アブラボウズ

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体長1.8m前後になる。
体長53cm、3.9kgの個体。体側の城と黒の不定形の模様がある。成長するに従ってこの模様は消える。
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目ギンダラ科アブラボウズ属
外国名
Skilfish. Blackcod
学名
Erilepis zonifer (Lockington, 1880)
漢字・学名由来
漢字 油坊主 Aburabouzu
由来 神奈川県三崎での呼び名。戦前まではアブラバウズ科アブラバウズ属アブラバウズだった。
書身に非常にたくさんの脂(油)を含んでいるため。
地方名・市場名
アブラコ アブラボウ アブラボ アブラメ
参考『北海道の全魚種図鑑』(尼岡邦夫、仲谷一宏、矢部衛 北海道新聞社) 場所北海道 
オキネウ[沖根魚]
参考『石巻の四季のさかな』(石巻魚市場株式会社) 場所宮城県石巻市石巻魚市場 
アブラボウズ
参考文献 場所神奈川県三崎 
オシツケ
参考『新釈魚名考』榮川省造 青銅企画出版 場所神奈川県小田原 
クロウオ
場所東京都伊豆大島 
クロ
参考文献 場所神奈川県小田原市 

概要

生息域

海水魚。水深100m前後の大陸棚。産卵期には水深20mよりも浅場にくる。
熊野灘から北の太平洋側、オホーツク海、日本海には希。
オホーツク海東部、カムチャツカ半島東岸、アリューシャン列島、アラスカ湾〜モントレー湾、天皇海山。

生態

基本情報

紀伊半島沖から北太平洋、北アメリカ大陸まで広く生息。古くから脂の多い魚として知られていたもの。
北洋漁業が開拓する以前はギンダラよりも知名度は高いものだった。
脂が強い魚ではあるが、脂自体が有毒ではなく、摂り過ぎがダメである。肝臓は食べないこと。良識的な範囲で食べるかぎり安全な魚である。
非常においしい魚だが、好んで食べる地域は限定的。特に小田原では寒い時期の「おしつけ」はなくてはならないもの。

水産基本情報

市場での評価 入荷は少ない。値段は安定しない。
漁法 釣り、底曳き網
主な産地 千葉県、北海道、福島県、神奈川県

選び方・食べ方・その他

選び方

味わい

旬/秋から春
鱗は薄く取りにくい。骨は軟らかく包丁が入りやすく、分解しやすい。
白身で柔らかくクセがない。脂が全体に混在して白濁する。とくに肝臓、頭部、腹部はしつこく感じるほど。
アブラボウズの脂は不飽和オレイン酸の一種グリセリド。良質の植物油に近い。グリセリドに弱い体質であるか、もしくは特に大量に食べない限り問題はない。
よくアブラソコムツやバラムツなどワックスを含む魚と混同されるが、アブラボウズは食べ過ぎない限り、食用として問題はない。
料理の方向性
体全体に脂が多量に混在する。頭部、内臓などはときに煮ると脂が浮き上がってくるほどだ。大形魚は原則的に三枚に下ろした左右の身のみ食べるべきかも。身は脂が多いせいもあって軟らかく、やや煮崩れしやすい。焼いても締まらない。

栄養

寄生虫

食べ方・料理法・作り方

アブラボウズの料理法・調理法・食べ方/ソテー(ステーキ、ムニエル)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、みそ漬け、祐庵焼き)、生食(刺身、ぬた)、揚げる(フライ)
アブラボウズのステーキ 切身に塩コショウする。ナツメグなども合う。ブロックにすると魚と言うよりも肉という感じがする。これを中火で全面焼き目をつける。ソテーすると表面が香ばしく、コーティングしたようになり、中はどろっと柔らかい。実にジューシーで筋が溶けてミルフィーユ状になる。うっとりするほどうまい。


アブラボウズの煮つけ 本種の基本的な食べ方だ。水洗いして皮付きのまま切身にする。頭部などは脂が強すぎることがあるので注意。湯引きして、残った鱗、皮目の滑りを取り。やや濃いめの甘辛味で煮たもの。軟らかくてとてもこくのある味。絶品である。
アブラボウズのみそ漬け みそ、みりん、砂糖、酒を合わせた地に2日つけ込んで焼き上げたもの。漬ける時間はお好みだが、面白いのはみそ味が脂の強さを緩和すること。上品な味になる。
アブラボウズの幽庵焼き(祐庵焼き) しょうゆ、酒、みりん同量を合わせた地に一日以上つけ込んで焼き上げたもの。
アブラボウズの塩焼き アブラボウズを焼くと、身から出た脂で表面がかりっと香ばしく、中がしっとりと仕上がる。身の脂の多さのために好き嫌いが出そうでもある。
アブラボウズの刺身 筋肉は繊維質にかけて独特の触感がするが、これは好き嫌いが出そう。軟らかくて、口のなかで脆弱につぶれて脂の甘さが放出される。魚らしいうま味は控えめだが、美味であることは間違いない。
アブラボウズのぬた 小田原などでは古くは刺身ではなく、酢みそで食べていたとも聞いたことがある。これは刻みネギと合わせて酢みそ和えにした「ぬた」。
アブラボウズのムニエル 塩コショウして、小麦粉を合わせてサラダ油もしくはオリーブオイルでソテーしたもの。バターを使うとより濃厚な味になるが、好き嫌いが出そう。ソースは身を取り出したフライパンにシェリー酒を入れて、塩コショウで味つけ、最後にレモンを搾り入れたもの。
アブラボウズのフライ アブラボウズの切り身に塩コショウ、パン粉をつけて揚げたもの。上品な味わいだが、後味が強く残る。少し脂の強さが残る。
アブラボウズのちり鍋 今回は昆布だしに塩、酒で味つけして煮ながら食べるという「ちり」。しょうゆ仕立てでも、みそ仕立てでもいい。身からたっぷりと脂が染み出してきて汁の表面を覆う。だしも濃厚な味になる。

好んで食べる地域・名物料理

沼津市(静岡県)●沼津魚市場(イーノ)には銚子などからたえず入荷がある。
年取魚 神奈川県小田原市では大晦日、正月の膳に、「おしつけ(アブラボウズ)」の塩焼き、煮つけを食べる。小田原市のスーパー、鮮魚店では師走に入ると、アブラボウズの切り身の値段はうなぎ登りとなる。

加工品・名産品


オシツケのみそ漬け 脂ののったオシツケ(アブラボウズ)を切り身にしてみそに漬け込んだもの。「八丁味噌」と「西京味噌」がある。焼くと層を作る身の間からうま味のあるジューがあふれ出してくる。 みその種類は好みの分かれるところだが、八丁味噌は初めて出会う美味だ。[牧屋 神奈川県小田原市]
オシツケのしょうゆ漬け 切り身をしょうゆ味の地につけ込んだもの。見た目ほど味が濃くはなく、白身のうまさが楽しめる。[魚國 神奈川県小田原市]

釣り情報

歴史・ことわざなど

田中茂穂のアブラボウズ 明らかに間違いであるが、今でもこのような誤解されている。〈脂肪に富んでいる為に、稍美味であるが、是を食すると、肛門から其の脂肪が不知不識の間に流れ出すこと、恰も蓖麻子油を飲んだ時のやうである〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)  注/よほどたくさん食べないとこのようなことにはならない。