タイセイヨウサバ

代表的な呼び名ノルウェーサバ

タイセイヨウサバの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
60cm TL 前後になる。紡錘形で細長く、胸鰭が黒い。頭が小さい。身体に斜めのくっきりした筋状の模様がある。[冷凍しないで生で輸入されたもの。緑が強い]
60cm TL 前後になる。紡錘形で細長く、胸鰭が黒い。頭が小さい。身体に斜めのくっきりした筋状の模様がある。[冷凍輸入。緑は消えて全体に灰色]
背部にある太い筋がくっきりとている。
背部にある太い筋がくっきりとている。
胸鰭は黒い。

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魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★★
重要
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科サバ族サバ属
外国名
Atlantic mackerel, Common mackerel
学名
Scomber scombrus Linnaeus, 1758
漢字・学名由来

漢字 大西洋鯖 Taiseiyousaba
由来・語源 大西洋にいるサバ属の魚という意味。海外の魚類に多くの和名をつけた阿部宗明の命名だと思われる。『新独和辞典』(大学書林 1978)

Linnaeus
Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。
Abe
阿部宗明(あべ ときはる Abe Tokiharu 1911-1996)。魚類学者。田中茂穂の後継者。多くの魚を記載。国内だけではなく、「新顔の魚」にて輸入、海外で漁獲される魚の魚名も多数つけている。
地方名・市場名
ノルウェー ノルウェーサバ

概要

生息域

海水魚。海表面〜水深200m。
北大西洋・北アメリカ大陸沿岸、アイスランド沿岸、ユーラシア大陸沿岸、地中海。

生態

産卵期は5月から9月。

基本情報

北大西洋に広く分布。主にノルウェー、アイスランドなどから輸入されている。古くは安くて安定的に流通するものであったが、近年価格が不安定になり、高騰している。1980年代前後からスーパーなどで盛んに見かけるようになった。現在では冷凍フィレ、総菜、干ものなどになり、流通している。また品質が安定しているのでお弁当、総菜、料理店などで盛んに使われている。
基本的に冷凍だったものが、2021年9月にチルドでも来るようになった。近年の冷蔵技術は非常に優れているため、初ものであることも重なり値が高すぎると感じた。また生だから取り立てておいしいとは思えない。
今のところ、国産マサバよりも安定しているために日本海の伝統的な加工品である、「焼きさば」、「へしこさば」などの主な原料となっている。「一塩さば(塩蔵さば)」にもなっているので、「さばずし」を常食する西日本、近畿、中国地方などで見かける機会が多い。

水産基本情報

市場での評価 希にチルドでの生輸入されたものもある。冷凍ものはなくてはならないものとなっている。生も冷凍ものもやや高値。
漁法 巻き網、刺し網
主な産地 ノルウェー、アイスランド、カナダ、デンマーク
輸入量は45000トン前後、国内でとれるサバ類(マサバ、ゴマサバ)が450000トンほど。

選び方・食べ方・その他

選び方

ドリップしていないもの。身色が黒ずんでいないもの。

味わい

旬は不明だがマサバと同じだと思う。比較的脂がある時期にとったものが多く、品質は安定している。
鱗はほとんど気にならない。皮は外皮がやや硬く、熱などにも強い。骨は柔らかい。
典型的な青い背の魚で、身質もマサバと同じ。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

タイセイヨウサバの料理・調理法・食べ方/焼く(塩焼き)、煮つけ(みそ煮、煮つけ)、汁(粕汁、船場汁)、生食(締め鯖)、揚げる(唐揚げ、フライ)
タイセイヨウサバの塩焼き 冷凍ものは解凍する。チルド輸入したものは水洗いする。二枚に下ろして、骨のある方を適当に切る。塩をして1時間以上置き、じっくりと焼く。チルドと冷凍の差はあまりない。輸入されたものは秋に漁獲した脂がのっている個体が多く非常に美味。マサバに勝るとも劣らず、だ。
タイセイヨウサバのサラダ 塩さば、干ものなどを焼き、骨を除きながらほぐす。マヨネーズをベースにチリパウダー、カレー粉などを加えて和える。玉ネギ、レタス、ニンジン、リンゴなどと合わせてサラダにして美味。ポテトサラダに加えてもいい。
タイセイヨウサバのみそ煮 冷凍ものは解凍して三枚に下ろす。適当に切り、湯通しして冷水に落として表面の滑りを流す。水分をよく切り、酒・砂糖・水を煮立てた中で煮る。火が通ったら濾したみそを加えて水分が少なくなるまで煮る。煮ても硬くならず、ふんわりして柔らかい。脂の多さがこくとなり、非常に美味。
タイセイヨウサバの粕汁(かすじる) 大阪などでは塩さばや生のものを使って粕汁を作る。塩サバでも冷凍サバでも、生でもなんでもいい。三枚に下ろし適当に切る。湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。昆布だし、もしくはカツオ節出しで野菜とサバをにて、仕上げに酒粕・少量の醤油か塩を加える。
タイセイヨウサバの船場汁 冷凍サバは下ろして、塩さばを適宜に切り、湯通しする。冷水に落としてぬめりを流し、水分をきる。これを水から煮出し、酒・塩もしくは醤油で味つけする。大阪道修町の商家で作られていたもので、単純に塩サバだけで作っていたのだと思うが、昆布だしや酒を使った方が美味しい。
タイセイヨウサバのみそ汁 生サバは水洗いして三枚に下ろす。身は適当に切り、あらともども湯通しする。冷水に落としてぬめりなどを流し、水を切る。あらと昆布、水を鍋に入れて出しを取る。昆布は必須ではない。これを一度こして、身を加えて煮てみそを溶く。野菜などはお好みで。汁と言うよりも主菜だ。
タイセイヨウサバのしめさば 冷凍サバは解凍し、三枚に下ろしてべた塩をする。脂ののりによって1時間から2時間べた塩をして水洗い。生酢もしくは甘酢に漬ける。2時間から3時間つけて酢からあげて1日寝かせる。冷凍サバはアニサキスの危険は皆無。しかも生と同じくらいにうまい。
タイセイヨウサバのしめさば焼き しめさばは多めに作ることが多いので、食べ飽きることがある。魚屋さんでも教わったが、残ったものは焼いて食べるという。取り分けうまいものではないが、ときどき食べたくなる。そんな味だ。
タイセイヨウサバのフライ 冷凍でも生でもどちらでもいい。塩蔵サバでもいいが、少し塩辛いかも。三枚に下ろして塩胡椒する。小麦粉をまぶし、衣(卵・水・小麦粉、揚げる量が少なければ溶き卵でも)をからめパン粉をつけて中温で揚げる。脂が揚げることで液化して、身がふんわり豊潤になる。
タイセイヨウサバの唐揚げ 片栗粉をまぶして唐揚げにすると青魚特有の風味があって、これもまたうまい。ただし気になる向きには竜田揚げにする、またカレー粉をまぶして揚げるなどをしてもよい。

好んで食べる地域・名物料理

焼き漬け 新潟県。サバを焼いてしょうゆ味のタレに漬け込む。
さばずし(鯖鮓) 日本各地、特に海辺から遠い地方で盛んに作られた。中部以西の山間部に多い。一般に塩と酢でしめたサバですし飯を包んだもので棒ずし(ぼうずし)ともいう。もしくは箱寿司(はこずし)にしたもの。
焼きさばそうめん(焼き鯖素麺) 日本海から京都への街道筋に残っている郷土料理と思われる。長浜市、高島市朽木などで作られて、現在に至っている。若狭などで浜焼きされたマサバ(現在では輸入サバなども)を甘辛く煮つけ、その煮汁でゆでた素麺を煮る(からめる)。
焼きさばずし ちらしずしに焼きさばのほぐした身を混ぜ込んだもの。島根県雲南市、津和野などで作られている。ハレの料理ではなく、日常的な料理。
焼き鯖煮付け 焼き鯖と葉タマネギを甘辛く煮たもの。鳥取県東部。
さばの船場汁 大阪の商業地船場で作られたものとされる。身を焼いて食べた後の塩さばの粗(あら)と大根で作った汁。塩さばの塩分と旨みで大根を煮て作る簡素な食べ物ながら、現在作っても非常に美味。
さばへしこのおにぎり あぶったさばの「へしこ」をご飯に混ぜ込んでお握りにしたもの。[福井県三方上中郡若狭町]
さばのぬかみそ炊き 福岡県北九州市周辺。マサバの切り身を糠味噌(ぬかみそ ぬか漬けの糠)、しょうゆ、砂糖、みりんなどと煮たもの。マイワシでも作る。

加工品・名産品

漬け魚 みそ漬け、醤油漬け、粕漬けなど。
【新加工品】
焼きじょうず さば明太 タイセイヨウサバの片身に明太子をあわせて焼き上げたもの。なかなかよくできた総菜。『水永水産(宮崎県東臼杵門川町)』
文化干し 片身を乾燥機にかけて干し上げたもの。乾燥剤、砂、火山灰などいろんな素材を使って干している。[山崎商店 千葉県銚子市]
開き干し 千葉県、神奈川県、静岡県などではよく見かける。また日本各地で作られている模様。[丸安 千葉県銚子市ほか]
さばみりん干し 砂糖、しょうゆなどで味つけして干し上げたもの。ごまを振りかけるなど日本各地で特徴的なものが作られている。原則的にみりんは使わない。[森虎 茨城県東茨城郡大洗町]
さばへしこ さばのぬか漬けを「へしこ」という地域と「ぬか漬け」という地域がある。非常に塩辛く、糠の風味がある。[京都府伊根町・舞鶴市]
さばへしこ 大振りのタイセイヨウサバを丸ごと糠に漬け込んだもの。福井県の三方地方では酒やしょうゆ、みりんを使うなど各業者でいろいろな工夫がほどこされている。[彦助 福井県三方上中郡若狭町]
浜焼き、焼きさば
福井県若狭、新潟県出雲崎、京都府、滋賀県、鳥取県。サバを丸ごと串に刺し、じっくり時間をかけて焼いたもの。これが滋賀県や京都府の山間部に送られてそのまま、素麺や煮物のだしとして使われた。[北びわこ食品 滋賀県長浜市、安兵衛食品 福井県敦賀市、矢部海商 福井県敦賀市、徳田商店 鳥取県鳥取市南安長]
塩さば(塩蔵サバ) 主に半身(フィレー)を食塩水につけたもの(立て塩法)。そのまま焼いて食べることが多いが、汁や揚げ物など多彩に使えて便利。[伊豆大作商店 千葉県銚子市、山太YK 愛知県知多郡南知多町]
刺さば(刺鯖) 鳥取県鳥取市気高町で今も作られているもの。本来は春にとれる脂ののった日本海のサバを使って作られたもの。塩の中に埋めるようにして寝かせ、お盆前に出荷するもの。保存性が高く、江戸時代などはお盆前の贈答品だった。[上野商店 鳥取県鳥取市気高町]

釣り情報

歴史・ことわざなど

サバの文化干し 〈終戦の5年目だが、「軍が開発し使用していたとかの乾燥材を所有していた方が、『魚を干すのに使えないか?』と持って来られた。何から造られたか知らぬ『軽い砂』である。この『乾燥砂』の中に魚を埋めて置くと、『干もの』になると言う。魚をそのまま埋めると砂まみれになるので、セロハン紙に挟んで埋めて置くのだと説明された。セロハンなどの紙に包めば、むれる心配があると言ったら、『セロハン紙は、水は漏らぬがメッシュの小さな穴があるので、空気は通る』と説明された。さっそく中型のサバで実験してみる。開いた鯖の塩水漬けを終わって砂の中で一昼夜もたつと、確かに水分50パーセント位に乾燥していて『中干しの干鯖』はできた。干しあがった製品は、日干したものより、色・艶が悪いばかりでなく、血合いはどす黒さが目立つ」、「千葉県勝浦の生産者のひとりK氏が「1、鯖を二枚におろして、乾燥砂で乾燥させる。2、セロハンに包んだままの出荷」をしてきた。この簡単な改良が成功であって、販路を大きく拡張することになった。半身の干鯖のセロハン包みである。これに「文化干し」と名を付されたが、この名もK氏の創始ではなかろうか。〉。文化干しは古くはマサバで作られていたが、近年ではほとんどがタイセイヨウサバで作られている。塩乾業者はタイセイヨウサバの方が安定してうまいという。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)