小アラか? 否か?
「あらアラ問題」について
八王子総合卸売協同組合、マル幸できれいなアラを発見する。
この魚、昭和という時代にいろんなところで、特に知的な(?)人達の間でしばしば「あらアラ問題」を起こしていた。ただ意外に、その元ネタは知られていないのではないか?
その元ネタが、『最近俳句歳時記 冬』(山本健吉 文藝春秋 1972)だ。あくまで季語の「あら」、すなわちハタ類を述べなければならないのに、いきなり「沖すずき」、すなわち本種が出てくるのだ。
季語になるにはある程度一般的でなければならない。「あら」は当時から大相撲九州場所のとき(旧暦の10月なので冬)に、ちゃんことして食べられていたから季語になる。ここに当時も今も非常にマイナーな魚である本種を持って来たのが大間違いなのだ。
これが現在でも売られ、改訂をしないことで有名な『カラー図説 日本大歳時記』(水原秋桜子、加藤楸邨、山本健吉 講談社 1983)にも引き継がれている。だいたい山本健吉は明治生まれで、この人達の活躍した時代の俳句・文学の世界は当たり前だけどみじんも科学の目を持っていなかったのだ。
このぼんミスを文学の世界のスターだった、丸谷才一などが鵜呑みにして垂れ流す。当然、読者もそのミスを受け継ぐことになる。
この時代をボクは知識変調時代と勝手に呼んでいる。この残渣は今でもマスコミに幽霊のように現れる。まあ、俳句や文学の世界は知識でもいいが、民俗学は科学でなければならないというのが我がサイトを始めた動機だ。
素直に刺身が久しぶりなのでウマスギ
新鮮な静岡県舞阪産アラを買うだけで、こんなことを考えてしまうので、余計に日々の疲れがとれないのだ。疲れているときだからこそ、うまいものを食いたいためのアラでもある。
体長33cm・558gは相模湾では大アラだけど、鹿児島県などでは小アラである。これがわかる人は少なくないだろう。
アラの特徴は相模湾の小アラでもおいしいことだ。ましては相模湾の中深場釣りで形のいいアラならばなおさらうまいに決まっている。