ムラサキインコ

ムラサキインコの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
殻長4センチ前後。貝殻は黒く見えるくらいに、濃い褐色で殻毛はない。放射肋は幼貝のときははっきりしているが、大きくなるとはっきりしないものがある。
珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門二枚貝綱翼形亜綱イガイ目イガイ超科イガイ科イガイ亜科クジャクガイ属
外国名
Purplish bifurcate mussel
学名
Septifer virgatus (Wiegmann,1837)
漢字・学名由来

漢字 紫鸚哥 Murasakiinko
由来・語源 『目八譜』より。江戸時代にはインコやオウムなどが多数輸入されているが、貝殻の形がインコの翼もしくはクチバシに似て、紫色であるためだろうか。

目八譜
1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。
地方名・市場名

概要

生息域

海水生。潮間帯上部、飛沫帯などに縦に密集する。
北海道南西部〜九州。

群落を作る 潮間帯の満ち潮のときだけ波を被るようなコンクリート壁や岩などに密集している。

生態

潮間帯の岩礁域、テトラポットなどにベッド(密集して棲息する)を作る。
比較的潮間帯の上部に多い。

基本情報

国内の海岸線でもっとも普通に見られる二枚貝。海に沈まない飛沫帯などにも普通でまとまって取れるので食用とする地域が多いと考えている。
一般的にみそ汁などにして食べる。
珍しさ度 海辺に行くといたって普通に見られる。探すのはたやすい。

水産基本情報

市場での評価 非常にローカルなもので、全国流通はしない。やや高値。
漁法 採取
産地 島根県ほか

選び方・食べ方・その他

選び方

味わい

旬は春から初夏。
貝殻は薄く割れやすい。足糸がある。基本的にむき身にしないで汁ものや酒蒸しに使う。
熱を通しても身が固くならない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ムラサキインコの料理・レシピ・食べ方/蒸し煮(酒蒸し、ワイン蒸し)、汁(みそ汁、すまし汁、スープ、ブイヤベース)、リゾット
ムラサキインコのワみそ汁 もっとも基本的な料理法がみそ汁である。採取したら付着している泥や海藻類などをていねいに落とす。足糸などについている貝殻などは包丁の背でこそげ取るといい。
流水でも洗って、水分をよくきる。水から煮出してみそを溶く。アサリやシジミと違って濃厚で独特の風味がある。うま味豊かでありながら嫌みがない。
個人的意見ではあるが病みつきになる味わいである。毎日摂ってもいいといった味である。

ムラサキインコのワイン蒸 蒸したときのジュや貝自体の味わいを堪能することができる。採取したら流水などでていねいに洗い流す。蓋が出来る鍋などにオリーブオイルとにんにくを入れて香りが出て来たら本種を入れて油を馴染ませ。白ワインを加えて蓋をして蒸し煮にする。
ムラサキインコの酒蒸 清酒で蒸し煮にする。流水などでていねいに汚れを落とす。水分をよくきり蓋が出来る鍋に入れて酒を加え、蒸し煮にする。軟体は硬く締まらず、うま味豊かでとても味わい深い。
ムラサキインコのリゾット まずはゆでる。ゆで汁と貝を分け。身を取り出して置く。玉ねぎをオリーブオイルで炒め、米(ごはん)と押し麦を加える。少し炒めてゆで汁を加え、ローレルを入れて煮る。仕上げにオリーブオイルと粉チーズを入れ、かき混ぜる。仕上げにディルを散らす。

好んで食べる地域・名物料理

■島根県浜田市では「タチガイ」として食用とされている。
■宮崎県延岡市では「カラスガイ」としてスーパー、魚屋などで販売している。主にみそ汁用。
■『海の生物誌』(平井越郎 東奥日報社 1964年頃に書かれたもの)に青森市浅虫の茂浦、浦田などでムラサキインコを「まるご」といって食用にしているとある。
■愛媛県伊方町では「くろくち」をみそ汁にして食べる。

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

イギャア
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所佐賀県鎮西町・唐津市湊・神集島 
マルコ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所北海道久遠郡せたな町太櫓 
シウリガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所北海道函館市 
ヒヨリガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所北海道函館市、青森県八戸 
マロコ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所北海道渡島福島町 
シイリ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所千葉県銚子市 
セトガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所和歌山県・和歌山県白浜町瀬戸 
カラスゲ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所宮崎県青島 
マメガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所山口県下関市豊北町大字角島 
ヒカゲ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所山口県大井 
マメハサリ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所山口県萩市江崎 
セクロ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所山口県見島・萩市大井 
ソロバンガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所熊本県天草市牛深 
イワガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所熊本県天草苓北町 
セガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所熊本県天草苓北町富岡 
クロガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所熊本県水俣市 
エンガイ ニタリガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所福井県 
イガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所茨城県 
クログチ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所長崎県対馬上県町久原 
ボーズギャー
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所長崎県西海市大瀬戸 
クロキチゲー
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所長崎県長崎市 
マルボ
参考『海の生物誌』(平井越郎 東奥日報社 1964年頃に書かれたもの) 場所青森県 
ヒュウリ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所青森県八戸地方 
シイガイ
参考20190427 場所高知県四万十市中村 
コスクリガイ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所鳥取県境港 
カラッゲ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所鹿児島県 
カラゲ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所鹿児島県指宿市 
カラスガイ
備考カラスガイとしてスーパー、魚屋などで販売している。主にみそ汁用。 場所和歌山県串本町古座津荷、宮崎県延岡市 
カラスガイ
備考カラスガイとしてスーパー、魚屋などで販売している。主にみそ汁用。 場所北海道函館市、和歌山県白浜町・瀬戸、鳥取県境港、山口県下関市阿川・粟野、宮崎県日南市、鹿児島県串木野市 
カラスグチ
参考『CURRENT』(黒潮生物研究所) 場所高知県大月町 
クロクチ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988)、聞取 場所新潟県佐渡相川、京都府網野町、山口県萩市越ヶ浜、愛媛県伊方町 
タチガイ
備考食用として流通する。 参考聞取、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所島根県浜田市、山口県萩市須佐 
マルゴ
備考『海の生物誌』(平井越郎 東奥日報社 1964年頃に書かれたもの)に青森市浅虫の茂浦、浦田などでムラサキインコを「まるご」といって食用にしているとある。 参考『海の生物誌』(平井越郎 東奥日報社 1964年頃に書かれたもの)、野呂恭成さん、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所青森県・青森県むつ市 
ヨコグチ
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 場所長崎県対馬市上県町久原