ぼうずコンニャクの食べる魚貝類だけでなく多彩な生物の図鑑です。掲載種は2000種、食用の水産生物の一般的なものは総て網羅。検索法・食べ方を詳しく解説しています。

クロダイ(Blackhead seabream)

学名:Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)

代表的な呼び名チヌ

クロダイの形態写真

50センチ前後になる。側扁、全体に黒い。

  • 魚貝の物知り度 食べ物としての重要度 味の評価度

    ★★★

    知っていたら通人級

    ★★★

    一般的な水産物(流通量は多くも少なくもない)

    ★★★★

    非常に美味
    分類
    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区刺鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科クロダイ属
    外国名
    Blackhead seabream
    学名
    Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)
    漢字・由来
    漢字 黒鯛
    由来・語源 東京での呼び名。体色から。
    地方名・市場名
    クロダイの成長段階での呼び名
    その年生まれた体長10センチ前後/チン(関東)、メイタ(福岡)、「イッサイ(一才)」(高知)
    年を越して20センチ前後/チンチン(関東)、「ニサイ(二才)」(高知)
    25センチから30センチ前後/ケイズ(関東)、カイズ(関東から和歌山、大阪)、「コグロ(小黒)」(高知)
    30センチ以上/クロダイ(関東)
    ■「かいず」、「けえず」/〈大阪湾の貝津から出た名という〉『さかな異名抄』
    地方名
    カワダイ/川にも上るために「カワダイ(川鯛)」と呼ぶ地域も多い。石川県七尾市七尾魚市場・金沢市金沢中央市場
    クロデ/山形県鶴岡市由良漁港、千葉県内房
    クロデー/千葉県内房
    ケンダイ/島根県
    シノコダイ/山形県鶴岡市由良漁港で
    タケチヌ/島根県
    チヌ/徳島県阿南市『椿泊漁業協同組合』、海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、大阪府
    チンタ/愛知県
    チンダイ/島根県
    ■ その他、イツツ、オオグロ、オオスケ、カイス、キシ、クロ、クロゴ、クロジヌ、クロチヌ、クロヂヌ、ケエズ、ケンダイ、サンサイ、シオ、シオチヌ、シラタイ、シラダイ、シロダイ、シロダイマキ、、ズイ、チイン、チヌダイ、チンカク、チンタ、チンチンカイズ、チンノイオ、ツエ、トオサイ、ナベワリダイ、ニサイ、ハゴ、ハダカチヌ、ババタレ、ヒダイ、マキ、マナジ、メエチ、ヨツツ。
    生息域
    海水魚。北海道南部以南、台湾まで棲息するが琉球列島にはいない。
    内湾の岩礁域や汽水域。
    生態
    ■ エビやカニから海藻、またスイカや果物なども食べる雑食性。
    ■ 産卵期は春から夏。
    ■ 産卵後小さな時期は総てが雄(オス)。15センチから25センチくらいには両性型。満2年まではオスとして機能する。
    ■ 3年目からは雌雄が分かれ、それぞれ成熟し産卵活動をする。また大きくなると多くがメスに分化する。
    ■ クロダイの仲間はもっとも内湾を好むもので、ときに川を登ることもある。それで各地で「川鯛(かわだい)などとも呼ばれている。
    基本情報
    内湾の河口域などに多い魚。
    雑食性でなんでもどん欲に食べることから、嫌う向きもある。
    関西から西では「チヌ」というが、これは大阪湾を「茅渟の海(ちぬのうみ)」と呼んでいて、この湾内に多産する魚という意味合いもある。
    食用、流通の世界よりも釣りの対象魚としての人気が高い。
    また東日本よりも西日本で食用魚として重要。
    瀬戸内海では盛んに食べ、また放流なども行っている。
    名物料理も多く、瀬戸内海の漁師料理の「ちぬ飯(たきこみごはん)」は豪快で、しかも非常にうまいものだ。
    水産基本情報
    市場での評価 年間を通して入荷してくる。値段はやや安め安定。
    ■ 本種は市場への入荷も多く、ときに畜養(養殖)すらされている。近年の入荷量の多さは値段の下落をもたらしている。
    漁法 釣り、定置網
    産地(漁獲量の多い順) 広島県、愛媛県、愛知県、兵庫県
    選び方
    触って硬いもの。鰓が鮮やかに赤いもの。
    味わい
    旬は秋から春 産卵期の春、初夏にかけては味が落ちると思う。
    鱗はあまり硬くなく取りやすい。皮は厚くてやや硬い。骨はあまり硬くない。
    腹膜は黒い。
    クロダイの刺身透明感のある白身で血合いが赤い。熱を通しても硬くならない。
    栄養
    寄生虫
    食べ方・料理法・作り方
    生食(刺身、皮霜造り、焼霜)、煮つけ、汁(潮汁、みそ汁、鍋、ブイヤベース)、焼く(塩焼き、みそ漬け)、ソテー(バター焼き、ポワレ)、炊き込みご飯

    クロダイのカルパッチョカルパッチョ 水洗いして三枚に下ろして皮を引く、血合い部分を切り落として出来るだけ薄く切る。皿ににんにくをなすりつけ(すり下ろしたにんにくをオリーブオイルに溶かし込んでもいい)、オリーブオイルを塗り塩コショウ、切り身を並べていく。並べ終わったらスプーンなどでとんとんとなじませて、上からも塩コショウ。オリーブオイルをかけて好きな青みを散らす、野菜類を載せるなどする。
    クロダイの刺身刺身 大振りのクロダイを水洗い。三枚に下ろして皮を引き、単に刺身に切りつける。ここでは角造りにしたがそぎ造りにしても、薄く作ってもいい。血合いが赤く見た目にも美しく、身はタイ科ならではの上品でいながらうま味豊かでおいしい。
    ちぬ飯ちぬ飯南予風 たれ(煮きり酒、煮きりみりん、しょうゆ、少量のだしを合わせたもの)と溶き卵(卵黄だけでもいい)を混ぜ、切り身を漬け込んだものをご飯にのせて食べる。さらさらとご飯がよくすすむ。また2杯目は湯もしくは茶を注いで食べてもいい。
    クロダイの炊き込みご飯ちぬ飯 はクロダイの炊き込みご飯。瀬戸内海周辺では1尾丸ごと炊き込むが、一般家庭では半身、もしくは切り身を炊き込む。切り身に振り塩をして少し寝かせて、水分を拭き取り、少し干したものを炊き込むとうま味が強く出る。柑橘類や青じそ、ねぎなどお好みの薬味で。
    クロダイの塩焼き焼く 二枚下ろしにして骨つきの方を適宜に切り身にする。振り塩をして1時間以上寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。時季のものなら内側から染み出した脂で皮と身を揚げるように焼き上がる。身はしっとりと甘味があってとても味わい深い。柑橘類、大根下ろし、しょうがなどお好みのものを添えて。
    クロダイのバター焼きバター焼き 三枚に下ろして適宜に切る。塩コショウして1時間以上寝かせる。これを最初は油でじっくりとソテーして、皮目がこんがりと香ばしくなったら、マーガリン(バター)を加えて仕上げる。パセリや乾燥ディルなどを使うと豪華に見える。また柑橘類もいい。パンに好相性だが、最後にしょうゆを振るとご飯によく合う。
    クロダイの汁 刺身やバター焼きなどにしたときに出たあらを湯に通して、氷水に落として鱗、血液、滑りなどを洗い流して、よく水分を切っておく。これを水(昆布だしでも)から煮出す。こくのあるうま味豊かでいながら後味のいいみそ汁になる。酒の後にも持って来いだが、この汁で食べるご飯がとてもいい。
    クロダイの鍋 水洗いして、二枚に下ろして骨つきの方を適宜に切る。これを湯通しして、冷水に落とし鱗やぬめりなどを流して、よく水をきっておく。昆布だしにあらを加えてだしをとり、酒、塩で味つけして汁を作る。この汁で切り身と豆腐、野菜を煮ながら食べる。見た目を気にしないならあらも一緒に煮ながら食べるとより美味。
    クロダイの潮汁潮汁 クロダイの頭部、あらなどを湯に通して鱗やぬめりを取る。これを昆布だしで煮だして酒、塩で味つけする。青みはお好みで。じっくり煮出すとよりこくが出て滋味豊かな汁になる。青みはお好みで。薬味は粗挽き黒コショウがいい。柑橘類は好相性だ。
    好んで食べる地域・名物料理
    雑煮 千葉県内房では秋になるとチンチン(25㎝以下)を雑煮のだしに使う。
    産後に食べる 愛媛県西条市ではチヌ(クロダイ)かキビレ(キチヌ)は産後の乳の出がいい、というので食べる。
    加工品・名産品
    釣り情報
    ■ 陸からの釣りというと、防波堤(関西では波止)、磯などからという手軽さから根強い人気がある。陸からの釣りには浮き釣り、ふかせ釣りなど。沖の防波堤などでは落とし込み釣り(一種のふかせ釣り)。
    ■ 湾内などにイカダ、小舟をとめての釣りもある。
    ■ 関東では内房などで船釣りが行われている。コマセを使い、天秤仕掛け。
    ■ 餌は多様。オキアミ、カイコのさなぎ、カニエサ。
    ■ 真夏にだけ行われるスイカエサのパックン釣りなんてのもある。
    歴史・ことわざ・雑学など
    ■ 関東では成長に伴って呼び名が代わる出世魚でもある。
    ■ 「チヌ」と呼ぶ地域が多く。出雲風土記に「鎮仁(ちに)」、和名抄に「知沼」。
    ■ 釣りの対象魚の代表的なもののひとつで、明治の頃の東京湾隅田川河口での本種を釣る様子は幸田露伴の短編にも描かれる。
    ■〈霊亀二年(716)、元正天皇の和泉離宮(珍努宮)造営の理由の1つに、特産の黒鯛(ちぬ)を賞味することがあげられていた。当時大阪湾は茅渟(ちぬ)の海と呼ばれるほど黒鯛が多かった〉『日本人と魚』(長崎福三 はる書房 1991)
    ■ 関西では「ちぬ」というが、大阪湾を古くは茅渟(ちぬ)の海といったというその「茅渟の魚」ということだろうか?
    ■ 湾内や河口に多いのだけれどときにまったくの淡水域にも上る。そのため築地など市場では冷蔵庫のない時代には真水で活かせる魚と言うので重宝したという。
    ■ 「クロダイは血を荒らすといって妊婦に食べさせない地方が多いが、その反対に血を洗うといって特別に食べさせる地方もある。」『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版)
    参考文献・協力
    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚』(1940 田中茂穂 創元社)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出)、『魚と貝の事典』(月賢二 柏書房」)、『日本の海水魚』(山と渓谷社)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版)、『あいちの水産物 ハンドブック100』(愛知県農林水産課)、『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版)
  • 主食材として「クロダイ」を使用したレシピ一覧

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