オオクチイシナギ
代表的な呼び名イシナギ
魚貝の物知り度 | ★★★★★ 知っていたら学者級 |
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食べ物としての重要度 | ★★ 地域的、嗜好品的なもの |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イシナギ科イシナギ属
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外国名 | Seabass
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学名 | Stereolepis doederleini Lindberg and Krasyukova, 1969
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漢字・学名由来 | 漢字 大口石投 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。水深400-600m。産卵期は30-200m。
北海道全沿岸〜屋久島の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、男女群島、九州〜パラオ海嶺。
朝鮮半島南岸・東岸、ピーター大帝湾。
生態
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基本情報
1950年代までは標準和名はイシナギであった。北部太平洋からアメリカ大陸までにいるコクチイシナギ(Stereolepis gigas Ayres, 1859)が国内でも見つかって「大口」をつけた。ただこんなことでなぜ、標準和名を変更したのかが不思議だ。
漁の最盛期は成魚(20kg〜100kg、ときにそれ以上の大型)が浅場に上がってくる春。これだけの大型魚が漁の不安定なときにとれる。産地などでは「ありがたい」と思っただろう。そんなことから伝説が生まれたのだなと思う。産卵期が漁の盛期でもあるところから「オオヨ(大魚)」という地方名が多いのもうなずける。
関東などでは希に切り身などで売られている。丸のまま見る機会はほとんどなく、消費地での認知度は皆無に思える。
非常に上質の白身で煮る焼くなど伝統的な魚料理にしてとても味がいい。鮮度のいいものは刺身などでもおいしいことからもっと高値がついてもいい。
肝には大量のビタミンAが含まれていて、食べると中毒することがある。肝は基本的には食べないほうがいい。食べるなら自己責任で。
水産基本情報
市場での評価 入荷は希。あまり高価ではない。
漁法 延縄、底曳き網
産地 宮城県、三重県など日本各地
選び方・食べ方・その他
選び方
触って張りのあるもの。目が澄んでいるもの。
味わい
旬は秋から春 産卵期に大型がまとまって揚がり、抱卵・精しているのにほどよい脂がある。この産卵期を旬としてもいいのかも。
若魚と春の成魚では味わいがかなり違っている。大きい方が美味。
若魚では鱗は取りやすく、皮はしっかりしている。骨はやや硬い。
成魚では鱗は硬く埋没的。包丁ですき引きする方がやりやすい。皮は厚みがあって強い。
透明感のある白身で時間が経つと白濁する。
栄養
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危険性など
肝臓にはビタミンAが多量に含まれているので最小限食べること、また出来れば食用にしない方がいい。「ビタミンA過剰症」に。頭痛、疲労感や吐き気、睡眠障害、食欲不振、膚荒れなどを引き起こす。また比較的脂の強い部分は大量に食べるべきではない。
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
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加工品・名産品
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釣り情報
千葉県外房などでは活き餌(イカなど)を使った遊船があったと記憶する。専門にねらうものではないとは思うが幻の魚扱いを受けていた。
歴史・ことわざなど
大師魚(ダイシウオ、ダイシウヲ) 昔、和深(現和歌山県東牟婁郡串本町和深)に貧しいが心優しい漁師がいた。ある日、みすぼらしい巡礼僧が漁師に水一杯を所望した。漁師は生水は毒だと、湯を沸かし、茶をすすめた。家の前の石に腰を下ろして、沖を見ながら休み、茶を押し頂くように飲む。お茶のお礼にと、「ここから一、二里沖の海底に大きな底島がある。春、そこに釣り糸を落とすときっと大きな魚が釣れる」という。次の春は不漁続きで食べるものもない。それで彼の僧侶の教え通り釣り糸を落とすと大きな魚がとれ、急場をしのぐことが出来た。その話を聞いた村の人々は、深い海底のことまで知っているとは偉いお坊さんに違いなく、きっと弘法大師に違いない、とのことで以来、大師魚と呼ぶようになり、僧侶が腰を下ろしていた石もまつることにした。
サメをエサに釣る 山形県では磯などにいる小形のサメで釣るという。
地方名・市場名
サイズ / 時期大型 参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府丹後
参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府丹後半島周辺
場所北海道岩内
参考富山伝統的食文化研究会 場所富山県朝日町宮崎
場所標準和名
サイズ / 時期小型 備考伊豆網代でウリボウ→イシナギ。 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県伊豆網代
参考日比野友亮さん/和具の方言 場所三重県志摩市志摩市和具
場所青森県青森市
場所山形県酒田市酒田漁港
場所山形県酒田市酒田漁港(山形県漁業協同組合)
場所山口県下関市
場所和歌山県
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分譲、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所静岡県伊豆網代、和歌山県
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和深
参考文献より。