマモロコ シヨオゲンモロコ シラバイ ムギハエ ヤナギモロコ 参考 文献より。
概要
生息域
淡水魚。
琵琶湖固有種。
奥多摩湖、山梨県山中湖・河口湖、岡山県湯原湖など各地に移植され繁殖している。
生態
琵琶湖固有種。
普段は沖合にいて、産卵期になると群れを作り岸辺に集まってくる。水深5メートル前後を群れをなして泳ぐ。
動物プランクトンをエサとする。
冬、水深60-80mの深場にいる。これが3月〜7月に湖岸や内湖や用水路などに移動して産卵する。
基本情報
本来は滋賀県琵琶湖特産魚。湖魚のなかでももっとも高価で京都や東京都などにも出荷されているが、量的には非常に少ない。
これが千葉県、埼玉県などでも養殖が進んでいる。
琵琶湖ではもっとも価格の高い魚で、鮮魚、佃煮、素焼き、なれずしなどに加工されている。
また、滋賀県では日常的な惣菜材料としても非常に親しみ深いものだ。
珍魚度 珍しい魚ではないが、流通するのは滋賀県、京都府京都市周辺。探しに行かないと手に入らない。
水産基本情報
市場での評価 琵琶湖周辺、京都で取り扱われるもので、高級魚。
漁法 刺網、定置網、養殖
産地 滋賀県、埼玉県、千葉県
選び方・食べ方・その他
選び方
味わい
旬は年明けから、2月、3月。
小魚なので丸ごと食べるもの。骨が柔らかい。
白身でクセがなく旨み、独特の風味がある。
栄養
危険性など
食べ方・料理法・作り方
ホンモロコの料理・レシピ・食べ方/焼く(素焼き)、揚げる(天ぷら)、煮る(煮つけ)
ホンモロコの素焼き 塩を振らないで素焼きにするのがいちばんおいしい。子持ちの時季には、焼きながら酢みそにつけて食べると、これ以上においしいものはないと思えるほどだ。しょうが醤油も合う。
本種はそのままざっと水洗いして水分をよくきる。これをじっくり焼き上げる。香ばしく焼いておき、時間が経って食べてもおいしい。
ホンモロコの天ぷら 天ぷらはもっとも簡単な食べ方かも知れない。流水で洗い、水分をよくきる。小麦粉をまぶし、衣をつけて中温でじっくり香ばしく揚げる。10月、11月の子を持っていない時期もおいしいが、やはり子持ちの春がいちばんおいしい。口に入れると香ばしいだけでは泣く、ほくほくと甘い。
ホンモロコの煮つけ しょうゆ、酒、砂糖などを使い薄味で煮てとてもうまい。骨が柔らかく、内臓がきれいなので、あっさりと上品な味わいである。微かに内臓に苦味があるのも魅力的だ。流水などで洗い、水分を切る。酒・砂糖・醤油・しょうがのせん切りでじっくりと煮上げる。味つけなどはお好みで。
好んで食べる地域・名物料理
滋賀県、京都府京都市などでは寒い時季の食用魚として重要で、様々に料理されている。
もろこ豆 ホンモロコとゆでた大豆を薄味で煮たもの。滋賀県や京都市内でも作られている。大阪市内でもホンモロコの総菜類は見られる。本来家庭料理であり、惣菜としても人気が高い。[天亀 大阪府大阪市野田]
もろこの天ぷら 小振りのホンモロコに衣をつけて揚げたもの。こちらも一般家庭での定番的な料理である。滋賀県などでは惣菜店、直売所でよくみかける。非常に軽い味わいで本種の身の甘さや内臓のほろ苦さがいい。[滋賀県琵琶湖周辺]
酢もろこ(もろこの南蛮漬) ホンモロコを素焼きにして甘酢に漬け込んだもの。赤唐辛子を入れたので南蛮とつけたものと思われる。琵琶湖周辺の方達に聞いても家でよくつくる保存性の高い惣菜だという。[滋賀県]
加工品・名産品
佃煮類、酢のもの、惣菜など多種多様なものが、滋賀県をはじめ、京都府京都市周辺で作られている。
もろこ串焼き 今や周年をとおして売られている。ホンモロコを串にさして、こんがり焼き上げたもの。基本的にそのまま食べるものだが、少しだけあぶって食べるとより味わい深い。酢みそがついていることが多いが、しょうが醤油で食べてもおいしい。[滋賀県琵琶湖周辺・京都市内]
もろこ甘露煮(もろこの佃煮、もろこ煮つけ) 甘辛く水分がなくなるくらいまで煮上げたものである。家庭でも作るが滋賀県や京都府京都市の魚屋、川魚店の定番的なものである。[滋賀県全域・京都府京都市内]
釣り情報
歴史・ことわざなど
参考文献
『日本の淡水魚』(川那部浩哉、水野信彦 編・監修 山と渓谷社)