202302/20掲載

久しぶりの豊洲、久しぶりの春日子

今回の春日子はマダイの子

春日子酢じめ2日目

久しぶりに豊洲市場をまわってときどき買っている小物屋で三枚下ろしの春日子を買う。春日子はチダイもしくはマダイの幼魚のこと。
「かすご」の語源はわからない。当然、春日子は当て字だ。ときどき「春日大社」に由来を求める人がいるが、関東言葉にそんな深い意味がある訳がない。
本来東京で若い個体はマコと呼ばれていたらしい。それが「かすご」になったのはすしの世界で、ではないかと思っている。また「かす」は「みそっかす」の「かす」であって子供のことだ。「かすご」は「鯛の子供」ということだろう。
江戸時代江戸湾で打瀬網(底曳き網)でとれた小魚類のひとつで、この小魚を使って江戸前ずし、江戸前天ぷらが誕生する。
春日子を仕込むといえば、すし職人ですし種にマダイを好む人とチダイ(関東ではハナダイ)がいいという人に分かれる。見た目はチダイの方がきれいで、皮が柔らかいので、ボクとしてはチダイを酢じめにすることの方が多い。ただし、今回豊洲市場の春日子はマダイである。
その店はいつも小物を下ろして並べているが、下ろす人が変わっていて、モノ自体もかわっていた。今回は持ち帰ってかなり直しをして酢じめにする。

3日目の春日子酢じめ

春日子酢じめ3日目

ザルに並べて振り塩をする。生っぽいのはあまり好きではないので30分以上強塩でしめて、安い酢で洗い、一度水分を拭き取ってから米酢に20分つけた。食べるのは酢が馴染んだ翌日である。締めた翌日から3日間楽しめた。
マダイの春日子は身が締まっていて、魚らしいうま味も豊かである。酢で締めるといくらでも胃に収まるのは後味がいいからだろう。
春日子を締めるのは春を感じたいためだ。外は冷え冷えながら花の色だけが春らしい、春とも言えぬ2月はもっとも春が恋しい月かも知れぬ。
合わせたのは長塚節がしばしば訪ねた千葉県神崎町、寺田本家が醸した「香取 生酛80」で、懐の深い酸味のある酒だ。
肴も酒も申し分なし。

このコラムに関係する種

マダイのサムネイル写真
マダイRed sea-bream海水魚。水深30メートル前後から200mの岩礁域、砂礫底、砂底。稚魚、幼魚はより浅場にいる。北海道全沿岸〜九州南岸の日・・・・
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