ワラスボ

Scientific Name / Odontamblyopus rubicundus (Hamilton,1822)

ワラスボの形態写真

体長50センチ前後になる。細長く、ウナギに似ている。腹鰭が吸盤状になり、鱗はほとんどなく、表面は粘液でぬるぬるしている。目は退化して表皮下に埋没している。歯は鋭いが触ってもあまり痛くない。
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体長50センチ前後になる。細長く、ウナギに似ている。腹鰭が吸盤状になり、鱗はほとんどなく、表面は粘液でぬるぬるしている。目は退化して表皮下に埋没している。歯は鋭いが触ってもあまり痛くない。目は退化して表皮下に埋没している。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ワラスボ属

    外国名

    学名

    Odontamblyopus rubicundus (Hamilton,1822)

    漢字・学名由来

    漢字 藁素坊
    由来・語源 福岡県柳川市での呼び名。干すと「わらすぼ」のようになるため。「わらすぼ」は別名「わらしべ(藁蘂)」。干した稲をたたいたもの。

    地方名・市場名

    ドウキン
    場所長崎県諫早 
    ジンキチ
    場所佐賀県 
    スボ
    場所佐賀県、有明海周辺 備考それを干したものをワラスボ。 
    ワラズボ
    場所福岡県柳川市 

    生息域

    干潟、内湾。有明海、八代海、朝鮮半島、中国、インド。

    生態

    泥質の干潟に穴を掘り深さ30センチ前後にところにひそんでいる。
    エサはゴカイなど環形動物、甲殻類など。
    産卵期は6月〜9月。

    基本情報

    有明海、八代海などに生息するハゼの仲間。
    古くはたくさんいて干潟に穴を掘る習性から、護岸を破壊する害魚とされたこともあるようだ。
    当時は主に乾物に加工されていて、その形が「わらしべ」に似ているために、この名がある。
    現在では有明海の特産魚で資源の減少が甚だしい。
    諫早湾締め切り、埋め立てによる影響が心配な生物のひとつでもある。
    鮮魚としては煮つけなどになる。

    水産基本情報

    市場での評価 主に有明海周辺で流通する。やや高値。また乾物は年間を通して売られていて、非常に高価。
    漁法 あんこう網(敷網漁法のひとつ。干満にあわせて潮にのって移動する甲殻類、魚類をとる)、こうもり網、押し網(手押し網、ワリモチ網/2本の竹竿にかけた網で三角形のすくい網を作り魚をすくう)、すぼ掻き(わらすぼ掻き/竹の柄の先に鉄製のわらすぼ掻をつけて泥の中にいるワラスボを引っかけてとる)。涼気は5〜10月。
    産地 長崎県、佐賀県、福岡県

    選び方

    表面の粘液が透明なもの。真っ白なものは古い。

    味わい

    旬は春〜秋
    鱗はほとんどなく、気にならない。
    白身だが赤みを帯びている。熱を通すとしまる。
    肝の味がいい。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    調理法(生)
    煮つけ、刺身

    煮つけ 基本的な料理法だと思われる。骨が気になるが、身がしまりなかなか美味。とくに肝は味わい深い。
    刺身 たぶん新しい食べ方だろう。透明感のある白身だが全体に赤みを帯びている。あまりうま味を感じない。食感がいいとも言いがたい。
    調理法(焼きわらすぼ)
    煮つけ

    煮つけ 素焼きしたものは、甘辛く煮つけにする。素朴な味。
    調理法(干したもの)
    素揚げ、焼く、煮つけ

    素揚げ からからに干したものは「わらすぼ」という標準和名の起源。木槌などでとんとんとたたき低温の油でからりと揚げる。
    焼く まな板などの上にのせて、木槌などでよくたたく。これを短時間あぶって食べる。香ばしく、噛むとうま味が出てくる。
    煮つけ 甘辛く煮てもいいし、大根、じゃがいもなどと煮てもいい。実にいいだしがでる。
    調理法(こぶつき)
    ご飯

    ご飯 「こぶつき」はご飯にかけて食べる。
    ワラスボの煮つけワラスボ(生)の煮つけ
    基本的な料理法だと思われる。骨が気になるが、身がしまりなかなか美味。とくに肝は味わい深い。
    ワラスボの刺身ワラスボ(生)の刺身
    たぶん新しい食べ方だろう。透明感のある白身だが全体に赤みを帯びている。あまりうま味を感じない。食感がいいとも言いがたい。
    焼きワラスボの煮つけ焼きワラスボの煮つけ
    素焼きしたものは、甘辛く煮つけにする。素朴な味。
    干しワラスボの素揚げ干しワラスボの素揚げ
    からからに干したものは「わらすぼ」という標準和名の起源。木槌などでとんとんとたたき低温の油でからりと揚げる。
    干しワラスボの炙り干しワラスボの炙り
    まな板などの上にのせて、木槌などでよくたたく。これを短時間あぶって食べる。香ばしく、噛むとうま味が出てくる。
    干しワラスボの煮つけ干しワラスボの煮つけ
    甘辛く煮てもいいし、大根、じゃがいもなどと煮てもいい。実にいいだしがでる。
    こぶつきご飯こぶつきかけご飯
    「こぶつき」はご飯にかけて食べる。

    好んで食べる地域・名物料理

    福岡県柳川では刺身、煮つけなどにする。古くは塩ゆで、みそ煮。

    加工品・名産品

    ワラスボの乾物わらすぼ
    有明海周辺。「すぼ(ワラスボ)」の乾物。最近では高価であるため、そのままあぶる、素揚げにするなどして食べられていることがほとんど。古くは、だし、だしをとった後は煮つけ材料として利用することもあった。
    焼きわらすぼ焼きすぼ(焼きわらすぼ)
    ワラスボを針金にさして丸のまま焼いたもの。甘辛い地で煮て、漬け込む。[泉谷千代子さん 佐賀県鹿島市]
    こぶつき 福岡県柳川市他、有明海周辺。佐賀県では「もくさい」とも。「簀の上で天日に干してから臼で骨ごと粉にし、スイノーでふるって粉をとり、その粉を飯にかけ醤油をかけて食べる」(『有明海生活誌-倉本幸の半生から-』(1991 民俗文化第3号 野本寛一))。乾物を粉末状にしたもの。

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    有明海のエイリアンと称されることがある。

    参考文献・協力

    『有明海 自然・生物・観察ガイド』(菅野徹 東海大学出版局)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)
  • 主食材として「ワラスボ」を使用したレシピ一覧

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