ハシキンメ

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40cmSL 前後になる。体高が高く側扁(左右に平たい)する。金属を思わせる赤色で表面がザラザラしている。肛門よりも前方、腹部下に稜鱗(硬くて先がとがった鱗)がある。[40cm SL ・2.44kg]
肛門よりも前方、腹部下に稜鱗(硬くて先がとがった鱗)がある。
40cmSL 前後になる。体高が高く側扁(左右に平たい)する。金属を思わせる赤色で表面がザラザラしている。肛門よりも前方、腹部下に稜鱗(硬くて先がとがった鱗)がある。[12cm SL ・50g]
秋に巻き網で揚がったハシキンメの稚魚。

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珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区棘鰭上目キンメダイ系キンメダイ目ヒウチダイ科ハシキンメ属
外国名
Darwin's slimehead, Blueberry roughy
学名
Gephyroberyx japonicus (Döderlein 1883)
漢字・学名由来
漢字 端金目、嘴金目 Standard Japanese name / Hasikinme
由来・語源 高木正人の『全日本及び周辺地域に於ける魚の地方名』にハシキンメは神奈川県江ノ島での呼び名とある。由来など不明。「嘴(はし)=口」で口が大きいキンメダイという意味で「嘴金目」と解釈してもよいのでは。
〈棘鰭亞目金目鯛族ヒウチダヒ科ヒウチダヒ亞科ハシキンメ屬ハシキンメ Gephyroberyx japonicus (Döderlein, 1883) /新参異名 〔駿河湾〕〉 『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)〜『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 2013年02月26日)。
1938年以前には、国内では駿河湾でしか見つかっていなかったように思える。ただ本種は相模湾に普通で若い個体は浅場でたくさん揚がる。
〈相模湾では全長一五〇-二〇〇粍位のものが相当量漁獲されることがある〉。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)

口が大きい ハシキンメの「はし」は「嘴(はし)」で、鳥などの嘴(くちばし)のことでもあるが、「口」と考えていいのではないか。神奈川県江ノ島でキンメダイのように赤く、とても口が大きな魚という意味だと考える。
Döderlein
ルートヴィヒ・デーデルライン(Ludwig H. P. Döderlein/1839-1936)。ドイツの動物学者。1879/明治12-1881/明治14、東京大学のお雇い教師として日本滞在。神奈川県江ノ島や三崎で水産生物を採取。
地方名・市場名
エノハ
参考20220527聞取 場所神奈川県小田原市小田原魚市場 
ハシキンメ
参考文献 場所神奈川県江ノ島 
オタフク ヨロイウオ
場所高知 
ゴソ
備考本種を「ゴソ」、ヒウチダイ、マルヒウチダイを「アブラゴソ(脂ごそ)」。 場所静岡県沼津市 

概要

生息域

海水魚。水深150-700m。稚魚・幼魚は浅場にいる。
青森県八戸、茨城県〜土佐湾の太平洋沿岸、秋田県沖(秋田県農林水産部 水産振興センター)、[新潟県佐渡沖]、[島根県浜田]、長崎県五島灘以南の東シナ海大陸棚縁辺〜斜面上部、九州〜パラオ海嶺。台湾南部、天皇海山。

生態

基本情報

本州以南の深海に生息している。正真正銘の深海魚である。古くは太平洋側の深場の底曳き網で揚がる魚だったが、近年、日本海でも揚がっている。
ときにたくさんまとまって揚がることがあるが、普通の水揚げ量は少ない。産地周辺で食べられていることが多いが、ときどき全国的に流通する。不思議な姿なので、大量に揚がって流通すると驚く人が多い。
珍魚度 全国流通することもあるので珍魚とは言えないが、探すとなると大変。駿河湾、熊野灘、高知沖、鹿児島県など底曳き網の水揚げのある地域に行くしかない。

水産基本情報

市場での評価 産地周辺での消費がほとんど。希に入荷するとやや高値。
漁法 底曳き網、釣り
産地 静岡県、愛知県、三重県

選び方・食べ方・その他

選び方

体色が赤く触って硬いもの。

味わい

旬は秋から春、幼魚は初夏〜夏
脂はないものの小さくても味がいい。
頭部が大きく、刺身などにすると歩留まりが悪いが、あらからは非常にうま味の強いだしが出る。
鱗は小さく、ザラザラしていて取れにくい。皮は薄く弱い。
透明感のある白身で、全体に脂が混在する。まったくクセはなく、煮ると適度にしまる。
料理の方向性
鱗は非常に取りにくいので刺身や焼くほうがやりやすい。ただし味の点では水をかいした料理に向いている。煮つけ、潮汁、みそ汁、鍋など非常に味がいい。
口腔・腹腔膜 口の中と内臓を包む部分は真っ黒である。強く触ると黒いのがつく。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ハシキンメの料理法・レシピ・食べ方/煮る(煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁、鍋)、生食(刺身、セビチェ)、焼く(塩焼き、一夜干し、みそ漬け、幽庵焼き)、揚げる(フライ、唐揚げ)
ハシキンメの煮つけ めんどうだがていねいに鱗を取り、水洗いをする。肝は大切に取り分けておく。湯通しをして、冷水に落とし残っている鱗などをこそげ落とす。よく水分を切り、酒、砂糖、しょうゆで甘辛く煮る。酒・塩、酒・みりん・しょうゆなど味つけはお好みで。食べてビックリのおいしさだ。

ハシキンメの潮汁 刺身やみそ漬けなどにしたときのあらを集めておく。湯通しし、冷水に落として鱗やぬめりを撮る。これを昆布だし(水でも)で煮だして酒、塩で味つけする。あらから濃厚な奥行きのあるだしが出てすこぶるつきにうまい。
ハシキンメのみそ汁 静岡県沼津は深場の底引き漁が盛んである。その漁師さんに聞くと、小さなものはみそ汁、大きいのは煮つけなどと言う。水洗いして小振りのものはぶつ切りに、大きなものはあらを集めて湯に通して冷水に撮る。鱗や汚れを落として水分をよく切っておく、これを水(昆布だし)から煮出してみそを溶く。
ハシキンメのちり鍋 ハシキンメは水洗いしてていねいに鱗を取る。肝は大切に分けておく。これを湯通しして、冷水に落とす。鱗などを取り、水分をよく切っておく。鍋に昆布だしを張り、酒と塩で味つけ。煮ながら食べる。あまり野菜たっぷりでもいいが、大振りの脂ののっているものは最低限にするのがよいと思う。
ハシキンメの刺身 頭は大きいが血合い骨が少なく、三枚に下ろしての歩留まりはいい。皮を引き、普通に刺身にする。脂が身に混在していて甘味がある。じんわりとうま味もあって、うま味が豊かである。
ハシキンメ幼魚の刺身 晩春に揚がる若い個体の刺身だ。本種の特徴は小さくてもそこそこ脂があることだろう。小型で面倒なので鱗は取らず、頭部から肛門にかけて切り放して三枚に下ろす。血合い骨はこうするとついていない状態なので皮を引くと刺身になる。脂だけではなくうま味もある。非常に美味。
ハシキンメ活魚刺身 晩春の若い個体の活魚。キンメダイ目の魚を活かしにする必要はあるのだろうか。はなはだ疑問に感じる。見た目の面白さから、店の飾りなどにはなるのかも。大きさ20cm TL・122〜125g前後の活魚を刺身にしてみたが食感はよいものの、味がないと思う。このあたりは数年をかけて比較しないとダメである。
ハシキンメの塩焼き 水洗いしてよく水分をきる。振り塩をして1時間以上寝かせて、じっくりと焼き上げる。皮目に独特の好ましい香りがあり、上品な白身ながら脂から来る甘味がかんじられて味わい深い。食べ終わったら必ず、骨湯にしてもらいたい。
ハシキンメの西京漬け(ハシキンメのみそ漬け) 単に塩焼きにして十二分にうまい魚だが、保存性からみそ漬けや幽庵焼きにしてもおいしい。特に西京味噌の甘味が上品な白身と好相性である。お弁当などのために作っておくと重宝する。
ハシキンメ幼魚の干もの 全長14cm前後の小さな個体で鱗は取らず、頭部と肛門にかけて切り放すとともに内臓も取る。水分をよくきり、塩辛い塩水を作り、浸すこと15分ほど。気温によってはもっと長くていい。これを半日干し上げる。焼いて皮を剥がしては食べる。ふんわりジューシーな味わいでとてもおいしい。
ハシキンメのフライ 大振りのものは切り身にして、小振りのものは三枚に下ろして使う。皮付きでも引いてもどちらでもいい。パン粉をつけて揚げると表面が香ばしく、中がジューシーに出来上がる。
ハシキンメ幼魚の干もの 全長14cmほどのともすると廃棄されてしまうサイズだ。頭部と肛門にかけて切り離し内臓を取る。水分をよくとり、片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げする。丸ごと香ばしく食べられてとてもうまい。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

産地で干ものに加工されることが多い。

ハシキンメの開き干し 小骨が少なく身全体に脂が回っていることが多い。開いて塩味で干したものだが、焼いても硬く締まることがなく、身離れがよい。身に脂から来る独特の香り、甘味があって実に味がいい。素晴らしい味である。[北村商店・岩崎魚店 三重県尾鷲市]

釣り情報

歴史・ことわざなど