アオバダイ

アオバダイの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
60cm SL 前後になる。全体に青灰色で非常に体高が高く、側扁する。背鰭の真後ろに黒い斑文がある。若魚、幼魚のときには褐色の縦に走る筋がある。[屋久島産 37cm SL ・1.6kg]
60cm SL 前後になる。体高があり、側扁する。黒く第二背鰭の真後ろに黒い斑文がある。若魚、幼魚のときには褐色の縦に走る筋がある。[撮影固体は種子島もしくは屋久島産]
黒く第二背鰭の真後ろに黒い斑文がある。若魚、幼魚のときには褐色の縦に走る筋がある。
下顎の前方には小さな歯が並ぶだけ。
舌と鋤骨に齒がある。
珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アオバダイ科アオバダイ属
外国名
英名/Westralian jewfish 台湾/葉鯛 中国大陸/灰葉鯛
学名
Glaucosoma buergeri Richardson, 1845
漢字・学名由来

漢字 青葉鯛 Aobadai
由来・語源 1945年以前の標準和名があることから、当時の魚類学者 Jordan et al. (1913) は研究個体を、基産地である長崎県以外に台湾からも採取した可能性がある。台湾、中国大陸で「葉鯛」、「灰葉鯛」、体が灰青色なので、「葉鯛」に青をつけたのではないか? と思う。『大隅諸島とトカラ列島から得られた薩南諸島初記録のアオバダイ』(畑晴陵 、高山真由美、本村浩之)も参考した。
buergeri リチャードソンは日本動物誌の川原慶賀の絵に基づき新種記載。小種名はハインリヒ・ビュルゲル(Heinrich Bürger)にちなむ。ビュルゲルは長崎でシーボルトの助手を務め、多くの標本をオランダに持ち帰る。テミングとシュレーゲルは日本動物記(絵は川原慶賀)でGlaucosoma の仲間としていた。『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)
■田中茂穂は「青葉鯛」。〈何地の称呼か不明である〉としている。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)。
■〈スズキ科アヲバダヒ属アヲバダヒ 臺灣、長崎から知られてゐる。〉とある。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
■蒲原稔治(1937)は高知市御畳瀬沖から得られた3若い個体(全長135〜175mm )を若い個体をスジアオバダイ(Glaucosoma fauvelii Sauvage, 1881)としていた。現在はアオバダイの若魚で、新参和名。
シノニム
Glaucosoma fauvelii Sauvage, 1881
Glaucosoma taeniatus Fowler, 1934
Glaucosoma magnificus

Richardson
ジョン・リチャードソン(Sir John Richardson 1787-1865 スコットランド)、博物学者、魚類学者(ichthyology)。
地方名・市場名
スジアオバダイ
サイズ / 時期若い個体 備考若い個体を別種であるスジアオバダイ(Glaucosoma fauvelii Sauvage)としていた。 

概要

生息域

海水魚。深海延縄で漁獲される。
山陰沖、長崎、[福島県相馬市原釜]、宇和海、土佐湾、九州南岸、鹿児島県本土南岸・上甑島・薩南諸島屋久島・種子島、尖閣諸島。
台湾南部、広東省、マレーシア・サバ州沿岸、オーストラリア北西岸。

生態

基本情報

西太平洋の熱帯域・亜熱帯域に広い生息域をもつ大型魚だ。台湾などでは比較的大衆的な魚で市場などでもお馴染みである。国内では鹿児島県島嶼部である屋久島・種子島以南で水揚げがあるが、非常に少ない。むしろ珍魚といっていいだろう。明らかに北上傾向にあるが、他の熱帯域の魚類同様、水揚げ量が増えるかなどは不明。上品な白身魚である。
珍魚度 国内では珍魚としてもいいのかも知れない。台湾では普通の食用魚。
台湾 台湾で漁獲量が多く、普通の食用魚である。台南の市場では普通に見られ、台湾特有の丸い包丁でたたき切っていた。

水産基本情報

市場での評価 非常に希な魚で一定の評価はない。大型はやや高値。
漁法 釣り
産地 鹿児島県

選び方・食べ方・その他

選び方

目が澄んでいるもの。触って張りのあるもの。

味わい

旬は夏から秋?
大型個体の鱗は硬く、鱗引きで取るよりも包丁ですき引いた方がいい。骨はあまり硬くなく頭も比較的簡単に割れる。
白身でクセがなくほどよく繊維質で身離れがいい。熱を通しても硬くならない。いいだしが出る。
くせのない上品な味わいであるが、やや淡泊。評価的にはぎりぎり4つ★。
すき引き 体長からは想像できないほど大きくなる。大型になると鱗が非常に硬い。鱗引きでやると鱗が飛び散るので包丁ですき引く方がやりやすい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

アオバダイの料理・レシピ・食べ方/蒸す(清蒸、酒蒸)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル、ポワレ)、煮る(鍋、煮つけ)、汁(みそ汁)、生食(刺身)、焼く(塩焼き)
アオバダイの蒸魚(清蒸) 頭部の身の味は体幹部以上に美味である。水洗いして徹底的に鱗を取る。取りにくいところは包丁でこそげ落とす。皿などに入れて酒を振り、強火で15分くらい蒸す。これにタレ(醤油・紹興酒・魚醬・砂糖、好みで八角を合わせて一煮立ちさせたもの)をかけ、ネギなどを乗せて煙が出るほど熱した油をかける。ほの甘いタレに蒸し上がって柔らかくなって上品な身をからめて食べると矢鱈にうまい。ご飯に合う。

アオバダイの酒蒸 頭部が大きいので、煮つけや蒸し物にしたい。頭部はていねいに鱗を取る。水分をていねいにとり、大皿に昆布を敷いた上に乗せる。上から酒をふり蒸す。蒸している途中にも軽く酒を振る。大型の頭部からは予想以上にたっぷり身がついている。皮も身も柔らかく味がある。ポン酢など好みのものをつけて食べて欲しい。
アオバダイの焼霜造り 透明感のあるきれいな白身ではあるが、やや味は単調。それを補ってくれるのが皮だと思う。ただし湯をかけて皮霜造にしても厚みのある皮は硬いのでバーナーであぶる。三枚に落として今回は背の部分の皮を上にしてバーナーであぶり、氷水に落として粗熱をとり、水分を拭き取って刺身状に切る。
アオバダイの刺身 水洗いして三枚に下ろす。血合いを切り、背の部分を刺身にする。透明感のあるきれいな刺身ではあるが、非常に上品であっさりした味わいである。反面、もの足りなくもある。
アオバダイのちり鍋 水洗いして刺身やソテーにして出たあらを集めて置き、大きめの部分は適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水に昆布を入れて出しを取る。酒・塩で味つけしたつゆで煮ながら食べる。いいだしが出て、身離れがよく身に甘みがある。
アオバダイの兜煮 本種の頭部は体幹部分に対して他に類を見ないほど大きい。水洗いして頭部を梨子割りにする。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり。酒・みりん・醤油・水を沸かした中で煮る。醤油は最初控えめにし、徐々に加えていく。頭部からは非常にうま味豊かなだしが出る。身や皮をこの煮汁にからめながら食べる。ご飯がすすむ。
アオバダイのあら煮 台湾の市場で聞いた料理法で唯一聞き取れたのが、日本語の煮つけだ。中国醤油で煮るのだとは思うが、ここではたまり醤油と濃い口醤油を使った。あらを適当に切り、湯通しして冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。水・砂糖・酒・濃い口醤油・たまり醤油を煮立てたなかで煮る。淡泊な味わいなので、強めの味付けにするとご飯に合う。
アオバダイのみそ汁 あらや切り落としを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。仕上げにショウガの搾り汁を振る。酒やだしなどは必須ではない。実に味わい深い汁になり、骨などについた身もうまい。ご飯に合う。
アオバダイのフライ 水洗いして三枚に下ろして皮を引く。血合い骨・腹骨を取り、切り身にする。塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水、溶き卵でもいい)をからめてパン粉をつけて上げる。くせのない白身で上げると身が豊潤になる。とても美味。
アオバダイの塩焼き 水洗いして大型は三枚に下ろし、中型は二枚下ろしにする。二枚下ろしは骨つきの方を切身にする。振り塩をして1時間以上寝かせてじっくりと焼き上げる。焼いても硬く締まらず、柔らかく出来上がる。皮目の香りがよく、やや淡泊な味わいであるがおいしい。
アオバダイのムニエル 淡泊な味の魚なので油と相性がいい。水洗いして三枚に下ろして皮を引く。切り身にして塩コショウして、小麦粉をまぶしてソテーする。ソテーしても硬く締まらず、豊潤に仕上がる。嫌みのない味わいである。
アオバダイのポワレ 水洗いして三枚に下ろす。三枚に下ろして皮付きのまま切り身にする。塩コショウして、皮目から多めの油でじっくり弱火でソテーする。皮に焦げ目がついたら返して、火が通ったら皿に盛る。火を止めて残った油にシェリーを加えてもう一煮立ちさせてソースとする。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど