寿司図鑑365 目次へ!
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クロウシノシタ 2005年7月4日 96
フレンチの食材と思われがちなウシノシタ科の魚たちであるが日本各地で様々な食べ方をされている。煮つけ、干物に、また「とんとん」とたたいて寿司にといろいろ多彩に使われているのだ。産地では刺身にすることもあり、「本当にうまいんですよ」と外房の知り合いから聞いていた。確かに刺身はまずまずの味わい。これを寿司にしたらどうなるか? 「旬だからいっぱつ握ってください」と差し出すと、たかさん曰く「ヒラメと同じで五枚かね」と年寄りくさく呟いて見事におろしてくれた。それで「うまいかね」とまたまた年寄り臭く握って曰く「うまいね」と元の年齢にもどって一言。シコっとしているのに歯切れよし、そこから上品な旨味が出てきて最後にふわりと甘みが湧いて消える。そこにすし飯が混ざってきてもお互いに殺し合わないのがいい。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
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ダツ 2005年7月5日 97
一見うまそうな魚というのはいるもので、港などに捨てられているダツがそれだろう。夏、海辺まで観光や海水浴に来た家族連れが「あらおいしそうな魚、これ捨ててあるの?」なんて港で聞いているのをときに目にする。その辺の漁師が「欲しいならもってけ」なんて言うのに素直に持ち帰って食べて、さてうまいと感じるだろうか? 素直に頭としっぽを落として長すぎる胴体を三等分、これを焼くと旬の初夏ならなかなか味わいがいい。ちょっと骨がというのも「ただだ」と思えばそれなりに楽しい思い出だろう。でも二度目はね! それを三度も四度も持ち帰っているのに性懲りもなく『市場寿司 たか』に持ち込んでみる。「なにこれ、きれいだな」といいながら、たかさんが見た目に美しい端正な握りを2かん。そして口に入れたのはいいが味がない。というか脂もない。刺身でとれるのは骨の多い前半を避けて、しっぽに近いところ。敗因はコレか?
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
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チヂミエゾボラ 2005年7月6日 98
関東で刺身用の「つぶ」と言えば「まつぶ」と呼ばれるエゾボラが主役となって、多くの脇役の影が薄い。この「まつぶ」を毎日たっぷり売ってしまう小売店主に聞くと「つぶはシコっとした歯触りだよね」とあまりにそっけない。確かに関東で「つぶ」というと食感が先に来てしまっている。もっとじっくり味わってみろよ! ということで味よし食感よし、また身の色も美しいチヂミエゾボラに登場願う。まず貝殻に小さな穴を開けて身を取り出す。チヂミエゾボラはあまり粘液がないのでもみ洗いのみ。これを薄くへぎ、生で。また軽く茹でたのも用意する。これを姿よく握った寿司職人のたかさん。「うん、思ったより味がある。うまいかも知れない」と言う。確かに身に甘みがある、シコっと程良い硬さがあるが、すし飯から大きく遊離しない。寿司ネタにするなら「まつぶ(エゾボラ)」よりも上だな。
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太刀魚/タチウオ 2005年7月7日 99
かれこれ30年近く昔のことだ。静岡県島田市の「かに柳」という店で初めてタチウオの刺身を食べた。まことに包丁のさえた造りが出てきて、最初はタチウオだとは思わないまま何気なく口に放り込んだときの感動的な旨さは今も忘れることができない。その刺身は皮がついて鮮度がいいのでギラギラ光って見える。静岡県ではなんといってもタチウオは皮付きに限るようで、「皮がない刺身はうまくないだら」と沼津魚市場で出会う人たちが口を揃えるのだ。関東の市場には皮付きで食べたいと思うようなのはめったにこない。それでもなんとか探し当てて『市場寿司 たか』に持ち込んだ。これが残念無念、あまりうまくないのだ。確かに皮下には脂があり、旨味もすべてここから湧いてくる。すし飯との相性もいいと、いくら思っても鮮度の悪さは皮すら固くまずくしてしまうようだ。ここで格言をひとつ。「タチウオの握りは皮付きで産地で食え」。
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平政/ヒラマサ 2005年7月8日 100
冬のブリ、夏のヒラマサ、なんて寿司屋が言う。確かにあまりうまいもんのない夏にヒラマサは味のピークを迎える。ただ思ったよりも味わいを知らない人が多いようだ。それよりも海の弾丸ライナーなんて釣り師に人気がある。釣りの世界ではまさにスターだ。海釣り師となったからには一度は釣ってみたい。実を言うと長い間釣り師をやっているがヒラマサは釣ったことがない。結局、ヒラマサはあこがれの魚として残ってしまっているのだ。その反動だろうか少々汗ばむような陽気になると無性にヒラマサが食べたくなる。『市場寿司 たか』の店先のアスファルトから熱気がユラユラと立ち上がっている。それを見ながら「政」の握りを口に放り込む。この握りが脂があって甘く、すこぶるつきにうまい。また口に放り込んで、なんと4かん目である。板の前のたかさんはなんかん目だろうと目をやると「これが最後ね」ともう2かん。あまりにうまくてとまらなくなってしまっているのだ。「おい誰かとめてくれ!」
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