ババガレイ

Scientific Name / Microstomus achne (Jordan & Starks, 1904)

ババガレイの形態写真

60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。[43cm SL・0.75kg]
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60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。[43cm SL・0.75kg]60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。[洗う前]
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜目カレイ科ババガレイ属

    外国名

    学名

    Microstomus achne (Jordan & Starks, 1904)

    漢字・学名由来

    漢字 婆鰈、母鰈 Babagarei
    由来・語源 田中茂穂は1950年代以前は「ババガレヒ」で北海道の呼び名としているが、青森県下北の間違いかも。青森県では「母がれい」と書いて「ばばがれい」と読ませる。
    『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)にババガレヒ。


    「ばば」は婆 大量の粘液を出し、これにまみれている状態で流通する。要するに外見が薄汚れていて、皮がぶよぶよしているところが、年老いた肥った老婆に見えるため。
    Jordan
    David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
    Starks
    エドウィン・チャピン・スタークス(Edwin Chapin Starks 1867-1932)。アメリカの魚類学者。スタンフォード大学、デイビッド・スター・ジョーダンのもとで魚類学を学ぶ。ジョーダンとともに国内の魚を多数記載。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深50〜450mの砂泥地に生息。
    北海道全沿岸、青森県〜対馬の日本海沿岸。青森県〜千葉県外房、相模湾、[駿河湾]、愛知県の太平洋沿岸。
    朝鮮半島南岸・東岸、黄海、ピーター大帝湾(希)、サハリン、千島列島。

    生態

    大量の粘液を出す。
    北海道沖から三陸沖に移動。100mよりも浅いところで産卵する。
    産卵は3月〜4月。
    成長は1歳で8センチ〜9センチ、2歳で12センチ〜15センチ、3歳で20センチ、4歳で24センチ、5歳で25センチ、6歳で27センチ、7歳で34センチ。
    雌の方が雄よりも大きい。

    基本情報

    日本海、東北以北にいる大型のカレイ。北海道、太平洋側の三陸、常磐などでは漁業的に重要なカレイ。食文化では関東以北、特に三陸などでは年取りの魚でもある。
    関東でも古くから人気のあるカレイのひとつだが、これには東北との繋がりの深さを感じる。主に冬から春だが、年間を通して入荷をみる。東京で「ナメタガレイ」というのも、出荷元の三陸などの呼び名が定着したのだ。
    「昔は安かった」という情報もあるが、年配の方に聞き取りを行ったところ、古くから高級なもので、〝贅沢品〟だったという。(2011年)。冬から初春には高く、2月下旬から4月になると値が下がる。この値の下がった「なめた」も関東風の煮つけにするとおいしいので、それなりに需要がある。
    日本海の山陰以北でも揚がるが、漁獲量が少なく、知名度が低い。
    面白いことに煮つけ以外の料理はとても平凡である。現在では煮つけをあまり作らなくなったために、知名度が徐々に落ちてきている。
    最近はとても高価であるために主に料理店で使われるほか、デパートや高級魚店で売られ、一般のスーパー、一般の魚店などには少ない。

    水産基本情報

    市場での評価 関東以北では高級魚だ。大きいものほど高い。秋口から入荷が増えてきて、真子を持った大型のものは高級魚。活けでの入荷もある。関東では昔から食べられてきた魚。東日本で高く西日本で安い。
    漁法 底曳網、刺し網
    主な産地(カレイ類として) 北海道、宮城県、岩手県、福島県、茨城県

    選び方

    ぬめりに透明感のあるもの。触って厚みを感じて硬いもの。生殖巣が膨らみすぎていないもの。

    味わい

    旬は夏から冬。生殖巣が膨らんでくると身が水っぽくなる。卵巣も膨らみすぎると味がなくなる。
    大量に粘液を出す。鱗は細かく取りにくい。皮はやや硬い。
    白身で生きているとき、非常に鮮度のいいときは透明感があるがすぐに微かに白濁する。
    火を通すと適度にしまり、適度に繊維質で咀嚼すると心地よくほぐれる。身離れがいい。生で食べてもあまりうま味を感じない。
    卵巣・白子が非常にうまい。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ババガレイの料理法・レシピ・食べ方/煮る(煮つけ、汁煮)、ソテー(ムニエル、オイル焼き)、焼きもの(若狭焼き、祐庵焼、みそ漬け、塩焼き、干物)、汁(吸いもの)、生食(刺身)、揚げる(唐揚げ)

    ババガレイの煮つけ(ナメタガレイの煮つけ) できるだけ大型の雌を選び、真子(卵巣)と上質の身をともに味わいたい。こってりでも淡い味つけにしても美味。しょう油との相性がよく、みそはそぐわない。煮つけると、しまり、繊維質の身が硬くも柔らかくもなく舌にのせて心地よくほどける。ほとんど嫌みがなく、上品ななかに甘みと旨みがある。卵巣の大きいものはやや弱火で、煮汁を多くして、煮上がり時間を長くとる。卵巣の味わいは最上級。

    ババガレイの汁煮 兜の部分を使ったが別に何所を使ってもいい。小型なら二、三等分にして使うといい。水洗いして切り身にする。湯通しして冷水に落として表面の滑りなどを流す。水分をよくきる。水・醤油・酒・少量の砂糖を合わせた中に入れて火をつける。あくをていねいに引きながら味加減する。身は柔らかく嫌みがない。汁は旨味たっぷりでおいしい。
    ババガレイのムニエル 皮付きでソテーした。水洗いして切り身にする。卵巣は火が通りにくいので、取り出して別に塩コショウして小麦粉をまぶす。水分をよくきり。塩コショウ、小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテーする。仕上げにバター(マーガリンでも)で風味づけする。生殖巣が大きくなりすぎて水っぽくなったものなどに向いている。とても味わい深い。
    ババガレイの若狭焼き 水洗いして切り身にする。水分をよくきり、軽く振り塩をする。1時間以上寝かせて、弱火でじっくり焼き上げる。八分通り火が通ったら強火にして若狭地(酒・醤油)を塗りながら仕上げる。生殖巣が大きくなりすぎた水っぽい固体に向いている。
    ババガレイのオイル焼き 切身をオリーブオイル、白ワイン、にんにくでマリネする。このとき多めの粒コショウをまぶしつける。これをじっくりと焼き上げる。焼き上げながらマリネ液をかけるとおいしくなる。
    ババガレイの塩焼き なぜか焼くと皮目の臭いが強まる。それほど不快ではないが、イヤな人はイヤだろうなと思う。ここでは塩をして焼き、最後に酒を塗りながら仕上げた。焼き上げても硬く締まらず、適度に繊維質の身のほぐれ感がいい。酒を塗りながら焦がすように焼き上げた皮もうまい。
    ババガレイの干もの 小振りのものは安く、煮ても本種ならではのうまさは感じられない。ここでは水洗いして立て塩にして20分(振り塩をしてビニールなどで密閉。半日以上寝かせてもいい)、水分をよくきり、一夜干しにしたもの。干すことで風味がまし、とても味わい深くなる。ご飯にも合う。

    ババガレイの刺身 最近、小型が活魚で入荷してくる。これを刺身にしたもの。食感はいいものの、比較的血合いが強く身自体にうま味がない。マコガレイなどと比べると味が落ちる。ただし小型なので、大きいものの評価ではない。

    ババガレイの唐揚げ 小型のババガレイを水洗いし、五枚に下ろして、片栗粉をまぶして揚げたもの。比較的骨が柔らかいので、余すことなく食べられて、とても味がいい。大型はあらだけで唐揚げにする。
    ババガレイのフライ 非常に上質の白身で筋繊維が細く緻密である。フライ材料として優秀だと思い作ってみた。水洗いして五枚に下ろして皮を引く。塩コショウして小麦粉をまぶして衣(卵・小麦粉・水)をからめ、パン粉をつけて揚げる。思ったよりも身がしまり鶏肉を思わせる食感になる。身自体は味がいいものの豊潤さが感じられない。

    好んで食べる地域・名物料理

    煮つけ 東北太平洋側、関東でよく食べられている。当地では値の張る魚なので年取魚、ハレの日の料理でもある。宮城県では正月膳に煮つけがのる。[『ごっつぉうさんー伝えたい宮城の郷土食』(みやぎの食を伝える会編著 河北新報出版センター)]
    なめたの吸いもの 岩手県県、青森県、福島県ではナメタの吸いもの、煮つけを年取り魚とする。「なめたは、秋から正月にかけての行事のさいの吸いものとなる。とくに年取りの日の吸いものには、なめたが使われる。材料は、なめた、豆腐、せん切りねぎ、またはせりがふつうで、……」[鈴徳(岩手県盛岡市) 『聞き書 岩手の食事』(農文協)など]

    加工品・名産品


    なめた干し 青森県産とある。雄のババガレイを強く干し上げたもの。これをじっくり焼いて新聞紙などに挟んでもみほぐし、身を取り分けて酒の肴などにしたもの。盛岡では古くから馴染み深い伝統的な食品である。[鈴徳 岩手県盛岡市]

    釣り情報

    茨城県日立港などではソイ釣りの外道にくる。

    歴史・ことわざ・雑学など

    日本海のババガレイ 日本海側ではあまり食べられていない。島根県などでは安い魚でしかない。島根県のインドガレイ、舞鶴のビタガレイ(鐚は壊れたり欠けたりした銭のことで、安っぽいという意味合いを持つ)というのは人気のないカレイである証拠。
    竹輪 田中茂穂は〈東北地方では是を用いて竹輪を作るのである〉とある。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『北海道の全魚種図鑑』(尼岡邦夫、仲谷一宏、矢部衛 北海道新聞社)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)

    地方名・市場名

    ビタガレイ
    場所京都府舞鶴 参考文献 
    ブタカレイ ブタガレイ
    場所北海道 参考文献 
    アワフキ
    場所北海道、山形県 参考文献 
    ナメタガレイ ナメタ
    場所北海道、岩手県宮古市、宮城県、茨城県、山形県鶴岡市由良漁港、東京都など関東 備考滑多鰈だという。三陸からの入荷が多いので関東でもナメタガレイという。 参考『北海道の自然 海の魚』(上野達治/北海道水産研究所/魚類学会 北海道新聞社) 
    メタ
    場所宮城県仙台 参考文献 
    ノメル
    場所富山県魚津 参考文献 
    メッタ メツタ
    場所岩手県、宮城県 参考文献 
    イノリ
    場所新潟県 参考文献 
    ボサツ ボサツガレイ
    場所新潟県出雲崎・魚沼 参考文献 
    ウバ クロガレイ
    場所東京 参考文献 
    テンカンカレイ テンカンガレイ
    場所福井県 参考文献 
    ダルマガレイ
    場所茨城県水戸 参考文献 
    ダルマビラ
    場所茨城県水戸、東京 参考文献 
    ダルマ
    場所茨城県水戸・久慈、東京 参考文献 
    オバガレイ
    場所青森県 参考文献 
    メダマガレイ
    場所青森県、宮城県、岩手県 参考文献 
    ウバガレイ
    場所青森県、福島県、宮城県 参考文献 
    ババガレイ[母がれい]
    場所青森県下北郡佐井村・むつ市大畑・青森市 備考「母がれい」は青森県佐井村・むつ市 参考20191217_18むつ市・佐井村 
    アブクガレイ[泡鰈]
    場所北海道 
    アワダチ アワダチガレイ
    場所秋田県にかほ市象潟、山形県遊佐町吹浦 
    アワフク ナット
    場所山形県鶴岡市由良漁港 
    インドガレイ インド
    場所島根県松江市、山口県下関市 
    シャボン
    場所兵庫県神戸市駒ケ林 備考滑りが多く、泡立つようであるからだろう。 
    ダラリ
    場所新潟県新発田市『魚松』 
    ヤマブシ ヤマブシガレイ[山伏がれい]
    場所新潟県新潟市 参考20240229市場 
  • 主食材として「ババガレイ」を使用したレシピ一覧

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