ヒラ

ヒラの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
70cm前後になる。非常に側扁(左右に平たい)する。受け口で、大型のニシンに見える。
70cm前後になる。非常に側扁(左右に平たい)する。受け口で、大型のニシンに見える。
珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区ニシン上目ニシン目ニシン科ヒラ属
外国名
長鰳, 曹白, 力鱼, 鲞鱼  Elongate ilisha, Slender shad
学名
Ilisha elongata (Anonymous,1830)
漢字・学名由来

漢字 平、曹白魚、鰣 Hira
由来・語源 左右に扁平な形態から。鰣は『本草綱目啓蒙』。
現在はヒラ科だが、以前はニシン科であり、その前はイワシ科だった。
〈硬骨魚目等椎亞目イワシ科ヒラ屬 ヒラ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)

地方名・市場名
アリアケターポン[有明ターポン]
備考釣り人の間の呼び名。 場所九州有明海周辺 
ヒラ
場所岡山県岡山市、長崎県長崎市 
オカヤマ[岡山]
備考津田漁港で揚がったら岡山市に送られていたので。 参考20190724 場所徳島県徳島市津田漁協 
バタ ヘタレ ヘータレ ヘラ
参考文献より。 

概要

生息域

海水・汽水魚。沿岸で群れを作り汽水域にも入る。
北海道太平洋沿岸、三浦半島、紀伊水道、瀬戸内海、土佐湾、豊後水道、新潟県糸魚川、富山湾、九州北西岸・南岸。
ピーター大帝湾、朝鮮半島全沿岸、済州島、渤海、黄海、中国東シナ海・南シナ海沿岸、台湾、ジャワ海、オーストラリア北東岸、希にインド東岸。

生態

産卵期は5から8月。

基本情報

北海道以南から熱帯域まで広く生息する魚で、体長70センチ前後になる大型魚で、巨大なニシンそっくりの魚が瀬戸内海でたくさんとれることに驚く人も少なくない。
熱帯域などでは重要な食用魚である。国内では西日本に多く、春から夏の産卵期にはたくさんとれる。この産卵期に大量に揚がる地域である岡山県などでは古くから盛んに食べている。
非常においしい魚であるが小骨が多く、料理法が独特であるために食べない地域の方が多い。
珍魚度 珍しい魚ではないし、瀬戸内海周辺ではスーパーにも並んでいる晩春、初夏にかけて岡山県などに行くと手に入る。

水産基本情報

市場での評価 地域により利用する、しないがある。旬は冬、ただし瀬戸内海でとれるのは晩春から初夏。岡山県など一部以外では非常に安い。
漁法 刺し網、定置網、釣り(長崎県ではタチウオ釣りに混ざる)
産地 岡山県、香川県、熊本県、長崎県

選び方・食べ方・その他

選び方

体色が銀色でよく、焼けて赤くなっていないもの。目が澄んでいて、鰓が鮮紅色のもの。

味わい

旬は冬から初夏。産卵に瀬戸内海などに入ってきて大量に水揚げされるが、産卵期に近づくほど脂が落ち、産卵後はまずい。
鱗は薄く大きく取りやすい。皮は厚くやや強い。骨は細く柔らかい。
青魚のニシンやマイワシに近い味わい、身質で、非常に小骨が多い。

骨切り 刺身には三枚に下ろして腹骨をすきとり、約1ミリ前後の幅で切り離していく。 塩焼き、煮つけには皮方向から中骨に向かって約1ミリ前後の幅で切れ目をいれていく。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ヒラの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、あぶり、酢のもの)、煮る(煮つけ)、揚げる(かき揚げ、唐揚げ、南蛮漬け)、汁(すまし汁、みそ汁、しょうゆ汁)、焼く(幽庵焼き、塩焼き)、ソテー(韓国風焼き魚)
ヒラの刺身 ヒラは水洗いして三枚に下ろす。皮目から1mm〜2mm間隔で包丁を入れて切り離して行く。これをしょうがしょうゆで食べる。好みでわさびしょうゆで食べてもいい。口に入れると意外や清涼感のある味わいで噛みしめるたびにうま味が強いだしてくる。ご飯に乗せて食べてもうまい。


ヒラのあぶり(焼霜造り) 水洗いして三枚に下ろす。腹骨と血合い骨を抜く。これを皮目から骨切りする。皮目を炙って、適当に切りつける。ニシン類なので皮の香りが非常によく、身にも強いうま味がある。
ヒラの酢のもの(ヒラのきゅうりもみ) 水洗いして三枚に下ろして端から1mm〜2mm幅で切り落としていく。これに塩をまぶして少し置き、水洗いして水分をよく切る。これをきゅうりもみに合わせたもの。ヒラはニシン類ならではの味があり、きゅうりの爽やかさと相まってやたらにうまい。
ヒラの煮つけ 水洗いして皮目から1mm〜2mmほどの幅で包丁を入れて骨切り。湯通しして残った鱗、ぬめりを流す。よく水分を切り、酒、砂糖、しょうゆの味つけで煮る。煮上がりにしょうがの搾り汁を振る。魚自体のうま味が煮汁に出てまた魚自体を煮る。実に味わい深い。酒、塩のみの味つけでも、酒、みりん、しょうゆの味つけでも美味。
ヒラのかき揚げ ヒラは刺身と同じ要領で切る。これに小麦粉をまぶして、青じそ、玉ねぎ、にんじんなどを合わせて衣をからめてやや高めの温度でかりっと揚げる。表面は香ばしく、中はしっとりとして非常にうまい。
ヒラの唐揚げ 水洗いして二枚に下ろす。皮目から細かく骨切りをして片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。中骨は硬いが骨切りした部分が香ばしくスナック感覚で食べられる。塩を振ってもいいが、ここでは屋久島の「青切り塩たんかん」をのせてみた。
ヒラの南蛮漬け ヒラは水洗いして三枚に下ろして身の方から包丁を入れて骨切り。片栗粉(小麦粉でも)をまぶしてかりっと揚げる。揚げたてを地につけ込んで少し馴染ませる。地は酢、砂糖、しょうゆを合わせたもの。これに香りをだしたねぎなどの野菜を加えておく。
ヒラのしょうゆ汁 だしを使わずに、魚のうま味だけで作った汁である。調味には酒としょうゆ、塩を使う。しょうゆを使ったのは背の青い魚の風味に相性がいいからだ。具はわけぎのみ。骨切りした身を昆布だしで煮だし、調味しただけ。できるだけ単純に作ってみた。塩だけの潮仕立てでもよかったが、しょうゆの魅力が一椀としての完成度が高い。
ヒラのみそ汁 水洗いして三枚に下ろし端から1mm〜2mm幅で切りはなしていく。これを水から煮出してみそを溶く。ニシン類ならではの強いうま味が感じられて、そのくせ後口がいい。酒の後にもいいし、ご飯にも合う。
ヒラの祐庵焼き 水洗いして骨切りしたヒラをしょうゆ、酒、みりんを同量合わせた地(祐庵地)に半日ほど漬け込む。これを焦がさないようにじっくりと焼き上げる。幽庵焼きは本来淡水魚のための料理でクセのある魚に向いている。ヒラはさほど臭味があるとは言えないが皮目に調味料の風味が加わると実にうまい。
ヒラの塩焼き 二枚に下ろし、中骨のついている方は塩焼きにする。骨切りは1ミリ幅くらい、ていねいに。振り塩をして1時間以上置き焼く。焼くと内側から脂がしみ出してきて、表面がかりっと揚げたようになる。究極の美味であると思う事も多い。
ヒラの韓国風焼き魚(준치구이) 水洗いして二枚に下ろす。皮目から細かく骨切りをして、塩コショウを振る。小麦粉をまぶしてごま油でじっくり香ばしくソテーする。これをそのまま食べてもいいし、酢コチュジャンをつけて食べてもいい。

好んで食べる地域・名物料理

岡山県、香川県、有明海周辺
岡山県では刺身、酢の物、塩焼きほか様々に食べられる。また岡山県ならではの「ばらずし」には欠かせない具のひとつ。
刺身 三枚に下ろして1〜2mm幅に小口から切る。魚屋さん、スーパーなどでも売られている。岡山県

ヒラと竹の子の煮つけ 岡山県高梁市旧市街で聞いたもの。盛りを迎えた孟宗竹の竹の子と、これまた最盛期のヒラを煮合わせたもの。ヒラからいいだしが出て、非常にいい炊き合わせになった。木の芽時の味覚として優秀である。しかもどことなくのどかで安らぎを感じる味でもある。

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

瀬戸内海東部 岡山県、香川県などでは産卵に入ってきた春から初夏にサワラとともに刺し網でとる。もしくは兵庫県などでは巻き網でとる。瀬戸内海東部では岡山、日生、牛窓、赤穂、そして香川県東部などが春から初夏の漁場。岡山ではこの時期によく食べられる。
鹹魚 中国では鹹魚(ハムユイ)という魚を塩漬けにして干したものに加工する。