ヒレグロ

代表的な呼び名ナメタガレイ

ヒレグロの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
30cm SL前後になる。やや細長い木の葉状で全体に薄黒い。鰭は黒い。眼上に鱗がない。無眼部(裏側)頭部に粘液腔のくぼみがある。背鰭・尻鰭の軟条は総て分枝しない。
裏側も少しすすけた色合いで鰭は黒い。
裏側頭部に粘液を出すくぼみがある。
眼上(一見まぶたのようにぼってりしている部分)に鱗がない。

ババガレイ・ナメタガレイ・地方名などでも混同

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珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜目カレイ科ヒレグロ属
外国名
Blackfin flounder
学名
Glyptocephalus stelleri (Schmidt, 1904)
漢字・学名由来

漢字 鰭黒 Hireguro
由来・語源 田中茂穂は〈福井縣小濱でヒレグロ〉。
〈外國の學者の内にはヤナギムシガレイと同一種であろうと考えてゐる人があるが、私も近頃は是と同様の考えを保ってゐて、ヤナギムシガレイは幼時のもの、ヒレグロは成長期のものであるやうである。また前者は稍や淺い處に、後者は稍や深い處に住んでゐる。〉としている。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
〈カレイ科ヒレグロ属ヒレグロ〉。学名も現在と同じ。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)

Schmidt
ペーター・シュミット(1872-1949)。ロシア(ソビエト)の魚類学者。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。水深50-700mの砂泥地。
北海道全沿岸、青森県〜山口県の日本海沿岸、北海道〜千葉県銚子の太平洋沿岸。
朝鮮半島南岸・東岸〜沿海州をへてサハリン南部西岸・東岸、オホーツク海、ベーリング海。

生態

基本情報

日本海、銚子以北の太平洋側で底曳き網などでまとまってとれる。カレイ類の中では比較的安くて、鮮魚だけではなく加工品原料として重要なものとなっている。消費地でも干ものなどでよく見かける。
ヤナギムシガレイ、ババガレイと呼び名での混同があるが、本種の方がはるかに安い。
鮮魚としても流通し、関東のスーパーなどでもときに売り場に並ぶ。
珍魚度 珍魚ではない。普通の食用魚だが、日本海や茨城県以北の底曳き網で揚がる魚で鮮魚はあまり消費地に来ない。探さないと手に入らない。

水産基本情報

市場での評価 関東には鮮魚としても入荷を見るが非常に安い。加工品としても安い。
漁法 底曳網、刺し網
主な産地(カレイ類として) 北海道、島根県、兵庫県、福島県、宮城県

選び方・食べ方・その他

選び方

粘液に透明感のあるもの。触って硬いもの。

味わい

旬は秋から初夏。
鱗は細かく取りやすい。皮はしっかりして強いが熱には弱い。骨は軟らかい。
透明感のある白身だが白濁するのが早い。血合いはほどんど色がない。

料理の方向性
白身で水分が多く、皮に僅かだが臭味がある。単に焼くよりも干してから焼く方がよく、ソテーする場合も水分を取るように努めるべきかも。産地などでは安いカレイとして煮つけなどにしているが、これが定番的な料理法といえそう。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ヒレグロの料理・レシピ・食べ方/煮る(煮つけ)、ソテー(バター、オリーブオイル)、焼く(干物、塩焼き)、揚げる(唐揚げ)
ヒレグロの煮つけ 水分が多く、煮崩れやすく、旨みが少ないので、醤油、みりん、酒などでおぎなってやる。やや大目の水分で煮上げていく。こうすると弱点である水っぽさが目立たなくなり、身がしっとしして柔らかいのがよい点となる。

ヒレグロのムニエル 油、バターなどを利用してソテーするとうまい。水洗いして無駄な頭部と尾を切り落とす。水分をていねいにとり、塩コショウして小麦粉をまぶして多めの油でじっくりソテー。仕上げにマーガリン(バター)で風味づけする。
ヒレグロの塩焼き 本来干ものの方がうまいが、塩焼きも別種の味わいが楽しめる。軟らかくて焼きたてはうまい。水洗いして適当に切る。水分をよくきり、振り塩をする。1時間程度寝かせて再度水分をよくきり焼き上げる。
ヒレグロの唐揚げ 水洗いして水分をよくきる。身を観音開きにして空洞を作り、片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げたもの。水分が多く、骨が軟らかいのが幸いしてさくっと香ばしく揚がる。丸ごとかぶりつける。

好んで食べる地域・名物料理


山がれいのじゃう(鍋もの) 兵庫県日本海側但馬地方の郷土料理「じゃう」は魚の醤油味の煮物、汁もの、鍋もののことだ。水揚げされた魚の中でも比較的値のつかない魚を使うが、今、もっともよく使う魚が小型の「山がれい(ヒレグロ)」である。醤油味で煮込むということ以外あまり決まり事がなく、ここでは香住の共進丸で聞き取ったことを基本とした。
水洗いして適当に切る。水分をよくきり、醤油・酒に漬け込む。
1時間程度つけ込んだら、つけ込んだ汁に水を加えて煮立たせて味を調える。
これで基本となる野菜ゴボウ、ねぎと一緒に煮ながら食べる。
主に漁業関係者が作る料理だと思われる。いちぶに「すき焼き」としているが明らかに別物である。液体が多いと鍋、汁もの、おかずにするときは液体を少なくして煮物にも変身する。

山がれいのじゃう(汁もの) 兵庫県日本海側但馬地方の郷土料理「じゃう」の汁ものタイプだ。鍋ものと作り方は同じで、銘々の器についで、銘々の膳で食べることだけが違う。
温かくなると鍋にするのが煩わしいのだと思う。
山がれいのじゃう(水炊き) 兵庫県日本海側、但馬地方の郷土料理、「じゃう」は水揚げされた魚の中で比較的売れない魚を煮て食べる。煮物でもあり、汁ものでもあり、鍋でもある料理だ。香住漁港で聞いたかぎりでも様々なやり方があり、そのひとつがこの水炊きタイプである。水炊きは関西から中国、四国にかけて作られているもので、古くは調味しない水で野菜などを温めて食べるものだ。ここにあまり売り物にならない魚を加えて作る。

加工品・名産品

干物●山陰、北海道、東北などで作られる。干物原料としては重要なもの。
干し柳がれい●岩手県三陸全域で作られている。スーパーなどでも必ずあるもので他の地域と比べても顕著。『山英(岩手県宮古市)』
オイランガレイの干もの もっともたくさん生産されている加工品は干もの。北海道では頭部と尾を切り離して干ものにする。「どうせ食べられない部分」なので切り離しているのだというが不思議である。[宮森水産 北海道白老郡白老町]
干し柳ガレイ(なめたの干もの) 三陸では「クロヤナギ」などと呼ばれ干ものになると「柳がれい」として売られている。また山陰の兵庫県、島根県では本種の干ものが大量に作られている。[山英 岩手県宮古市、蔵平水産 兵庫県美方郡香美町香住]
干ものの唐揚げ 干ものに適宜に切れ目を入れて、片栗粉をまぶして揚げたもの。水分が多く、骨が軟らかい分だけ唐揚げに向いている。カレー粉を使ったり、コショウをきかせるとなおおいしい。

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ミミグロ
参考文献 場所兵庫県久美浜 
ホオインガレイ
参考文献 場所兵庫県香住・浜坂 
ヤマガレイ[山がれい]
備考スーパーパック表示。 場所兵庫県香住・浜坂、鳥取県岩美 
オキオバ
参考文献 場所北海道 
オキヤナギ
参考文献 場所宮城県b 
オカタガレイ
参考文献 場所富山県生地・魚津 
ヤナギムシガレイ
参考聞取 場所岩手県宮古市、宮城県仙台市駅前市場 
ミズアサバ ミズアサワ
参考文献 場所新潟県能生・高田 
ヒレグロ
参考『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 場所福井県小浜 
ジンサガレイ
参考文献 場所鳥取 
ベランス ベランスガレイ
備考鳥取県はスーパー表示。 参考青山時彦さん(宇部市青山鮮魚) 場所鳥取県倉吉市、島根県、山口県宇部市 
エゾガレイ オキガレイ
場所秋田市中央市場 
オイラン オイランガレイ
場所北海道室蘭ほか 
クマ
場所宮城県石巻 
クマヤナギガレイ[熊柳鰈] クマヤナギ クマヤナギカレイ
場所宮城県仙台市駅前市場 
クロガレイ クロガレ
場所山形県鶴岡市由良漁港、京都府舞鶴、福島県、大阪 
クロヤナギ[黒やなぎ]
場所福島県 
シンスケ
場所山形県鶴岡市由良漁港 
タイショウ[大正鰈] タイショウガレイ[大正鰈]
場所青森県鰺ヶ沢町 
ナメタ ナメタガレイ
場所青森県鰺ヶ沢町、石川県金沢市金沢中央市場、福井県福井市・敦賀市 
ベタ
場所島根県 
ベタガレイ
場所福井県福井市・敦賀市 
ベラガレイ
備考鳥取県はスーパー。 場所鳥取県倉吉市、島根県隠岐の島町 
ヤナギガレイ[柳鰈]
備考ヤナギムシガレイと混同して。 参考聞取 場所北海道根室、岩手県宮古市、宮城県仙台市駅前市場 
ババガレイ
備考ババガレイと呼び名で混同されることがあり、ババガレイ、ナメタガレイ(滑多)と呼ぶ地域もある。 参考武井ちひろさん 場所宮城県、福井県三国 
ヤマブシガレイ ヤマブシ
参考文献 場所京都府宮津、大阪