アブラガレイ

Scientific Name / Atheresthes evermanni Jordan & Starks,1904

アブラガレイの形態写真

1m SL 前後になる。体色は黒ずんだ茶色で体高(上から見たときの左右の幅)が高い。口が非常に大きい。側線は直線に近い。尾鰭は僅かに湾入する。両目の間は離れていて、左目は極端に背部にない。

    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜科カレイ科アブラガレイ属

    外国名

    学名

    Atheresthes evermanni Jordan & Starks,1904

    漢字・学名由来

    漢字 油鰈 Aburagarei
    由来・語源 北海道での呼び名。非常に油(脂)を多く含み、古くは油をとっていたため。この油からビタミンAなどを抽出していた。ちなみに田中茂穂はヒラメ、ダルマガレイなどとともに現カレイ科をすべてヒラメ科としている。
    〈カレヒ科アブラガレヒ屬アブラガレヒ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    Jordan
    David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
    Starks
    エドウィン・チャピン・スタークス(Edwin Chapin Starks 1867-1932)。アメリカの魚類学者。スタンフォード大学、デイビッド・スター・ジョーダンのもとで魚類学を学ぶ。ジョーダンとともに国内の魚を多数記載。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深200-500m。
    北海道全沿岸、青森県〜茨城県の太平洋沿岸、新潟縣、富山湾。
    日本海北部、アナディール湾までのオホーツク海、ブリストル湾までのベーリング海、シュリコフ海峡までのアリューシャン列島。

    生態

    産卵期は冬。

    基本情報

    北太平洋に生息する大型のカレイ。かつてカラスガレイとともに北洋で揚がるカレイとして重要な存在であった。現在では国産よりも輸入ものの方が多い。
    小売りの場ではフィレや冷凍食品、干物、総菜などの様々な加工品として見ることができる。冷凍フィレを解凍して売られることが多く、鮮魚で売られることはあまりない。
    2009年以来、カラスガレイとともにアブラガレイの「えんがわ」をよく見かける。回転ずしなどでの縁側の原材料としても重要である。
    脂が強いので古くは岩手県などで「えんきり(縁切)」などと呼ばれ、まずいカレイとされていた。それが現在での脂嗜好から逆転現象が起こっている。カレイ科の魚は種を認識されることが少ないが、売れ行きのいい魚であることは間違いない。現在は安いがもっと評価が高まってもいいはずだ。
    珍魚度 一般的な食用魚で珍しくはないが、鮮魚を探すのは意外に難しい。

    水産基本情報

    市場での評価 三陸などから少ないながら入荷してくる。味がいいのにも関わらずとても安い。また冷凍食品で「えんがわ」、フィレの方が量的には多いように思える。スキンレスの流通もある。
    漁法 底曳網、刺し網、釣り
    主な産地(カレイ類として) 福島県、北海道、宮城県
    輸入国/アメリカ、カナダ

    選び方

    フィレは張りがある、くぼんでいるものはダメ。

    味わい

    旬は秋から冬だと思うが、鮮魚での流通よりも加工品での流通の方が多いためはっきりわからない。
    鱗は弱く小さく取りやすい。皮は非常に薄くもろい。骨は軟らかい。
    白濁した白身。非常に大量に脂を含み軟らかい。熱を通しても硬く締まらず、脂が液化して出てくる。
    身質 非常に柔らかく、白濁しているのは脂の粒子が身全体に回っているため。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アブラガレイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、あぶり)、煮る(煮つけ)、揚げる(フライ)、生食(刺身)、焼く(漬け魚、塩焼き)、ソテー(ムニエル)
    アブラガレイの刺身 鮮魚で鮮度のいいものはめったに手に入らない。ただ近年、生食できるフィレが出回っている。もともと刺身で食べて抜群においしい魚なので、フィレなどももっと活用されるべきだと思っている。ここではフィレを使ったが鮮度がいいものは五枚に下ろして皮を引き、刺身にする。
    脂が身全体に均質に行き渡り、口に含むと口溶け感と一緒に甘みが感じられる。ほどよい食感もあり、非常においしい。

    アブラガレイのあぶり ここではフィレを使った。刺身は非常においしいものの、少し単調な味である。ここではフィレの状態で表面をあぶり、氷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり、冷蔵庫などで少し寝かせて身を落ち着かせる。これを刺身状に切る。
    アブラガレイの煮つけ 煮つけは定番料理である。フィレはそのまま、鮮魚は水洗いして小さなものは適当に切る。大型は5枚下ろしにして使う。煮つけやすい大きさに切り、水分をよく拭き取る。湯通しして冷水に落としてヌメリなどを流して水分をよくきる。これを酒・砂糖・溜まり醤油・濃口醤油・水で煮る。味つけはお好みで。口に入れるとほろりと脆弱に崩れて甘く、非常に味わい深い。
    アブラガレイのフライ アメリカなどはもっぱらフライ材料にしているよう。このクセのない熱を通しても硬くならない白身はフライ向きである。水洗いして五枚に下ろす。フィレはそのまま使う。塩コショウして小麦粉をまぶし、バッター液(小麦粉・卵黄・水)か溶き卵を絡めてパン粉をつけて揚げる。揚げると筋繊維の間の脂が一度液化する。この層から染み出してくる半液化したジュがやたらにうまい。
    アブラガレイの塩焼き 塩焼きも定番料理のひとつである。フィレは適当に切る。鮮魚は五枚に下ろして切り身にし、振り塩をしておく。買い求めたら振り塩をして保存しておいてもいい。出て来た水分を拭き取ってじっくり焼き上げる。身に脂が混在しているのでそれが一度液化して食べるときは半液化した状態になり豊潤。冷えてもとてもうまい。
    アブラガレイのムニエル フィレはそのままで料理に合わせて切る。鮮魚は五枚下ろしにして切り身にする。皮付きでも皮を引いてもいい。塩コショウして小麦粉をまぶしてじっくりソテーする。仕上げにバターで風味づけ為る。脂に油でややくどい味だが、これがおいしいと思う向きも多そう。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品


    縁側 回転ずしなどでは単に「縁側」という。古くはヒラメの縁側の代用品だった。非常に紛らわしかったが、近年では単に「縁側」と認知されている。回転ずしなどで相変わらず人気がある。
    フィレ 輸入したものをフィレにし冷凍したもの。国内の産地でフィレにしてチルド流通させたものなど様々なものがある。生食できるものなどもあり、非常に上質。[丸西西出商店 北海道釧路市]
    焼干物あぶらがれい 主に東北太平洋側で作られている焼きガレイとは別ものらしい。干物にしてから焼き上げたもので、適度に脂が感じられて軟らかくて美味しい。小骨がないなど万人向きの味だと思う。[伴助 福島県いわき市]

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    八王子総合卸売協同組合、マル幸で北海道斜里町『丸中しれとこ食品』のアブラガレイの生食用フィレを買う。 アブラガレイは北太平洋に生息する大型のカレイである。古くは・・・ 続きを開く

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)

    地方名・市場名

    アブラガレイ
    場所北海道、秋田県象潟、茨城県久慈、富山県 参考文献 
    エンギリ[縁切]
    場所宮城県気仙沼 参考福島の海産動物方言 
    ブタガレイ
    場所秋田県象潟 参考文献 
    ハオイ
    場所茨城県久慈 参考茨城魚類の方言(茨城県水産試験場 1959) 
    クロガレイ
    場所福島県相馬市原釜で 
    エンキリ[縁切]
    場所岩手県久慈 備考田中茂穂は「久慈ではエンキリとも云う。不味い為め、二度と食べないとの意味を含む」。 
    フユガレイ
    場所別名 参考文献より。 
    ヤガタガレイ
    備考別名。 
  • 主食材として「アブラガレイ」を使用したレシピ一覧

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