イカナゴ

代表的な呼び名コウナゴ

イカナゴの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
体長25センチ前後になる。紡錘形で細長い。受け口で下顎がつきだしている。腹鰭がない。画像は成魚。
3cm前後の稚魚。成魚よりも稚魚の方が食用としては重要。
珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★
これは常識
食べ物としての重要度 ★★★★
重要
味の評価度 ★★★
美味
分類
硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ワニギス亜目イカナゴ科イカナゴ属
外国名
Pacific sand lance
学名
Ammodytes japonicus Duncker and Mohr, 1939
漢字・学名由来

漢字 玉筋魚、如何子、以加奈古、鮊 Ikanago
由来・語源
〈東京ではコウナゴと云ひ、六月上総から来るものはコウナゴカマスと云い、佃煮ではカマスジャコとして賣っている。九州北部、山口縣ではカナギ、関西でイカナゴと云い、大阪や神戸で本種の幼魚をカマスゴと云う〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
大言海 〈語源、詳ナラズ、如何な子ノ義ニテ、梭子魚ト混ジテ、知ラレヌ意ナリナド云フ説アリ〉。
魚鑑 〈状ひしこ. かます雑子(ざこ)に似て、小さく脂多し、三四月の頃、これあり、このものにて、いかなご醤油を作る。〉
和漢三才図会 〈玉筋魚 俗に以加奈古という。また加末須古ともいう〉、〈『三才図会(明の時代1607年にでた中国の絵入りの時点のようなもの)』に「玉筋魚は身体は丸くて箸のようである。やや黒くて鱗がなく、両目店は黒い。菜の花の開くときになると子を持って肥えている。これを菜花玉筋という」〉。漢字、玉筋魚は中国明の魚でイカナゴとは限らない。江戸時代の本草の世界は中国に習うということが多く、こじつけも少なくない。
■ 「いかり魚=カマス」の幼魚の意味。地方の呼び名に「かます子」とあるのと同じ。「いかり」とは「いかる=とがる」の意味で栗の毬(いが)と同義語。
■ イカナゴの小さいものが、いかなる魚の子であるかわからないため、「如何子」の意味。
■ 〈い〉は語声強調の接頭語、〈かな〉は古語で糸のように方添いもの、〈ご〉は接尾語。『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)

地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。内湾の砂地。
北海道全沿岸、陸奥湾、宮城県〜鹿島灘の太平洋沿岸、東京湾(希)、伊勢湾周辺、瀬戸内海、山形県〜九州北岸の日本海沿岸。
朝鮮半島全沿岸、渤海、黄海、東シナ海。

生態

産卵期は12月〜5月くらいまでで北ほど遅い。
本州では冬に産卵する。
孵化した稚魚は成長が早く、一年で13センチほどにもなる。
そして3、4年で「めろうどサイズ」である20センチを超える。
主にプランクトンを食べている。
低水温に適応しており水温が高くなると砂にもぐり込み夏眠する。

基本情報

九州以北に生息している。稚魚から成魚まで水揚げされ様々に利用されている。
鮮魚としてではなく、加工品として一般的なもの。ちりめん、釜揚げ、佃煮などは都市部のスーパーマーケットなどでもよく並んでいる。小さいものほど値段が高く、大きくなると安い。
大型はむしろ飼料などになる。
珍魚度 鮮魚は少し努力しないと手に入らない。

水産基本情報

市場での評価 東北などでは成魚がスーパーなどの店頭でも並び、流通する。安い。
稚魚は鮮魚として出回ることは希。
加工品はちりめん、釜揚げなど比較的関東でも見かけるもの。値段はカタクチイワシの稚魚と比べると安い。
漁法 巻き網
主な産地 入網、吾智網
稚魚/兵庫県、三重県、愛知県、茨城県
成魚/宮城県、福島県、岩手県、北海道
明石海峡でのイカナゴの新子漁 2月の解禁で一斉に海峡に出て2艘でイカナゴを引く。協力:明石浦漁業協同組合
イカナゴの水揚げ 明石海峡でとったイカナゴ新子はすぐに水揚げされる。時間との闘いである。協力:明石浦漁業協同組合

選び方・食べ方・その他

選び方

稚魚は透明感のあるもの。成魚は触って張りがあり、赤銅色であるもの。白っぽくなったものは古い。

味わい

春の稚魚を尊ぶ。大阪、兵庫、岡山などでは一斉に「くぎ煮」を作り美味。また、しらす干し、ちりめん干しもこの頃が美味。成魚になると、古背、メロウドといい脂が強くなり、丸干し、ときに煮つけなどになる。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

イカナゴの料理法・レシピ・食べ方/煮る(佃煮、塩ゆで)、汁(すまし汁、卵汁)、揚げる(かき揚げ、天ぷら、唐揚げ)
イカナゴ(めろうど)の刺身 20cmを超えるイカナゴを東北では「めろうど」と呼ぶ。脂が強く、養殖魚のエサなどになるが、これではもったいない。刺身にして美味。ただし食べ過ぎぬこと。
ふるせの塩ゆで イカナゴの二年ものを「古背(ふるせ)」という。これを塩ゆでしてポン酢で食べる。

好んで食べる地域・名物料理

いかなごの刺身 香川県庵治町(現高松市)、小豆島。10センチほどのイカナゴを三枚に下ろして皮を引き二つ折りにして皿に並べる。しょうゆとわさびで食べる。
棒いり 香川県庵治町(現高松市)。酒、しょうゆ、砂糖、水の地にイカナゴを浸し、唐辛子を少量入れて煮たもの。
くぎ煮 大阪府、兵庫県、岡山県。酒、砂糖、しょうゆ、水などで作った地で稚魚を甘辛く煮上げたもの。煮上げた姿が古釘(ふるくぎ)のようであることから、この料理名となった。[嵜 兵庫県明石市本町]
げんごべぇ(げんごべい) 兵庫県明石市の郷土料理。くぎ煮サイズよりも少し大きい7cm前後のちりめんを鍋などで香ばしくから煎り、甘辛いタレとからめたもの。イカナゴ版田作(たづくり、ごまめ)といったもの。[嵜 兵庫県明石市本町]
古せのくぎ煮(ふるせのくぎに) イカナゴの二年ものの大きく育ったものを甘辛く煮あげたもの。実に軟らかくて美味しい。[嵜 兵庫県明石市本町]

加工品・名産品

くぎ煮(醤油煮) 兵庫県、大阪府、岡山県などで作られる佃煮。春になるとイカナゴを求めて魚屋に行列ができる。家庭の味でもあるが現在では加工品ともなり、全国的に出回っている。砂糖、醤油、みりん(酒の場合も)で新子(その年に生まれた稚魚)、ふるせ(2年物)を煮たもの。
煮干し 稚魚をゆでて干したもの。関西の「ちりめん」のこと。
いかなご醤油(いかなごしょうゆ) 香川県で作られるイカナゴの魚醤。成魚となったイカナゴを塩漬けし、1ヶ月〜5ヶ月寝かせて濾過したもの。能登半島で作ったスルメイカ、マイワシの「いしる(いしり)」、秋田県でマイワシ、ハタハタで作られている「しょっつる」、香川県でイカナゴから作られている「いかなご醤油」を日本三大魚醤という(ただし初出や誰が言い始めたかなどは不明)。
明石のイカナゴ漁 2023年は3月4日に解禁。このところ不漁が続いているが、それでも恒例のようにくぎ煮用を求める人の列ができる。
ちりめん は小さなものの方がうまいし高い。これも脂があり、カタクチイワシと比べるとクセがある。兵庫県、愛知県ほかで作られている。
釜揚げ イカナゴの新子を塩ゆでしてザルなどに上げたもの。ようするに「ちりめん」のように干していないもの。
かますごの釜揚げ 新子が成長したものを「かますご」という。これを塩ゆでして干していないもの。イカナゴならではの風味や強いうま味が楽しめる。適度に脂が抜けているので食べやすい。
生炊ちりめん ちりめんを佃煮にしたもの。
かなぎの干もの ちりめんなどにするには大きくなりすぎたものを、干したもの。濃厚な旨みがあって、非常にうまい。「かなぎちりめん」ともいう。[福岡県福岡市]
メロード丸干し 20cmを超える大きさのイカナゴ、「めろうど」を丸干しにしたもの。強い脂の風味と強いうま味で好き嫌いがでそう。あまりたくさん食べられない。[大和水産 岩手県下閉伊郡山田町]
くぎ煮 煮魚のたれ これを煮立たせ、生のイカナゴを入れると簡単に「くぎ煮」が作れる。ほかに煮魚を作るのにも利用できる。[坊勢漁業協同組合 兵庫県姫路市家島町坊勢]

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

アブラメ
参考文献 場所中国地方 
アブラウオ
参考文献 場所丹羽、丹後 
オオナゴサ
参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府宮津市 
イナゴ
参考文献 場所京都府敦賀 
ウラカナギ
参考文献 場所佐賀県唐津 
イカナゴ
備考標準和名 場所兵庫県明石・福良 
カナギ
場所福岡県福岡市 
コウナゴ[小女子] コオナゴ[小女子]
場所関東、愛知県、京都府丹後地方 
シラス
サイズ / 時期稚魚 場所宮城県釜石、大槌町、宮古 
ボーコーナゴ
サイズ / 時期親魚 場所愛知県 
メロード メロウド メロド
サイズ / 時期大型 場所宮城県釜石、大槌町、宮古 
ヨド
場所宮城県石巻魚市場 
コオナゴ
コオナゴカマス サイズ / 時期六月上総から来るもの 
備考東京ではコオナゴと云い、六月上総から来るものはコオナゴカマスと云い、佃煮としてはカマスジャコと云って売っている。 参考『図説有用魚類千種 正』 場所東京 
カマスゴ[梭子魚子]
備考これはシュロや藁で編んだ叺(かます)に入れて運んだため。 参考『広辞苑』 場所大阪 
コナ シンコ[新子]
備考関西、兵庫などでは生まれたばかりのものをシンコ。新子のなかでも漁期初めの非常に小さいものはコナ。 場所関西、兵庫 
フルセ[古せ]
サイズ / 時期成魚 場所関西、兵庫 
オオナゴ
サイズ / 時期成魚 参考聞取、丹後地方で使われている魚名方言集 場所北海道、京都府伊根 
ゴウナゴ コウナゴカマス コナゴ スブドウシ
参考文献より。