ネンブツダイ

ネンブツダイの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
11cm SL 前後になる。尾柄部に黒く丸い斑紋がある。頭部目を貫通する縦筋と背の部分に短い筋があるものの黒い斑紋はない。
11cm SL 前後になる。尾柄部に黒く丸い斑紋がある。頭部目を貫通する縦筋と背の部分に短い筋があるものの黒い斑紋はない。
尾柄部(尾鰭のつけ根)に黒い斑紋がある。
鰓蓋骨の後方は黄金色を帯びている。目から後方にかけて2本の筋が走る。

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珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目テンジクダイ科スジイシモチ族スジイシモチ属
外国名
Half-lined cardinal
学名
Ostorhinchus semilineatus (Temminck and Schlegel, 1843)
漢字・学名由来

漢字/念仏鯛 Nenbutudai
由来・語源/
雄が卵を口にくわえて守り、孵化させる。卵を加えている様が念仏を唱えているようであるため。
〈水面を群泳しながら、ブツブツつぶやくような音をたてる。その様子が仏教徒集まって、念仏講をしているのに似ている、ということから「念仏鯛」とよばれる。〉『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)
〈テンヂクダヒ科テンヂクダヒ属ネンブツダイ Apogon semilineatus〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
テンジクダイ属で、Apogon semilineatus Temminck and Schlegel, 1843 であった。

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。内湾の水深3-100mの岩礁域に群れを作る。
青森県北金ヶ沢(西津軽郡)、山形県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、宮城県唐桑湾・万石浦、茨城県久慈川河口沖、千葉県館山湾〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、慶良間諸島、宮古島。
朝鮮半島南岸、済州島、台湾東北部・南部、浙江省・広東省・江西省、南沙諸島、フィリピン諸島、グアム島、インドネシア、オーストラリア北西岸。

生態

産卵期は7〜8月。
雄は口のなかで卵(卵塊)を保護、保育、孵化させる。

基本情報

本州以南の定置網などでまとまってとれる小魚だ。地域によっては利用されているが希なケースで、廃棄されることの方が多い。
四国などでは煮干しに加工、和歌山県雑賀崎などでは独特の料理法で食べられている。浅い海域に普通に見られる魚で非常にローカルな水産物のひとつ。
また防波堤釣り・波止釣りなど手軽な釣りの対象魚であり、外道と見なされている代表的な魚でもある。
小さいために下ろすのに手間がかかるものの、非常にうまい魚である。国内での利用度を上げて、食べてもらいたい代表的な魚だ。
珍魚度 海辺で普通に見られる小魚だが、釣りでもしない限り手に入らない。手に入れたければ漁港の水揚げに立ち会うか、釣りをするしかない。

水産基本情報

市場での評価 流通しない。
漁法 定置網
産地

定置網などに混ざる 定置網などに混ざり、小さすぎる魚や稚魚などとともに廃棄されることが多い。和歌山県雑賀崎、四国などのように利用する地域は非常に少ない。

選び方・食べ方・その他

選び方

黄金色と赤みの強いもので目が澄んでいる。

味わい

旬は春から夏
鱗は軟らかく取りやすい。骨は軟らかい。頭部に耳石がある。
透明感のある白身で水分が多く軟らかい。

ネンブツダイを下ろす 包丁はいらない。頭部も使うならザルなどに入れて、軍手をし、かき混ぜるようにすると鱗が取れる。このままでも料理に使えるが内臓・頭部を取ると食べやすい。鰓を両側から指でつまみ、頭部ごとちぎり取る。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ネンブツダイの料理・レシピ・食べ方/煮る(塩ゆで)、揚げる(たたき揚げ、唐揚げ)、汁(みそ汁、すまし汁)、生食(たたきなます、みそたたき)
ネンブツダイのゆで干し 比較的小型で定置網などにまとまって入る個体を使った。ザルなどに入れて手袋をして、かき混ぜながら汚れや鱗を取る。完全にとれなくてもいい。水分をよくきり強めの塩水で終始沸騰状態で8分ほどゆであげてザルに上げる。扇風機などで放冷する。このまま完全に乾かすと煮干しになる。
写真は6時間ほど扇風機で放冷し、干したもの。まだ身はしっとりしている。
頭をもって胴の部分をしごくように食べると、ネンブツダイ独特の風味があり、うま味が非常に豊かである。いくらでも食べれれるといった味わい。耳石が硬いもののワイルドに丸ごと食べてもいい。

ネンブツダイのたたき揚げ 鱗、鰭と頭部を切り取り包丁で細かくたたき、すり鉢でする。みそ、塩、酒などで味つけして揚げたもの。要するにネンブツダイの天ぷら(薩摩揚げ、つけ揚げ)だが、実にうま味豊かでおいしい。
ネンブツダイの唐揚げ もっともよく作られていると思われるのが唐揚げ。丸ごと鱗だけを取り、使ってもいいが、頭部と内臓を取って揚げると食べやすい。水洗いして頭部と内臓を取る。水分をよくきり、片栗粉をまぶして二度揚げにする。皮目に甘く感じられるような風味があって非常に香ばしい。丸ごとさくさく食べられる。
ネンブツダイのみそ汁 水洗いして頭部と内臓を取る。これを粗く包丁で叩く。水に入れて火をつけてあくをすくいながら煮出す。このままみそを溶いてもいいし、酒・塩で味つけしてもいい。ここでは一度濾して、だしだけを使ってみそ汁にした。非常にうま味豊かな汁が出来上がる。
ネンブツダイのたたきなます 頭と内臓、鱗、鰭を手で摘まみ取る。尾鰭だけは包丁で切り取る。これを細かく包丁でたたく。中骨があたるので徹底的にたたく。これにねぎ、玉ねぎ、みょうがなどを混ぜ込む。しょうゆをつけて食べるのだけど、皮目に独特の風味があってうまい。
ネンブツダイのみそたたき(なめろう) 頭と内臓、鱗、鰭を手で摘まみ取る。尾鰭だけは包丁で切り取る。これを細かく包丁でたたく。中骨があたるので徹底的にたたく。これにねぎ、玉ねぎ、みょうが、みそを加えて再度たたく。「たたきなます」よりもまろやかな味わい。

好んで食べる地域・名物料理

〈曾て高知縣須崎の魚市場で、此魚ばかりを相當多量に漁業者が陸揚げしているのを見た事がある〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)

赤じゃこいりこのだし 赤じゃこ(ネンブツダイ)のいりこを昆布と一緒に水に沈めておく。1時間以上おいて火をつけて沸騰してきたら火をとめる。琥珀色をしたうま味豊かなだしになる。
赤じゃこだしの素麺 「赤じゃこ」はネンブツダイの煮干し。これを昆布と一緒に水から煮てだしを取る。このだしにみりん、塩、うすくちしょうゆで味つけして、つゆを作る。このつゆでゆでた素麺かうどんを食べる。濃い目にしてつけつゆにしてもうまい。[徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島、高知県宿毛市]


竹ヶ島、赤じゃこだしのところてん 「赤じゃこ煮干し」と昆布を水につけてだしを取る。もの足りなかったらカツオ節だしを加えてもいい。これに塩、しょうゆ、酒、みりんなどで味つけしてつゆを作る。竹ヶ島のマクサで作ったところてんをこのつゆで食べる。薬味はゆずかすだちの皮と果汁。[徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島]

竹ヶ島、赤じゃこだしのところてん 2 竹ヶ島ではところてんに赤じゃこだし、醤油のつゆをかける。かけたらスダチの皮を振り、一本箸でいっきにすすり込む。食べ始めるととまらなくなるおいしさで、体が涼やかになる。[徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島]
はりめ煮干しのところてん 高知県では「はりめ」といい、上質のだしがとれるので煮干しにする。これを日常的な料理に使うが、特徴的なのはところてんである。高知県ではところてんを、「はりめだし」で醤油味のつゆで食べる。[高知県中土佐町久礼]
赤じゃこのだんご汁 すり身にしてだんごにしてカツオ節だし(昆布だしでも)の中に落としていく。これにしょうゆ、酒などで味つけする。身をたたいて、これを水から煮てだしをとり、みそ汁、潮汁などにしても美味しい。[静岡県、徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島]

加工品・名産品


はりめ煮干し 高知県西部ではテンジクダイ科のクロホシイシモチやネンブツダイをゆで干しにする。これをところてんや素麺などのつゆのだしにする。甘味が強くてとても味がいい。[河原海産 高知県宿毛市小筑紫町栄喜]
赤じゃこいりこ 徳島県南では「いしわり」とも「赤じゃこ」とも呼びいりこ(煮干し)にする。クロホシイシモチは煮ているが味が悪いと加工しない。これでだしをとり、素麺やところてんのつゆにする。甘味が強く、それでいながらイヤミがない。[徳島県海部郡海陽町・牟岐町]

釣り情報

磯釣りや防波堤釣り(波止釣り)のウキ釣りや投げ釣りなどにくる代表的な魚。口が大きく、主要なターゲットであるクロダイやメジナよりも、真っ先にハリを飲むので嫌われている。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

チチヤツボ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県北牟婁郡紀北町矢口浦 
ガマンタ
参考文献 場所三重県尾鷲 
ガマツタボ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県尾鷲市九木浦 
アカッポ
参考林市兵衛さん 場所三重県志摩市大王町 
オホナダカベジャコ
備考水族志。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県熊野 
シカラ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県三輪崎・木ノ本 
ヒカラボ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県周参見 
ネブト
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和歌浦・白崎 
シカノウヲ シカロ シカノウオ
備考シカノウオ、シカノウヲは水族志。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和深 
シカラボ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県太地 
アカジャコ[赤雑魚]
参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、阿波学会研究紀要 場所和歌山県田辺、徳島県海部郡海陽町・牟岐町・美波町 
アイジャコ
参考文献 場所和歌山県白浜 
ネンブツダイ
備考標準和名 参考『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 場所地域不明 
ダンジョウロ
参考文献 場所富山県東岩瀬 
ギョウスン
参考文献 場所富山県東岩瀬・生地 
キンタロウ
参考文献 場所山口県下関 
イシモチ
参考文献 場所山口県下関、長崎 
イシワリ[石割]
参考聞取 場所徳島県海部郡海陽町宍喰 
トシゴロウ ヒムツ トシゴロ
参考文献 場所神奈川県三崎 
ムシノアタマ
参考文献 場所神奈川県国府津 
キンギョ
参考聞取 場所神奈川県小田原、山口県下関 
オンシラズ
参考文献 場所神奈川県横浜 
ケイセイ
参考文献 場所神奈川県江ノ島 
スミヤキ
参考文献 場所静岡県下田 
イシムツ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県仁科・田子 
アカルサン
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県土肥 
イシボッチ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県安良里 
アナガンツウ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県田子 
イシアタマ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県網網代・富戸・田子 
ハリメ[張目]
備考煮干し。 参考聞取 場所高知県宿毛市 
スジイセジ
参考文献 場所鹿児島 
ガシタ
参考田中水産(鹿児島市) 場所鹿児島県坊津 
メブト
参考文献 場所和歌山県雑賀崎 
イナンカ ギンガリ キンセイ