ヨコシマクロダイ
45cm SL 前後、最大で60cm TL前後にになる。頬に鱗がある。背が黒灰色、腹が白く、背鰭・腹鰭・臀鰭の一部、胸鰭が赤い。尾鰭は全体に黒い(カグツチヨコシマクロダイは赤みがかっている)。
珍魚度・珍しさ ★★★ がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度
★★★★★ 知っていたら学者級
食べ物としての重要度
★★ 地域的、嗜好品的なもの
味の評価度
★★★★ 非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚類綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目フエフキダイ科ヨコシマクロダイ亜科ヨコシマクロダイ属
外国名
Humpnose big-eye bream 單列齒鯛、大眼黑鯛、月白(臺東)、大目黑格(澎湖)
学名
Monotaxis grandoculis (Forsskål, 1775)
漢字・学名由来
漢字 横縞黒鯛 Standard Japanese name / Yokoshimakurodai
由来・語源 『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)に新称とある。幼魚のとき〈体の背方は褐色で、下方は白く、背方には3条の幅狭白色の横帯があって……〉。「黒鯛」は国内で発見され和名がついたときタイ科で、成魚になると黒っぽいからだと思う。
〈スズキ目タイ科ヨコシマクロダイ属ヨコシマクロダイ〉『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
沖縄県の「ダルマー」は成魚に対する呼び名で、頭部が大きく目も大きいので達磨(だるま)を思わせるからだと思われる。
Forsskål ペール・フォルスコール(ペーテル・フォルスコール)。ヘルシンキに生まれる。『諸動物の記載』【DESCRIPTIONES ANIMALIUM』(PETRUS FORSSKÅL,1732-1763 CARSTEN NIEBUHR,1733-1815】。『コペンハーゲンの教授ペーテル・フォルスコールによって東方への旅行中に観察された哺乳類、鳥類、両生類、魚類、昆虫類および下等動物の記載。著者の没後、カールステン・ニーブールによって編纂さる付録として海路の薬用草本〔の目録〕と紅海の地図を付す』。紅海東岸の魚類をミナミヒメジ、バラハタ、オオモンハタ、ナミハタ、ナンヨウツバメウオ、トゲチョウチョウウオ、モンツキクロハギほか。デンマーク国王フレデリク5世が後援して博物学者のフォルスコールが率いた6人のアラビア探検の途中、1763年マラリアのためにイェリームの町(現イエメン)にて客死。
地方名・市場名
タイミー 参考 『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所 沖縄県伊良部島
ダルマー 備考 達磨に似ているため。 参考 河村雄太さん 場所 沖縄本島、八重山
タイミ 場所 沖縄宮古
概要
生息域
海水魚。浅い砂礫、岩礁域。
八丈島、小笠原諸島、硫黄島、南硫黄島、沖ノ鳥島、南鳥島、和歌山県串本、屋久島、トカラ列島、琉球列島、南大東島、尖閣列島。
幼魚/千葉県館山
台湾、東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島、インド-太平洋域。
生態
基本情報
主に屋久島、奄美大島以南に多い。水揚げなどを見ていても見かける機会が多く、沖縄などの浅海の魚のなかでも比較的漁獲量が多い方だと思う。
サンゴ礁にいる魚なのにくせがなく、とてもおいしい魚なので人気があり、高級魚でもある。
上質の白身で料理法を選ばないのも魅力的だ。
珍魚度 沖縄の高級魚である。珍しい魚ではないが沖縄等に行かないと手に入らない。
水産基本情報
市場での評価 鹿児島県諸島部、沖縄県が主。沖縄などでの競りで見かける機会が多い。やや高値。
漁法 釣り、刺突漁、定置網
産地 沖縄県、鹿児島県
選び方・食べ方・その他
選び方
触って張りのあるも。色合いの強いもの(退色していないもの)。
味わい
旬は不明。
鱗は硬いが取りやすい。皮は厚く強い。骨はあまり硬くはない。
真っ白な身で透明感が感じられる。
あらなどから実にうまいだしが出る。
栄養
危険性など
食べ方・料理法・作り方
ヨコシマクロダイの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造り)、煮る(まーす煮、煮つけ)、焼く(塩焼き)、ソテー(バター焼き)、揚げる(天ぷら、唐揚げ)
ヨコシマクロダイの蒸し魚(清蒸) 小型なら丸のまま大きいものは適当な大きさに切る。骨つき、頭部周りが合う。ていねいに水洗いする。鱗が残っているとダメなので徹底的に取る。水分をよくきり、皿に割り箸などを敷き乗せる。10〜15分蒸し、蒸魚鼓油もしくはタレ(醤油・紹興酒・魚醬・少量の砂糖)をかけて、場合によっては少し蒸す。これにねぎ、しょうがのせん切り、シャンサイ、などを乗せて煙が出るくらいに熱した油をじゅっとかけ回す。
ヨコシマクロダイの刺身 皮目はタイ科に近く、血合いがほとんどなく真っ白。これはメイチダイなどと共通するものでもある。やや単調な見た目にかかわらず、うま味が豊かでしかも嫌みがない。食感もいい。非常にうまい。
ヨコシマクロダイの焼霜造り 皮と皮下に味わいが感じられる。当然、皮を引かないで造るべきなのだけど、湯をかけても皮が硬く感じられる。むしろ皮目を炙った方がいい。水洗いして三枚に下ろし皮目をあぶって氷水に落とす。水分をよく切って刺身状に切りつけた。皮目の強い食感とうま味、身の上品で淡い甘味でとても味わい深い。
ヨコシマクロダイのまーす煮 水洗いして、頭部などだしの出る部分を使って、やや強めの塩水で短時間で水分を飛ばすように煮上げるのが沖縄県の郷土料理「まーす煮(塩煮)」だ。魚から一度出たうま味で煮た豆腐ともども言い知れぬうまさが感じられる。
ヨコシマクロダイの煮つけ(あら煮) 頭部やかまの部分を取っておき、湯通しして冷水に落とす。残った鱗やぬめりを流して、酒、しょうゆで煮る。酒・みりん・しょうゆでもいいし、しょうゆ・砂糖で煮てもいい。タイ科の魚にに似た味わい。上品で食べ飽きない味。
ヨコシマクロダイのバター焼き 大振りのものを切り身にして塩コショウして多めの油でかりっと香ばしくソテー。仕上げにマーガリン(バターでも)で風味づけしたもの。香ばしいなかに魚本来の甘味が感じられてとても美味。
ヨコシマクロダイの塩焼き フエフキダイ科はややうま味が少なく、淡泊だが、本種は皮目に独特の風味があって単純に塩焼きにしてもおいしい。身離れもよく、口の中で身のほぐれる感じもまたよい。
ヨコシマクロダイの唐揚げ 身のついたアラやかまを集めて置き、唐揚げにした。油で揚げることで小骨や鰭などが比較的かりっと香ばしく揚がる。ここでは揚げ上がりにヒバーツと塩を使ったが味つけはお好みで。
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
歴史・ことわざなど
ヨコシマクロダイの近縁種(ヨコシマクロダイ属)一覧
参考文献
協力/河村雄太さん(沖縄県石垣市)
『沖縄の漁具・漁法』(沖縄県漁業振興基金 編集沖縄県水産試験場)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本の海水魚』(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)