ヒメタニシ


殻高35ミリ前後になる。膨らみは弱くほっそりして、やや角張る。

魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門腹足綱前鰓亜綱原始紐舌目タニシ超科タニシ科ヒメタニシ属
外国名
Mud-snail
学名
Sinotaia quadrata histrica (Gould, 1859)
漢字・学名由来

漢字 姫田螺
由来・語源 岩川友太郎の命名。タニシで殻が薄くやや小さいため。

タニシ
田に棲む貝の王様という意味合いで「田主(たぬし)」が「たにし」になった。
裸足で入ると足の裏を痛める田の中の石になぞらえて「タノイシ」といったのが「たにし」に転訛。

岩川友太郎
安政1〜昭和8年 1855-1933、青森県生まれ。モースに師事して近代的な分類学を学ぶ。多くの標準和名をつけるなど貝類の世界での業績が目立つ。『生物学語彙〈ゴキブリは本来、御器かぶり(ごきかぶり)と言ったが本書のルビの振り間違いから「ごきぶり」になる〉』、『日本産蛤類目録』など。
地方名・市場名
ツブ
備考ツブという地域が多い。 
タツブ タヅブ タツベ タツポ タツボ タヅボ ダツボ タッボー タヅボー タツボックリ タツンボ タツンボー タデナ タナシ タニイシ タニーシ タニシドン タニナ タヌシ タネイシ タネシ タネツボ タノイシ タノシ タノシツブ タノス タノセ タノツブ タバ タバイ タヒナ タミーナ タミナ タムシ タンコロガシ タンシ タンシー タンショ タンツー タンツボ タンナ タ・ンナー タンナー タンニャ タンヌシ タンノシ タンビナ タンボックラ タンボロ タンマ タンマー タンミナ タンミャ タンヤ チブ チバ ツブ ツブカイ ツブケァ ツブメ ツブラ ツブロ ツボ ツボサン ツボドノ ツボドン ツム ツンブ ニシ ニシツボ バア バイ ビナ ビンノジ ホウジャ ホウジョウビナ ミナ モゴリ モココリ ヤサラ ゼゼラ タヌシ アンビター イエカルイ イヤノコトコト ウスバイ オツボ
備考タニシ科総称。 参考文献より。 

概要

生息域

淡水生。流れのゆるやかな河川、用水路、ため池、湖。
本州、四国、九州。北関東以西に多い。

生態

雌雄異体。
触角が長く発達し、右が陰茎になる。
春に右の触角を雌の膣に挿入し交尾。
子宮で稚貝まで育てる卵胎生。
出産は夏から秋。
タニシの中ではもっとも汚染に強い。

基本情報

長野県佐久市では田などに普通に見られる。
古くはタニシを食べていたと言うことだが、ヒメタニシである可能性大。
長野県では魚屋などで剥き身を売っていたともいう。
長野県佐久市の田んぼで。

水産基本情報

市場での評価 タニシは剥き身を希に見かけるが、非常に高価。
漁法 採取
産地

選び方・食べ方・その他

選び方

生きのいいもの、子持ちでないもの。

味わい

旬は寒い時期
基本的に一定期間きれいな水のなかで泥抜きする。
貝殻はやや硬く、割って身を取り出すことは難しい。
一般的にはゆでて、身を取り出す。
泥抜きすると臭みはあまりなく、旨みが強い。
いいだしが出る。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ヒメタニシの料理法/みそ汁、みそ煮、佃煮(醤油煮)、ぬた、天ぷら


ヒメタニシのみそ汁 みそとの相性が非常にいい。生きているものはきれいな水の中でできれば1日泥抜きする。貝殻つきのままでもいいし、剥き身にしてもいい。これを水から煮てみそを溶く。汁は独特の風味があり、うま味がとても豊か。なんともいえない旨みがある。山椒との相性がいい。
ヒメタニシのみそ煮 きれいな水に1日以上生かして泥抜きする。貝殻を割り、身を取り出す。煩わしいのでフタをていねいに取り除く。これをみそ、酒、みりんを合わせて煮立てたなかで煮て、そのまま冷ます。醤油で煮るより、みその方が美味。甘みを控えめにして、山椒を利かせる。
佃煮 きれいな水に1日以上生かして泥抜きする。貝殻を割り、身を取り出す。フタはていねいに除くこと。これを酒、しょうゆ、砂糖でこってり甘辛く煮る。山椒やしょうがの風味をつけるとご飯にも酒の肴にもいい。
ヒメタニシのぬた きれいな水に1日以上生かして泥抜きする。殻付きのままゆでて針か楊枝で取り出す。フタは煩わしいのでていねいに取る。これを辛子酢味噌で和える。食感がよく噛みしめるとこくのある味がする。いい肴になる。
ヒメタニシの天ぷら きれいな水に1日以上生かして泥抜きする。貝殻を割り、身を取り出す。煩わしいのでフタはていねいに取る。これに小麦粉をまぶし、衣をつけて揚げる。揚げることでうま味がまし、また独特の風味が楽しめる。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

■春の歳時記、季語。
■蕪村の俳句に「なつかしき津守の里や田螺あへ」というのがある。
■タニシは鳴くと信じられていた/「タンキ、ポンキ、タンコロリン」と鳴くとされた。
■「4月27日、鎮守・諏訪神社の祭りにツブとヒロッコの酢みそ和えを必ずつける」秋田県八郎潟周辺。『聞書き 秋田の食事』
■滋賀県中主町(野洲市)ではかつて旧暦の桃の節句に、タニシをとってきて、女の子の成長を祝った。
■山梨県では稲刈りの後にタニシとりをする。そのとき「つぼ採りは窪い処」といいながらつぼ採りを始める。
■長野県では魚屋で剥き身が売られていたことがある。
●マルタニシ、ヒメタニシは一部共通