ニベ

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50cm SL 前後になる。細長くて背中は灰色で腹部は白い。頭部が小さく、吻(口の先)は短い。側線上に背鰭に向かって斜めに規則正しく走る褐色の斑紋がある。
側線上に背鰭に向かって斜めに規則正しく走る褐色の斑紋がある。
珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ニベ科ニベ属
外国名
Honnibe croaker 
学名
Nibea mitsukurii (Jordan and Snyder, 1900)
漢字・学名由来

漢字 鮸、鰾膠 Nibe
由来・語源 「にべ」は東京、和歌山県田辺、三重県二木島(熊野市)での呼び名。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
〈和名は仁倍(にべ)、一に久智(くち)ともいう〉。漢字、「鮸(めん)」は本草綱目から。江戸時代には、明の本草綱目の影響を強く受けている。明の鮸はもっと大型のニベ科のシナオオニベなど別の種をさし、浮き袋を煮て「膠(にかわ)」をとった。鰾(浮き袋)を「へ」と呼び、「に」は「煮る」こと。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
〈にべ(名)「鮸」 魚の名。いしもち、くちノ成長シタルモノ。長サ三尺許リ、形、あまだひ(甘鯛)に似テ長シ……腹中ノ白鰾(フエ)ニテ鰾膠(ニベ)ヲ製ス。〉『大言海』(大槻文彦 冨山房 初版 1932-1935)
〈SCIAENIDAE, Cuv, sp. にべいしもち 相模〉が、ニベに当たるのだと考えている。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
種小名/mitsukurii 箕作佳吉にちなむ。

Jordan
David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
Schneider
Johann Gottlob Theaenus Schneider(ヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー 1750-1822 ドイツ)。博物学者。マルクス・エリエゼル・ブロッホ(Marcus Élieser Bloch)とともに『110の画像付分類魚類学』を刊行、完成させた。
箕作佳吉
箕作佳吉 みつくり・かきち。1858(安政4年)年、江戸鍛冶橋(現東京駅周辺)の津山藩邸で生まれる。~1909(明治44年)。国内最初の動物学者で東京帝国大学の教授となる。日本動物学の父とされている。津山藩士で蘭学者であった箕作阮甫の孫。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。近海の浅い泥底。
新潟県〜島根県・東北三陸地方・瀬戸内海(少ない)、仙台湾〜九州南岸の太平洋沿岸。
朝鮮半島南西岸、済州島。

生態

産卵期は4月か9月。
外洋に面した浅い砂地に生息する。
砂泥地にいる環形動物や甲殻類、小魚などをエサとする。
浮き袋を使ってグーグーと鳴く。

基本情報

本州以南の暖かい海域の砂地などに普通に見られる。小型の目立たない地味な魚である。
愛想のないことを「にべなし(無膠)」、「にべもない」というのは膠(にかわ)のように接着力がないという意味で、さらりと関わりを持たないということを言う。その語源の「鰾膠(にべ)」は魚から作る膠(にかわ)のことだで、本種からも膠を製したかのように思えるが、たぶん間違いである。
シログチが内湾に多いのに対して、外洋に面した浅場にいる。シログチのように底曳き網で大量にはとれないので、加工品になることは少なく、鮮魚として流通することが多い。
知名度が低くいので安いが、味のいい魚である。
珍魚度 一般的な食用魚である。入荷量が少ないので手に入れるには努力を要する。

水産基本情報

市場での評価 塩焼き用の魚として需要のあるもの。値段は安い。生食のうまさが知られると高値をつける可能性がある。
漁法 底曳き網、定置網
産地

選び方・食べ方・その他

選び方

触って硬いもの。目が澄んで黒いもの。鰓が赤いもの。

味わい

旬は春〜夏だが、産卵後以外は比較的周年味がいい。
鱗は細かく取りやすい。皮は厚みがあるが熱ですぐ柔らかくなる。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いは弱い。筋肉に黒い筋が入ることがある。熱を通しても硬く締まらない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ニベの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼き切り、ポキ)、焼く(塩焼き)、煮る(煮つけ)、ソテー(ムニエル、バター焼き)、汁(潮汁、みそ汁)
ニベの刺身 産卵後以外は年間を通して味のいい魚だ。産地周辺などでは鮮度がいいので刺身にもなる。
水洗いして三枚に下ろして、腹骨をすき、中骨を抜く。皮を引き刺身状に切る。脂に甘味があり、身に豊かなうま味がある。血合いが弱く、筋肉に黒い筋が入ることが多いので、評価を下げているものの、味はピカイチ。

ニベの焼き切り(焼霜造り) 水洗いし三枚に下ろして血合い骨を抜き、皮目をあぶって冷やし(冷蔵庫の急速冷凍などを使うといい)、切りつけたもの。皮目にスズキに似た香りがあって、うま味豊か。食感も心地よくとてもうまい。
ニベの湯引き 長崎県では三枚に下ろして、皮つきのまま刺身状に切る。これを湯通しして冷水に落とし、水分を切る。これを湯引きという。ニベのように皮目に独特の風味のある魚には持って来いの料理法だ。皮目のうま味がまし、食感もます。わさび醤油でもいいし、酢みそで食べてもおいしい。
ニベのマリネ(ポキ・ポケ) 刺身にしたり、ムニエルなどにした切れ端を残して置く。これにトマトや野菜、好みでホットチリソースなどを和えて置く。予めここまでやっておくと便利だ。食べる直前にごま油としょうゆ(塩でもいい)で味つけ、ねぎを加えて和える。酒の肴にもよく。パンにも合う。
ニベのフライ ほどよい柔らかさで、揚げても硬く締まりすぎないなどフライ材料として優れている。やや大型であったので三枚に下ろし、血合い部分を切って1尾で4枚にした。塩コショウし小麦粉をまぶし、衣(卵・小麦粉・水)にくぐらせてパン粉をつけて高温でさくっと揚げる。皮付き皮なしはお好みで。写真は皮なし。
ニベの煮つけ 水洗いして湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒・醤油・水で煮る。砂糖、みりんなど甘味を加えてもいい。煮てもあまり硬く締まらず、身離れがいい。皮目に独特の風味があり、身に甘みがある。
ニベの塩焼き ニベ科の魚の定番的な料理法である。今回は大振りだったので、頭部を落として二枚に下ろし、前半分を塩焼きにした。なによりもいいのは皮目の風味だろう。川魚でもない海の魚でもない独特の野性味のある香りがする。身はふっくらとして甘味があるのもいい。
ニベのムニエル 三枚に下ろして血合い骨を抜く。塩コショウして小麦粉をまぶして、最初は油で皮目をかりっとソテー。仕上げにバターを加えて風味をつける。皮がかりっと香ばしく上がり、身はほどよく繊維質でほぐれてとてもうまい。
ニベの潮汁 水洗いして小振りのものはぶつ切りにする。大型はあらを使う。鰾、肝、卵巣や精巣などは必ず使うこと。これらを湯通しし、残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、昆布だし(水でもいい)で煮だして酒・塩で味つけする。実にうま味豊かな汁になる。
ニベのみそ汁 小振りの物は水洗いしてぶつ切りにする。大型はあらを利用する。これを湯通しし、残った鱗や汚れを洗い流す。これを水(昆布だしでも)で煮てみそを溶いたもの。実にうまいだしが出ておいしい。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

外洋に面した砂浜などから投げ釣りでねらう。投げ釣りのしかけにエサはイソメ類。

歴史・ことわざなど

にべもない 「にべ」はニベ科の浮き袋からとった膠である「鰾膠(にべ)」の粘着力が強いことからきている。「鰾膠」の強い粘着力を愛嬌、もしくは親しみの安さとと変わり。「にべもない」は粘着力の薄い、すなわち愛嬌、愛想もなくと言う意味合いになった。ただし本種の鰾ではなく東シナ海、南シナ海などで揚がる別種のものである。
耳石 シログチとともに、関東などで頭部にある耳石が硬いので「石持」と呼ぶ。

地方名・市場名

コチ
参考文献 場所兵庫県揖西部(揖保川より西の意味か) 
クチ
場所和歌山県和歌浦 
コワイシモチ
参考文献 場所和歌山県和歌浦 
コケブカ
参考文献 場所宮城県松島 
ハグチ
参考文献 場所愛媛県宇和島 
コワイシモチ
参考文献 場所愛知県三谷 
ニベイシモチ
備考シログチとの混称。 参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所東京 
ニベ
参考文献 場所東京、三重県二木島、和歌山県御坊・新宮・田辺、富山県富山・東岩瀬・田辺、愛媛県宇和島市 
アカグチ[赤ぐち]
参考文献 場所熊本、有明海 
シラグチ
参考文献 場所神奈川県江ノ島 
イシモチ
備考シログチとの混称。 参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所福島県小名浜、伊豆、茨城県水戸、三重県二木島、和歌山新宮 
ヌベ
参考文献 場所長崎県長崎市長崎魚市場、鹿児島 
クログチ[黒ぐち]
参考文献 場所長崎県長崎魚市場 
グチ
場所静岡県静浦、高知県御畳瀬・浦戸、愛媛県八幡浜 
コイチ
備考シログチとの混称。 場所和歌山県、広島県 
カワイシモチ
参考文献