第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
四十七巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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セッパリカジカ 2005年11月17日 231
「カジカ」と下についているが、カジカ科の魚ではなく、ウラナイカジカ科の体表がぐにょぐにょした魚である。主に東北でとれるもので鍋やみそ汁にして美味である。皮の部分がグルグニョっとしているので刺身にする気にはなれないでいた。これを考えた挙げ句に表面を焼き霜にすることにして、そのまま『市場寿司 たか』に持ち込んだ。焼き霜というのは本来皮を生かすための料理法なのだが、この皮に水分というかゼラチン質が多いのだろうか、熱を加えるとぐ〜んと縮んで見る影もない。それで素直な握りに。これが思ったよりもうまい。少し焼いたためか身に甘みがある。また白身で弾力のあるのもいいではないか。ふんふんと勝手にうなずきながら食べていたら、そこに「味は今イチじゃないの、コレ」とたかさんからの評価。確かに時々食べたいとも思えないかな。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
赤螺/アカニシ 2005年11月18日 232
 名作と言われる日本映画に『赤西蠣太』というのがある。これは明らかに干潟や河口に普通に見られる貝、アカニシとカキをとってつけたようにわざとらしく名としたもの。主役の赤西蠣太は伊達藩きっての醜男とされている。監督の伊丹万作がいかな考えでアカニシに目をつけたのかわからないが黒っぽくてけっして見た目のよくないアカニシが実にしみじみいい味だったりするのだから、意を得たりかな。アカニシは酒と水を合わせたもので蒸し煮。それを和え物や酢みそで食べる。これを握っても当然いいはずだろうから、素直な気持ちで『市場寿司 たか』に持ち込んだ。これが素直にはうまいと思えないのだから困ったモンである。アカニシは普通、酢みそや合わせ酢が合う。と言うことはこれ自体はあまり個性がないのだ。「なんだか貝は貝だな」なんて不得要領なことを言う、たかさんに、「そんなもんですな」としか答えようがない。帰宅して、アカニシを山椒塩(山椒と塩をすり鉢で混ぜ合わせた)とスダチで食べてみるとググ〜ンといい味わいになった。これを握りに使うのだった。
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白魚/シラウオ 2005年11月19日 233
 芭蕉の「曙や白魚の白きこと一寸」や、また江戸時代には白魚を送り合う風習があったというが、この「白魚」は明らかにシラウオのことでハゼ科のシロウオではないだろう。シラウオは川をかなり上手まで遡上するようで利根川などでは支流の黒部川などで今もとれている。すなわち江戸の庶民の暮らす神田、上野下谷、また隅田川を渡って深川や本所などでもお馴染みの鮮魚であったのだ。このシラウオは寒くなってくると出てくる。そして初夏となって終わるのだ。これを4〜5本束ねて海苔帯をかけるのは江戸前の古くからの技である。木枯らし一号が吹いた日に無駄話に立ち寄ったのに『市場寿司 たか』で出してくれたもの、それがシラウオである。シラウオの苦みは旨味と同時に感じられる。当然苦みには甘みが伴っているのですし飯の糖質と結びついて奥の深い味わいが口いっぱいに広がってくるのだ。「冬来たりなば春遠からじ」という味だな。
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伊勢海老/イセエビ 2005年11月20日 234
 秋になるとイセエビが解禁となる地域は多い。そして初冬は盛りではないか。我が国でとれるエビでももっとも高価なのがイセエビである。それではもっともうまいのか? と、これが旅館などで刺身となって出てくることがある。これが一向にうまくないのだ。実際に刺し網の漁師さんに聞いても「食べるならみそ汁がうまいな」なんて言ってくるのだ。そのみそ汁はもちろん間違いなく凄い味。汁も身も甘みがありとても筆舌に尽くせないものだ。ただ、イセエビを握りにするなら生も試さなくてはダメだろう。ちょうど入荷してきたイセエビを締めて身を掻き出してぴくぴくする身を持ち込んだのが当然『市場寿司 たか』なのである。「なんだこれは、へたくそだな」とぐちゃぐちゃになった身に驚いた、たかさん。なんとか握って見てくれたものの、食べてみて少しもうまいとは思えないのだ。いや、当然、うまいことはうまい。でも王様なのであるエビの、それがこんなものだろうか? 考えた挙げ句に熱湯のなかで数秒しゃぶしゃぶして氷水に受けて、水気をとって握りに。これが素晴らし〜い。甘みが強くてすし飯と合わさってもっと甘みが増すのだ。そしてエビの風味。「キロ一万だろうが二万だろうがうまいものはうまい」のだ。
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アカイカ 2005年11月21日 235
 茨城で「紫いか」、伊豆なんかでは「あぶらいか」と呼ばれるのがアカイカである。「こんなイカなんて値段はつかないでただ同然だったんだよ」、真鶴漁港で地元の『栄寿司』さんが漏らした。そんなアカイカが近年、人気抜群なのだ。これを開いて干物にすると大きいし、当然、身が厚く、そして柔らかい。当日の干物屋では予約に足りないと大慌てしていたほどだ。「でも刺身はだめだね。うまくもなんともない」、干物を干しながら、おばちゃんが手を横に振って笑う。そんなにまずいのだろうか? 持ち帰った刺身を食べて「こりゃアカン」と思い知らされる。なにしろ味がないのだ。それでは煮いかにするしかないと寿司職人の渡辺隆之さんにお願いした。これは決して悪くはない。悪くはないがうまくもない。もっと甘辛く味を含ませた方がよかったのか安い蒲鉾を食べているような気分になった。
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