寿司図鑑 千 目次へ!
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アカムツ 2005年11月12日 226
市場にあって高値安定なかなか手が出ない魚が2種ある。それがキチジ(きんき)とアカムツである。ともに緋色の鮮やかな色合い、皮下にべったりと脂をためているのも、棲息するのがやや深海というのまで似ているのだ。特に日本海側で珍重される魚で新潟や山形などでは「のどくろ」と呼ばれている。握りにしてうまいのも定評があって、あまりにも素直に高級魚を持ってきたので、たかさんも拍子抜けしたようにあっという間に4かんの握り。一二の三で食べて、「やっぱり、うまいものはうまい」とたかさん。なんか言ってみろというので、皮下に脂があって、これが甘みを作り出している。そしてなにより身にある旨味、そして適度な柔らかさ。当然、すし飯ともすんなり馴染んでトロリと喉を滑っていくようだ。と言うのも無駄口だな。「うまいものはうまい」のだった。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
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オオマテガイ 2005年11月13日 227
今時、市場で「まてがい」と呼ばれているのはオオマテガイとアゲマキのことだ。アゲマキを「まてがい」というのはちょっと見当違いだが本種は正真正銘のマテガイの仲間。細長く貝殻が薄くもろいマテガイと違って、こちらはややずんぐりと太く貝殻も厚い。その分、活けで運んでも強いのか、秋から春にはいいのがどんどん入荷してくる。産地は主に山口県である。これを貝殻から出して軽くゆがく、そして水管の部分と、足の部分を分けて握りにするのだ。これがなかなかイケルのだ。主に煮たり、焼いたりする貝なのは生がうまくないためだ。それが火を通すと甘味が出る、その甘みと身の食感、そして貝特有の風味とで適度にすし飯と抗う、そしてほんの瞬間の抗いの後に飯と馴染んで口中を過ぎていくのだ。1匹で2かんの握り、そして水管と足は食感も美味さも違っている。その違いも味わいの内である。
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でんでん/オオメハタ 2005年11月14日 228
知る人ぞ知るうまい魚というのはあるもので、コヤツもそうである。沼津ではワキヤハタ、ナガオオメとともに「でんでん」というのであるが、いかなる意味かは見当尽きかねる。小さなものは煮つけや、塩焼き、干物材料になり、大きなものは当然、刺身になる。この刺身がいいのだ。「このところ大きいのが少ないんですよ」と沼津魚市場の仲買、菊地利雄さん(沼津でもっとも地魚を知る)から聞いているが、大きいのはなかなか見られない。とれたらお宝である。そのお宝まではいかないが、やや大振りのものを握りに仕立てる。「いや〜、上品でいいあじだね」と言うのは『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん。確かに、口に入れた途端に来るのは微かな旨味、それから甘みがツンと過ぎ去って適度な柔らかさにすし飯が混合する。これならちょいと5、6かんいける。
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瀬戸鯛/セトダイ 2005年11月15日 229
今のところ関東の市場では見ていない。ありきたりな外観の目立たない魚なのだけれど、意外に珍しいものなのだ。食べたのはこれで3度目、そして今回のセトダイは広島県倉橋島からきたもの。まさに瀬戸内海から来た「瀬戸鯛」である。まとまって来たので塩焼きに、煮つけに、刺身にと食べてみて、その生の味わいにピンとくるものがあった。身の味わいに独特の風味が感じられるのだ。それを寿司職人の渡辺隆之さんに味わってもらって、握りに仕立ててもらった。やはり握りは絶品だった。微かなクセがすし飯と混ざって握りに個性を生み出してくれているのだ。このやや磯臭いような味わいはメバルにもあるもの。そして身の旨味はメバルよりも強く、甘みもある。「握りネタとして時々欲しくなる魚かな」というのが、たかさんの評。宜なるかな。
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クロガレイ 2005年11月16日 230
冬の到来とともに市場に山積みになるのが北海道からの「黒がれい」。この「黒がれい」にはクロガシラガレイとクロガレイがあって、いつも両種混ざり合って入荷してくる。どちらも主に煮つけ用。お総菜魚としての価値しか認められていない。それをあえて握りに仕立ててみた。「普通のカレイだね。見た目はマコやマガレイとほとんど変わらないよね」と寿司職人のたかさんの言うとおり、もっともカレイらしいカレイである。それを握りにしてみて、その無個性な味わいにがっかりした。寿司ネタというのは、魚自体の個性が必要なのだ。例えば今ではすっかり主役級であるマコガレイにある、微かな日向臭さ、また旬の頃の旨味。そんなものかけらもないのだ。「味は普通」だと、子供っぽく、たかさんが笑うが、口の中にはすし飯の味わいだけが浮き上がったままだ。まあ普通だな! 残りは煮つけにするのだ。
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