カワヤツメ

代表的な呼び名ヤツメウナギ

カワヤツメの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
50センチ前後になる。細長く鰭は背鰭、尾鰭しかない。顎がなく、口の周りに棘が密集して吻はスポイト状。
側面から見ると本当の目が1つ、鰓孔が7つで「八目」となる。
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★
美味
分類
無顎上綱頭甲綱ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科カワヤツメ属
外国名
英名/Japanese lamprey
学名
Lethenteron japonicum (Martens, 1868)
漢字・学名由来

漢字 河八目、河八目鰻 Kawayatume
由来・語源 八田三郎(はったさぶろう 1865〜1935 ヤツメウナギの発生の研究など)の命名(決めた)。ヤツメウナギの仲間で河(大きな河)を遡上、下りしているため。
■ 「八目」の「目」は片側に実際の光を感じる器官の目と鰓孔を足して8つあるため。
■ 「八目」の「目」とは動物などの眼ではなく、秤の目。すなわち重さの目盛りのことだと思われる。

地方名・市場名
ウナギ カギヤツメ コソ ナナツメ メソ メッセン ヤズメ ヤツメ
参考文献より。 

概要

生息域

川→海→川。島根県、茨城県以北。朝鮮半島からスカンジナビア半島東部、アラスカ。

生態

ヤツメウナギの基本的情報
無顎上綱(Superclass Agnatha) について◆
■ メクラウナギ綱(Myxinidae)と頭口綱(Cephalaspidomorphi)の2綱に分かれる。
■ 顎のない原始的な生物。古生代に誕生して、絶滅した棘魚類、板皮類を含む。
ヤツメウナギ目(Petromyzontiformes)ヤツメウナギ科(Petromyzontidae) について◆
■ ヤツメウナギ科1科のみに6属41種。国内には4種。一般に食用となるのはカワヤツメのみ。
■ アンモシーテス(アンモセーテス Ammocoetes)と呼ばれる幼生期を経る。
■ 口は吸盤状になり、奥に歯が並んでいる。吸盤で吸い付き、他の魚の肉をはぎ取って食べたり、体液、血液などを吸う。
■ 特徴は鱗がない。背鰭が2つ、尾鰭があるのみ。胸鰭、腹鰭、尻鰭を欠く。
■ 鰓孔(えらあな)が7対あり、体側に並んでいる。横から見ると本当の目を加えて8つの目(?)が並んでいるように見えるので「八目」となる。
生態
海で2〜3年過ごし産卵するために川に上る。
3〜4年で成熟し、湖の浅い湧水のある場所で産卵。産卵後死んでしまう。北海道では5〜6月に遡上してその年の夏に産卵するものと、9月〜10月に遡上して、翌年春に産卵するものがある。
川で2年以上暮らし、若魚(成体)に変態して海に下る。
幼生期は植物プランクトンやデトリタス(水中に浮遊する有機物)を食べている。成体は吸盤状の口で魚などに吸着して寄生、皮膚、筋肉や体液、血液などをLampheredinという腺液で溶かして食べる。

基本情報

一般的な「ウナギ」と縁もゆかりもない生き物で、分類学的に魚類ではないとされることのある無顎類である。実際に鱗もなくウナギのように粘液も出さない。
川で生まれて、川に産卵のために上る。この川に上るヤツメウナギを取り食べている。古く東北・北海道などでは普通に見られ食べられていたが、近年激減、珍しくて高価なものとなっている。
古くから滋養強壮にきくとされ、とくに夜盲症などに効果ありといわれている。乾物は特に漢方薬として取り扱われている。
産地である東北などでは秋から冬に鍋、みそ汁などにして食べている。

水産基本情報

市場での評価 関東の市場にはほとんど入荷しない。高価。
漁法 筌、ヤス、手づかみ
産地 北海道、青森県、秋田県、山形県、新潟県ほか

選び方・食べ方・その他

選び方

原則的に生きているもの。

味わい

旬は秋から冬。
表面にウナギのようなぬめりはない。皮は厚みがあって熱を通すと縮む。骨が網状になっていて柔らかい。白身ではあるが赤みを帯びていて軟らかい。下ろすときに大量の血液を出す。

料理の方向性
ウナギと同様に蒲焼きなどにしたり、汁、煮ものに使う。生食はしない。蒲焼きは皮と筋肉が強く縮むが硬くはならない。汁にすると味わいのあるだしが出て、身は硬くしまらない。ともに鶏のレバーのような風味があり、蛇腹状の軟骨がこりこりとした独特の食感である。

栄養

ビタミンAが豊富。

危険性など

食べ方・料理法・作り方

料理法 汁(鍋、みそ汁)、焼く(蒲焼き)

好んで食べる地域・名物料理


やつめのみそ汁 最上川では今でも「ヤツメウナギ漁」が行われ、狭い地域ではあるが流通もしている。もっとも一般的な食べ方が「みそ汁」。大人の親指の第一関節くらいの大きさに切り、水から煮てみそを溶く。河口域の酒田市では、ねぎ以外入れないのだという。[山形県酒田市]
貝やき(かやき) 新潟県、山形県、秋田県などでは小鍋仕立てで食べる。みそ仕立て、しょうゆ仕立ての鍋があるが、晩秋から冬の風物詩とでもいえそうなもの。古くはホタテガイの貝殻を鍋にして作っていた。これを「貝焼き」という。
やつめの蒲焼き 山形県酒田市で教わったもの。カワヤツメを開いて、素焼きにして、しょうゆ、みりん、酒、砂糖のたれを塗りながら焼き上げる。[ト一屋 山形県酒田市]
蒲焼き 開いてウナギのように蒲焼きにしてもうまい。関東でも古くから食べられていた。ウナギよりもさっぱりした味で食べやすい。今でも浅草では精力がつくとして人気がある。[八目鰻本舗 東京都台東区浅草]

加工品・名産品

干しヤツメ●丸のまま干したもので、あぶって食べる。
寒やつめ●新潟県蒲原地方(阿賀野川河口域)、福島潟などで作られていたもの。現在では希少。干して藁で巻いたもの。あぶって薄く切り食べる。苦みがあり、食べ物というよりも滋養強壮の薬と思われていたのかも。[新潟市松浜]

釣り情報

歴史・ことわざなど

断腸亭日乗 昭和11(1936)年。七月三日。「夕食前に家を出て、行くところもなければ浅草公園にいく。伝法院裏門外より池のほとりに並びたる露店の中、人殊更多く集まるものは八ッ目鰻のつけ焼きと……」。