タカベ

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SL 22cm前後になる。細長く断面は長楕円形で背部は刷毛で掃いたような黄色い帯がある。背鰭は棘と軟条がつながり深い欠刻がある。尾鰭起部は鱗で覆われている。
SL 22cm前後になる。細長く断面は長楕円形で背部は刷毛で掃いたような黄色い帯がある。背鰭は棘と軟条がつながり深い欠刻がある。尾鰭起部は鱗で覆われている。[14cm SL]
SL 22cm前後になる。細長く断面は長楕円形で背部は刷毛で掃いたような黄色い帯がある。背鰭は棘と軟条がつながり深い欠刻がある。尾鰭起部は鱗で覆われている。[144g、19g]
SL 22cm前後になる。細長く断面は長楕円形で背部は刷毛で掃いたような黄色い帯がある。背鰭は棘と軟条がつながり深い欠刻がある。尾鰭起部は鱗で覆われている。[稚魚]

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タカベ科タカベ属
外国名
Yellowstriped butterfish
学名
Labracoglossa argentiventris Peters,1866
漢字・学名由来

漢字 鰖、高部 Takabe
由来・語源 「たかべ」は東京、伊豆地方、伊豆諸島、高知県での呼び名。“たか”は漁村用語で岩礁域の意味。“べ”は魚を表す。
〈鰖(ダ)の字を用ゆ〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)。武井周作は江戸は長浜町(現日本橋)生まれなので、本種は日常的な魚だったのだと思う。
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)も「鰖」としている。
〈たかべ○讃岐にて○あじろといふ 能登にて○とこやといふ〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
高部 当て字。『飲食事典』(山本荻舟 平凡社 1958)

魚鑑
『魚かゞみ』(著者/武井周作、画/一勇斎国芳)。天保2年(1831年)。魚貝類の和漢書(事典)。武井周作は江戸日本橋長浜町の蘭方医で本草家。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。沿岸域の岩礁地帯の中層。
八丈島、小笠原諸島、茨城県〜九州南岸の太平洋沿岸、[鹿児島県]。若狭湾、兵庫県香住、島根県隠岐・浜田、鳥取県、山口県日本海側〜九州北部。
朝鮮半島南岸、済州島。

生態

産卵期は8月から10月。
動物プランクトンを食べている。

基本情報

イスズミ科に入れて、タカベ亜科とする説があるが、タカベ科のままとする。国内の比較的暖かい海域と朝鮮半島周辺にしかいない生息域の狭い魚だ。不思議なことに関東の沿岸域や伊豆諸島に多く、静岡県西部以西ではあまりまとまって揚がらない。
関東周辺、伊豆諸島は国内屈指の産地なので、東京をはじめ関東では夏の魚の代表的なものであり、夏の高級魚でもある。魚屋やスーパーの店頭に並ぶと夏が来たなと感じる。夏の夕べなどに本種の塩焼きでビールは東京の夏の風物詩である。
市場などでは4月、5月は走りの時季、6月、7月、8月が旬と考えている人が多い。面白いことに走りを喜ぶ関東にあっても、春のタカベだけはよしとしない。例えば4月に入荷しても「まだ早い」と手を出さない人が多い。英名はイエロー バター フィッシュ」といい、夏になると非常に脂ののりがよくなる。焼いて炎が出るくらいがいい、という人もいる。
三重県などでも揚がるが関東ほどには高値がつかないし好んで食べるということもない。
基本的に焼き魚用の魚で、生食することはまずないにも関わらず高値がつく。
珍魚度 珍しい魚ではないが関東周辺では流通するが、他の地域ではスポット的なものでしかない。入手が難しい地域が多い。

水産基本情報

市場での評価 関東の市場には東京都伊豆諸島、千葉県、静岡県などから入荷してくる。値段は高値安定。
漁法 釣り、刺し網、巻き網
産地 伊豆諸島(東京都)、千葉県、静岡県、愛媛県

選び方・食べ方・その他

選び方

味わい

旬は初夏から夏。大型は旬がはっきりしている。小さくても味のいい魚である。
鱗は小さく弱い。皮は比較的厚みがあり、しっかりしている。骨は軟らかい。
血合いの色は鮮度が落ちると赤黒くなる。透明感はあるものの刺身にして美しくない。熱を通しても硬くならず、身離れがいい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

タカベの料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き)、生食(焼霜造)、煮る(煮つけ)、揚げる(唐揚げ)
タカベの塩焼き 東京では古くから夏の風物詩とされているが、基本的に塩焼きである。昔、銀座などを歩いていると店の前でタカベの炎が上がるのを見て、のれんをくぐったものだ。
水洗いしてよく水分を拭き取っておく。振り塩をして少し寝かせる。脂が強いので短時間では塩が馴染まない。これをじっくりと炎が上がらないように焼き上げる。この脂のすすで汚れないように焼くのが肝心。初夏の塩焼きは絶品。東京では夏の塩焼きではイサキよりも珍重、多少高値でも食べたくなる。

小タカベの塩焼き 小さくてもほどほどに脂があって、しかも濃厚なうま味を持っているのがタカベの特徴である。内臓のきれいな魚で、小型なのでそのまま流水などで洗い、振り塩をする。少し寝かせて焼き上げる。体長11cmしかないにも関わらず大いにウマシ、だ。
タカベの焼霜造(焼き切り) 味は皮周辺にあると思う。身色の悪くなりやすいので刺身はよほど鮮度がよくないときれいではない。皮は見た目にも美しく、味がある。特にあぶると好ましい香りが立つ。三枚に落として血合い骨・腹骨を取る。皮目をあぶり、氷水に落として粗熱を取る。水分をよく切り、皮目が落ち着いたら切りつける。脂がのっていて強いうま味がある。

タカベの煮つけ 漁師さんは煮つけにもしている。要するに作り置きできるという意味合いもあるのだろう。水洗いして切れ目を入れて湯通しする。これを酒、砂糖、しょうゆ、水で煮る。単に甘辛く煮ても、甘酢で煮ても美味しい。
タカベの唐揚げ 小振りのものなら唐揚げにしてもいい。脂ののったものよりもカラリと揚がる。ここでは開いてよく水分を切り、二度揚げにしている。サクサクとほとんど余すところなく食べられてとても美味。

好んで食べる地域・名物料理

下等魚 〈戦前、戦後の一時期は下等魚として、市場でも安値であったが、現在では高級魚の部類に属するようになった。〉戦前、戦後とは第二次世界大戦のことで1945年。この前後なぜ下等魚になっていたのか、またそれ以前はどのような値段がついていたのかなどは不明。ただ1970年代にはすでに高級魚であったことは間違いない。『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社 1975)
東京の魚 関東でも古くは東京市(現23区)でよく食べられていたものと考えている。四国徳島生まれなので1970年代末に上京して初めて見た。群馬県太田市・愛知県名古屋市・福岡県福岡市生まれの同級生も知らなかった。

加工品・名産品


タカベの開き 三重県尾鷲市では「べんたの開き」。とれたばかりのタカベを開いて干し上げたもの。脂がのっていて焼く内から脂が染み出して表面が油で揚げたように褐色に染まる。強いうま味と豊かな脂が相まって実にうまい。[三重県尾鷲市]
梶賀のあぶり 尾鷲市ではタカベを「べんた」という。春から初夏にかけてとれる「べんた」の幼魚を、桜、もしくは樫の木でじっくりとあぶり焼きにする。要するに燻煙することで保存性を高め、しかも好ましい香りをつけたもの。小振りの割りに骨が気にならず、風味豊かで非常に味わい深い。[三重県尾鷲市]

釣り情報

初夏から夏にかけて、千葉県外房から、伊豆諸島までコマセカゴつき方天秤仕掛け、オキアミエサなどで釣る。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ジュンサノボッチ[巡査のずぼん] ジュンサノバッチ[巡査のずぼん] ジュンサンノバッチ[巡査のずぼん] タカメ ナキリハ
備考ジュンサノボッチは「巡査のズボン」で明治時代の巡査のズボンには真横に縦の黄色いラインがあったため。 参考林一兵衛さん 場所三重県志摩市大王町 
シャカ
参考文献 場所和歌山県串本 
メラ
参考『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年) 場所安房(千葉県) 
タカベ
参考日比野友亮さん/和具の方言、文献 場所東京都・伊豆諸島、神奈川県、静岡県下田、三重県志摩市和具、高知県須崎 
ムギタオシ
サイズ / 時期小型 参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都伊豆大島野曽・差木地 
カチョウ ホンカチョウ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島 
シマウオ
参考文献 場所熊本 
トコヤ
参考物類称呼 場所能登 
アジロ
参考物類称呼 場所香川県(讃岐) 
ベント
参考文献 場所高知県柏島 
ホタ
参考文献 場所鹿児島 
ベンタ
場所三重県尾鷲市 
ベントウ[弁当]
場所徳島県海部郡海陽町宍喰『宍喰漁業協同組合』 
ベットウ
場所高知県宿毛市田ノ浦『すくも湾漁協』 
イボチ
参考文献より。