サクラマス

Scientific Name / Oncorhynchus masou masou (Brevoort, 1856)

サクラマスの形態写真

体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[宮城県気仙沼産3.9kg]
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体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[宮城県気仙沼産3.9kg]体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[青森県下北半島産 33.5cm・610g]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区真骨亜区正真骨下区原棘鰭上目サケ亜目サケ科サケ属

    外国名

    学名

    Oncorhynchus masou masou (Brevoort, 1856)

    漢字・学名由来

    漢字 桜鱒 Sakuramasu
    由来・語源 北海道、秋田県などでの呼び名。サクラの咲く時期にたくさんとれるため。川を遡上するため。古くは単に「鱒(麻須 マス)」。
    サクラマスの遡上は本州では走りは2月から、主に3月から6月まで。
    北海道では4月頃に始まり、7月くらいまで。
    サクラマスの「とれ始める(沿岸により、川を上る)時期」、もしくは「その地域の人たちがサクラマスがとれるようになったのだ、と思う時期」とがサクラの開花前線が重なる。
    各地での呼び名を調べると、「桜鱒」という地域は生息域全域にわたるのは、この桜の開花前線に重なるためだろう。

    地方名・市場名

    生息域

    淡水→海水→淡水[サーモンタイプ]。
    日本海では山口県以北、太平洋側では静岡県以北の本州、大分県をのぞく九州、[鹿児島県南さつま市笠沙]。
    日本海、オホーツク海。

    生態

    ■ 河川での仔魚期には昆虫や環形動物などを食べる。降海後はプランクトン、イカナゴなど、成長とともにイカ、魚類、オキアミなどを捕食する。
    ■ 河川に回帰(かいき もどってくる)するのは南で早く、北でおそい。本州では3月頃から、北海道では4月頃より川を上り始める。
    ■ 産卵期は8月下旬〜10月上旬。卵は11月、12月に孵化。
    ■ 稚魚は上流域から中流域に広く分散し、淡水で1年間過ごし、翌春1歳となって降海する。
    ■ 日本海、オホーツク海、北太平洋に分布して、1年海で過ごす。
    ■ 産卵翌年2歳の初夏(6月〜7月、もしくは9月〜10月)にまた川に戻り遡上する。
    ■ 川で3〜4か月すごし、秋に産卵。産卵後死んでしまう。
    ■ 寿命は3年弱。
    ■ サクラマス、ヤマメ、サツキマス、ビワマス、タイワンマスをサクラマス5型(亜種)。これにイワメを加えるという考え方もある。
    ■ サクラマスには降海型と、河川に残って海にくだらない陸封型がある。ヤマメ、アマゴは陸封型。今回のサクラマスは降海型のこと。

    基本情報

    日本周辺に多いサケ科の魚。古代より、単に「鱒(ます)」というと本種のことになる。「鱒(ます)」とは本来種名であって、それ以外のないものでもない。標準和名のヤマメは同種で陸封型。またアマゴ・サツキマスは亜種。アマゴ・サツキマスよりも生息域が北にある。サケ属の中でも重用種で、養殖も行われている。
    日本海や東北以北の太平洋側では食文化的にもとても重要な魚だ。本種ではサケよりも重要だったかも。祝祭日などに食べられることもある。高級魚である。
    珍魚度 普通の食用魚。ただし高級魚なので消費地の普通のスーパーなどでは手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 冬に市場で見かけるようになり、春から初夏に入荷量が増える。値段は高値安定。1キロ以上の個体はキロあたり2000円を下回ることはあまりない。大きいほど値がはり、特に体高のある「板マス」は非常に高価になる。
    漁法 流し網(刺し網)、延縄
    主な産地 北海道、青森県、山形県、新潟県、秋田県、岩手県
    年間1000トンあまり、サケ科魚類ではもっとも漁獲量が少ない。
    養殖は行われていないが、人工孵化、稚魚生産が行われていて、放流されている。


    板マス 非常に体高のある肥満したタイプ。普通の体形の個体と比べて脂が豊か。非常に高価でもある。

    選び方

    銀色に輝いているもの。鰓が鮮やかに赤いもの。

    味わい

    旬は冬から春
    鱗は小さくて弱く取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨は軟らかい。細い骨が血合い以外の部分にもある。いわゆるサーモンピンクで、熱を通しても硬く締まらない。サケ科特有の風味、臭味がある。
    料理の方向性
    軟らかく、甘味がある上に強いうま味もあるが、一度凍らせてから生食するべき。皮は硬いので焼く、煮る場合にはついたまま、ソテー、揚げる場合には取るほうがいいと思われる。
    身色 サケ属の中でも赤が一際鮮やかで身が緻密である。触ると脂が身に混在しているので柔らかい。

    栄養

    危険性など

    日本海裂頭条虫(サナダムシ/扁形動物門条虫綱多節亜綱擬葉目裂頭条虫科)。はっきりした症状はない模様。アニサキス寄生の恐れもある。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    サクラマスの料理・レシピ・食べ方/ソテー(ムニエル)、焼き物(塩焼き、幽庵焼き、西京漬けなど)、生食(刺身、マリネ)、揚げる(フライ)、煮る(煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁)

    サクラマスの刺身(ルイベ) 水洗いして三枚に下ろして小骨を抜き、腹骨をすく。冷凍庫で24時間以上凍らせたものを半解凍して、皮をはぎ刺身にしたもの。比較的低温で冷凍すると解凍しても食感が心地よく、むしろ甘味、うま味が増して非常に美味である。写真は黒コショウと岩塩、ライム。わさび醤油でも辛子酢みそでもお好みで。

    サクラマスのマリネ 24時間以上冷凍した上身を白ワイン、白ワインビネガー、砂糖、塩、クールブイヨンを合わせたものでマリネしたもの。野菜やハーブなどはお好みで。サクラマスの繊細で上質の味わいを楽しめる。
    サクラマスの塩焼き 水洗いして三枚下ろしにして振り塩をする。1時間以上寝かせて、じっくりと焼き上げる。サケ科の独特の風味が生きていてとても味わい深い。これが嫌いなら仕上げに酒を塗って焼き上げるといい。身自体に豊かな旨味があり、白いご飯にもとても合う。
    サクラマスの西京焼き 三枚に下ろして切り身にする。白みそで漬け込むときには振り塩をして少し寝かせて表面にでてきた水分を拭き取る。白みそ(みそはなんでもいい)とみりんを合わせたものに漬け込んだもの。1日くらいで食べられる。みそとの相性がよく美味。
    サクラマスの蕗の薹みそ焼き 蕗の薹みそは蕗の薹を適当に刻み、油でいためて合わせみそ(みそ・酒・砂糖)を合わせて練り上げる。これを素焼きにして切り身にのせて焦げ目がつくまで焼く。旬のものを合わせたもので、粋な味わいである。

    サクラマスのムニエル 小振りのサクラマスを水洗いする。三枚に下ろして腹骨、血合い骨、小骨などをできるだけ抜く。塩コショウして多めの油でソテー。仕上げにマーガリン(バター)としょうゆで味つけする。表面はかりっとして中はしっとりとして甘味と独特の風味がある。とてもうまい。

    サクラマスのフライ サケ科の定番的な料理だ。三枚に下ろして血合い骨や腹骨を取る。切り身にして塩コショウしてパン粉をつけて揚げたもの。揚げることで適度に身が締まり、サケ科らしい風味が逆に生きてくる。
    サクラマスの煮つけ 水洗いして二枚に下ろし、骨つきの方を切り身にする。湯通しして冷水に落とし、霜降りにして表面のぬめりを流す。水分をよくきり、酒・砂糖・濃い口醤油・たまり醤油(なければ使わなくてもいい。)が湧いた中に入れて煮上げる。たまり醤油を使うをこくが出る。煮染めないで煮汁をつけながら食べる。
    サクラマスのあら煮 ここではあらを使った。2〜3キロになるとあらがたっぷりとれる。これを湯通しして冷水に落としてぬめり、残った鱗などを流す。これを酒・砂糖・しょうゆ・水の地で煮上げる。甘味はお好みで、砂糖は入れなくてもいい。身離れがよく本種本来の味わいがあってとてもおいしい。

    サクラマスのコンフィ 三枚に下ろして皮を引く。強めの塩をして一日寝かせ、耐熱性のビニールにオリーブオイル、ローリエとともに入れて65度・1時間で低温調理。非常に軟らかく、サケらしい風味も感じられ、しっとりとして甘味がある。ハーブ類、香辛料をうまく使うとより美味。
    サクラマスのみそ汁 あらを集めて置く。適当に切り湯通しする。冷水に落としてぬめり、鱗などを流して水分をよくきる。これを水から煮出してみそを溶く。ニラととても相性がいいので合わせた。合わせるのはねぎや玉ねぎなどでもいい。

    好んで食べる地域・名物料理



    にらます(にらと鱒のあんかけ) 5月25日の山形県鶴岡市の天神祭(別名、化けものまつり)に食べる。マスを1本買い求め、人数分塩焼きと「にらます(あんかけ)」にする。マスの切り身を蒸し、「あん」をかけて、ゆでたにらを添える。「あん」は水、みりん、酒、しょうゆ、好みで砂糖を合わせて火をつけ片栗粉でとろみをつけたもの。新潟県北部から秋田県にかけて好んでこの「あん」を作る。また同じ「にらます」でも山形県飽海郡遊佐町では片栗粉を用いず、「あん」にしない。

    ますのあんかけ(鱒のあんかけうどん) 山形県鶴岡市の天神祭で作られる「にらます」は山形県庄内地方で広く作られる「ますのあんかけ」の一つの形。マスとうどん、ゆで卵に「あん」をかけることもある。

    加工品・名産品

    富山県名物「ますのすし」本来の原料。
    塩桜鱒(サクラマス) 北海道斜里で作られているもので、斜里で揚がったサクラマスを船上締めして塩をしたもの。ザラメ塩で塩がよく浸透して馴れている。脂がのっていてとてもおいしい。サケはともかく、サクラマスの塩蔵が非常に珍しい。

    関連コラム(加工品)

    記事のサムネイル写真北海道斜里みやげ、塩サクラマス
    クラマスの塩蔵品は探してもなかなか見つからない、貴重なものだ、という話をしたい。 まずは余談から。 むかし「マスかサケか」などと国会でなにやらあったと思うけど・・・ 続きを開く

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    本マス と呼ばれることが多い。
    ■ 過去には中部西日本などにいるアマゴはサツキマス、ヤマメはサクラマスとされていたが近年は共に同種(サクラマス)であるとされることもある。
    サケ属 今はサケ属「Oncorhynchus」だが、古くは大西洋のサケ科の魚とともにサケ属は「Salmo」だった。
    魯山人 「鮭と鱒とは、素人目には一見似たようなものではあるが、味からいえば鮭よりも鱒の方がはるかに優る」「塩鮭、塩鱒の茶漬け」『春夏秋冬 料理王国』(北大路魯山人 ちくま文庫)

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『サケ・マスのすべて 食材魚貝類百科』(井田齊、河野博、茂木正人 平凡社)、『サケの世界市場』(佐野雅昭 成山堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『薩摩半島沿岸の魚類』(岩坪洸樹、伊東正英、山田守彦、本村浩之 一般社団法人鹿児島水圏生物博物館 鹿児島大学総合研究博物館 2022/02/22)

    地方名・市場名

    エノハ
    場所九州一円 サイズ / 時期陸風型 備考ヤマメのこと。 参考文献 
    ギンケ
    場所全国 サイズ / 時期降海型 備考降海直前の個体。 参考文献 
    ヒラメ
    場所兵庫県、岡山、山陰 サイズ / 時期陸風型 参考文献 
    ヒラベ
    場所兵庫県、鳥取県 サイズ / 時期陸風型 参考文献 
    サクラマス
    場所北海道、秋田県象潟など全国 サイズ / 時期降海型 参考文献 
    ギンケヤマベ
    場所北海道函館 サイズ / 時期降海型 備考降海直前の個体。 参考文献 
    イタマス
    場所北海道室蘭・厚岸 備考異常に体高のある個体。 参考聞取 
    イチャニマス
    場所北海道根室 参考文献 
    アマミ
    場所新潟県 サイズ / 時期陸風型 参考文献 
    ギンマス
    場所秋田県男鹿 参考文献 
    シマメ
    場所長野 サイズ / 時期陸風型 参考文献 
    スギノコ
    場所青森 サイズ / 時期陸風型 参考文献 
    カワマス[川鱒]
    場所青森県弘前、山形県酒田 備考山形県酒田市では川の河口域でとれる個体で、非常に高価。 参考阿部鮮魚店(山形県酒田市)、文献 
    ユキシロマス[雪代鱒]
    場所山形県庄内地方 参考聞取 
    ホンマス[本マス]
    場所岩手県、山形県鶴岡市由良漁港、関東の市場 参考聞取 
    ママス[真鱒]
    場所青森県むつ市大畑、岩手県 参考聞取 
    マス ギンマス サキベ イチャニウ チュキチャヌイ

    クチグロ
    その他口の周辺の黒いもの 備考口の周辺の黒いもの。 
  • 主食材として「サクラマス」を使用したレシピ一覧

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