202506/06掲載

神奈川県小田原の魚玉茶漬、マアジ編

神奈川県小田原の隠れ味、魚玉茶漬


どんちっちあじは脂がのっていた。
ただ、それにしても刺身ばかりでは飽きる。
そこで作ったのが、多田鉄之助(1896-1984)の本にあった、「(神奈川県)小田原地方で広く行われている」という魚玉茶漬だ。
1968年の本なので、1970年前後に始まる情報化の波に、地域の本来の食文化が破壊される前である。

卵と醤油で作る漬けは、愛媛県南部の「鯛飯」の食べ方に似ているが、あちらは生醤油ではなく、加減醤油を使うし、あちらは漬けではなく、即席で作る。
要するに玉子(卵)と醤油の地に漬け込んだものをご飯にのせて、熱い番茶にのせて食べるものなので、小田原のものは家庭料理の延長線にあるのだろう。

正確には醤油卵で、醤油の比率の方が高い。
この地で漬けにしただけのもので、それだけで食べておいしいとは予想できなかった。
脂が乗ったマアジだからかも知れないが、単なる漬けよりも味の奥行きを感じる。
意外性のある、味である。

これを熱々のご飯の上に乗せて、番茶をそそぐ。
あとは茶漬けなのでしゃばしゃばと。
もの足りなかったら、ちょっと醤油卵を足して、味を調えて食べる。

今回は辛味は使わなかったけど、わさびが合うと思う。
小田原に行ったら、みなに食べたことがあるか、聞かなくては。
それにしても、小田原にこんな名物があったなんて。

脂の乗ったどんちっちあじで作る


2025年6月2日に、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に「どんちっちアジ」が来ていた。脂質含有量10パーセント以上の脂ぎったマアジである。
押っ取り刀で荷を開けたが、もうほとんど残っていなかった。
水氷をかき混ぜて、なんとか1尾、2尾。

用意するものはとてもシンプル。たぶん家庭料理のひとつだろう


刺身がうますぎたので、堪能。
ついでに、『くいしんぼ 郷土の味めぐり』(多田鉄之助 観光展望社 1968)の魚玉茶漬を作る。そのまま引用する。
〈魚玉茶漬 小田原地方に広く行われている。ショウ油大さじ4杯に玉子1個の割合でかきまぜ、アジ、カツオ、クロダイ、コチなどの新しい魚を刺身のように切り、この中に漬け込んでおく。三〜四十分後に炊きたての飯を茶碗に盛り、切り身を3〜4枚をのせ、上から熱い番茶をかけて、焼いた海苔を上からちらし、さらしネギを添えて食べる。〉

基本的に醤油と卵と魚の刺身状に切ったものだ。
刻みネギともみ海苔は別に用意をしておく。

醤油主体で卵入りの地に漬ける


刺身を作り、卵と醤油を1対2くらいで溶いた地に30から40分漬け込む。
主は醤油で卵は半量くらいでいいようだ。
醤油辛い漬け地は意外にこれだけでもうまい。

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マアジのサムネイル写真
マアジJapanese horse-mackerel, Japanese jack mackerel海水魚。大陸棚を含む沖合〜沿岸の中・下層。北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、種子・・・・
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